久保建英、ビッグクラブ移籍への鍵 レアル番記者が私見「リバプールの選手になりたいと望むなら」【現地発コラム】

古巣レアル・マドリード戦に出場した久保建英(写真左)【写真:Getty Images】
古巣レアル・マドリード戦に出場した久保建英(写真左)【写真:Getty Images】

レアル・マドリード戦に先発出場の久保、チャンスを創出するも0-1敗戦

 久保建英は通算12回目のレアル・マドリード戦に挑み、惜しいチャンスを作るが、またもや敗北を喫することになった。スペインカ国王杯(コパ・デル・レイ)準決勝1stレグで対戦し0-1でソシエダは勝利を逃した。

 レアル・ソシエダは今季、ホームゲームのキックオフ時間の遅さに大いに悩まされている。リーグ戦ではここまで、13試合のうち8試合が21時開催。夜遅い寒空のなかで試合が行われれば、客足が遠のくうえ、選手の体調にも影響が出る。クラブはこれらを懸念し、1月にラ・リーガへクレームを入れたが、改善の兆しは見えていない。次回のリーグ戦のホームゲーム(セビージャ戦)を再び21時に戦うことになったのだ。

 今回のレアル・マドリード戦は今季一番遅い21時30分キックオフ、さらに平日開催、気温10度以下と悪条件が揃ったが、その影響は全くなかった。5季ぶり通算3度目の優勝が間近に迫り、欧州王者と国王杯準決勝で対戦するとあって、サポーターの期待は大きかった。試合当日のチケット売り場では“完売”の文字が掲げられ、3万7373人の満員に近い大入りとなった。

 久保は累積警告によりラ・リーガの次節FCバルセロナ戦に出場できない。そのため今年に入って初となる公式戦3試合連続でスタメン入りし、いつも通り4-3-3の右ウイングで出場した。

 レアル・マドリードは久保建英にとって、4シーズンにわたって所属したクラブ。当然さまざまな思いがあり、モチベーションは高かったはずだ。序盤から積極的に攻撃に絡んでいき、前後半の最初にGKアンドニー・ルニンを脅かす枠内シュートを放った。

 その一方、対峙したフラン・ガルシアの厳しいマークに遭い、スペースを狙ったパスは度々カットされ、ペナルティーエリアで何度か倒されるもPKの笛は吹かれなかった。また、終了間際にボールをキープした際、接触したダニ・セバージョスが全治2か月の重傷を負うアクシデントがあった。

 試合は前半にジュード・ベリンガムの正確なロングパスをエンドリッキに沈められ、0-1の敗北を喫し、ホームでの公式戦連勝が5でストップ。久保のレアル・マドリード戦の公式戦通算成績は12試合(先発9試合)2勝2分8敗、1得点0アシスト。4試合連続でフル出場するも4連敗と厳しい結果になっている。

スペインメディア「レレボ」でレアル・マドリード番記者を務める“ロドラ”ハビエル・ロドリゲス氏が久保建英について言及【写真:高橋智行】
スペインメディア「レレボ」でレアル・マドリード番記者を務める“ロドラ”ハビエル・ロドリゲス氏が久保建英について言及【写真:高橋智行】

スペイン各紙の評価は…「努力が実らなかった」「残念だった」

 この日の久保に対するスペイン各紙の評価は分かれる形となった。全国紙「マルカ」と「AS」はともに2点(最高3点)と高評価した一方、地元紙の採点はやや厳し目となった。

 クラブ地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「またしても努力が実らなかった。試合開始から尽力するも、今回は敵陣への切り込み、クロス、シュートのいずれも違いを作れなかった」と評し、5点(最高10点)をつけた。

 もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」紙は、「プレーの精度を欠いても常にチャンスを作り出す。開始直後に放った右足のシュートが防がれたのは残念だった。守備で珍しくいい試合をしたフラン・ガルシア相手にチャンスメイクを試みた。完璧なクロスをいくつか上げたが、ラ・レアルはペナルティーエリア内で上手く攻撃できなかった」と評し、3点(最高5点)と及第点に留めた。

 全国紙と地元紙で評価が分かれるなか、試合後に話を聞いたスペインのスポーツウェブメディア「レレボ」でレアル・マドリードの番記者を務める“ロドラ”ハビエル・ロドリゲス氏は、この日の久保のパフォーマンスをどのように見たのであろうか。「試合を決めるようなプレーをする選手であり、ラ・レアルの紛れもないスターだ」とその実力を高く買っているものの、いくつか気になった点があったようだ。

「今日はスタンドプレーが何度もあったし、ゴール前で簡単に倒れていたと思う。また、ビッグクラブでスターになるために私が彼に求めるのは、もっと多くのゴールを決めることだ。今日はシュートチャンスがあったがものにできなかった」

 この日マッチアップしたフラン・ガルシアは昨季2回の対戦でともに、久保が凌駕した相手だったが、今回はそうならなかった。フラン・ガルシアは今季、カルロ・アンチェロッティ監督の信頼を得て先発の機会を増やし、守備面が大きく改善されていた。

「フラン・ガルシアは久保を抑えるのに苦しんだと思うが、それでも今日はほとんど突破を許していなかった。久保は昨季のような手応えを感じていないんじゃないかな」

 その一方でロドラ氏は、かつて久保のマーカーを務めた選手を引き合いに出し、そのポテンシャルについて言及した。

「久保のことを聞かれると、フラン・ガルシアと同じようにレアル・マドリードのカンテラ育ちのミゲル・グティエレスと話した時のことを思い出すよ。ミゲルは以前久保について、ジローナでのラ・リーガ初年度(2022-23シーズン)に最も苦しんだ相手だと言っていた。それは久保が常にドリブルを仕掛け、デュエルに挑むクオリティーの高さを備えている選手であることを物語っている」

久保の献身的な姿勢は評価の対象も…ビッグクラブ移籍に足りないもの

 また今回は強豪相手の一戦だったため、守備に回らざるを得ない時が何度もあった。時に身体を投げ出して相手を止めにいった久保の献身的な姿勢を、ロドラ氏は高く評価した。

「守備面において久保はラ・レアル加入後、日を重ねるごとに成長し、今ではチームのために働く選手になった。今日見ても分かるとおり、右サイドバックをサポートするために自陣まで何度も戻っていた。彼はそれを非常に重視していると思う。これまでは攻撃に比重を置いていたが、今では守備でも役立つ選手にまで成長している」

 久保は今季ここまでの公式戦で7得点3アシストを記録している。得点数は昨季と並びスペインでのキャリア2番目に多く、ウイングとしては悪い数字ではないだろう。しかしロドラ氏はこの面をさらに向上させることがステップアップの鍵になると考えている。

「今日のようなビッグマッチで久保はいつも、ラ・レアルの攻撃を牽引する役目を担っているが、最後の局面であまり決定的な仕事ができていないと感じている。彼が素晴らしい選手であることに議論の余地はないが、さらなる成長を遂げるためにはゴールとアシストという目に見える結果を残す必要がある。彼がレアル・ソシエダのスターから、例えばリバプールのようなクラブの選手になりたいと望むなら、今以上にゴールを決め、アシストを記録しなければならない」

 チームが国王杯やUEFAヨーロッパリーグ(EL)を順調に勝ち抜いた場合、久保にはまだ20試合以上残されており、キャリアハイの成績を残すことも可能だろう。この後、累積警告によりバルセロナ戦は欠場せざるを得ない。しかしそれによって十分な休養を取れるようになり、マンチェスター・ユナイテッドとのELラウンド16第1戦に臨めることは不幸中の幸いと言える。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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