U-20→A代表へ推奨の逸材厳選 194cmGKに大物感…“驚異のキック精度”MFはE-1選出期待【コラム】

W杯出場を決めたU-20日本代表からA代表推奨の選手を紹介【写真:Getty Images】
W杯出場を決めたU-20日本代表からA代表推奨の選手を紹介【写真:Getty Images】

U-20日本代表はアジア杯でベスト4

 船越優蔵監督が率いるU-20日本代表はU-20W杯の予選を兼ねたU-20アジアカップの準々決勝で、強敵イランを延長PK戦の末に破り、世界行きを決めた。しかし、ファイナル進出をかけた準決勝は大幅にスタメンを入れ替えた影響もあってか、オーストラリアを相手に精彩を欠き、2-0の完敗に終わった。

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 今回は海外組からMFニック・シュミット(ザンクト・パウリ)、FW道脇豊(ベフェレン)の2人、またプレミアリーグのサウサンプトン加入が内定しているFW高岡伶颯(日章学園高)が参戦した一方でFW後藤啓介(アンデルレヒト)やFW塩貝健人(NECナイメヘン)、MF保田堅心(ゲンク)、アルゼンチンで武者修行中の貴田遼河(アルヘンティノス)、スウェーデンで評価が急上昇中のDF小杉啓太(ユールゴールデン)などが外れており、現在考えられるベストメンバーというわけではない。

 それでもアジアカップで国際経験を積んだ選手たちが、Jリーグや大学サッカーで成長をアピールしていけば、9月にチリで開催されるU-20W杯はもちろん、大岩剛監督が率いるロス五輪代表、さらにはA代表への道も開かれてくるはずだ。少し気が早い話ではあるが、今回の参加メンバーからA代表に飛躍していきそうなタレントをピックアップする。

 GKはグループリーグとイラン戦の4試合ゴールマウスを守った17歳の荒木琉偉(ガンバ大阪)が筆頭だろう。現役高校生だが、194cmという恵まれたサイズと年齢からは考えられない威風堂々とした立ち居振る舞いで、すでに大物感が漂っている。所属クラブでは一森純、東口順昭という経験豊富なライバルがおり、Jリーグ屈指の二枚の壁を越えられるか。

有望株DFは最もA代表に近い存在

 ディフェンスラインではキャプテンでもある市原吏音(RB大宮アルディージャ)が、心身両面で、現時点では最もA代表に近い存在だ。J2が主戦場となる市原。森保一監督は原則、7月に韓国で行われるE-1選手権でも、J1から全てのメンバーを招集する可能性が高い。また9月の本大会まではU-20代表の活動になると見られるが、そこから半年間で北中米W杯に向けた“森保ジャパン”に滑り込んでいけるか。

 将来性を加味したポテンシャルという意味では189cmの喜多壱也(京都サンガ)も有望だが、U-20W杯はともかく、2028年のロス五輪を目指す大岩ジャパンはもちろん、森保ジャパンまで飛躍していくには、対人面、統率面ともにここから大きく成長していく必要がある。左サイドバックの高橋仁胡(セレッソ大阪)はバルセロナ仕込みのテクニックと戦術眼に、力強さも付いてきており、まずは所属クラブのセレッソでアーサー・パパス監督の信頼を勝ち取れるかどうか。日本代表の中では比較的、メンバーが定まっていない左サイドバックだけに、E-1選手権のメンバーに食い込む可能性はある。

 良い意味で、筆者を驚かせたのが梅木怜(FC今治)の活躍だ。右サイドから小気味よく攻撃に絡み、流れの中でも効果的な攻め上がりで、アタッキングサードに顔を出していた。もちろん市原と同じく今シーズンはJ2が舞台になるので、ひとっ飛びにA代表入りは考えにくいが、今治を躍進に導く活躍を経て、ここから順調にステップアップを続けてほしいタレントの一人だ。

すでにJ1で重要戦力の18歳MF

 中盤は今回のアジアカップで中心的な役割を果たした佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)が、現時点ではポールポジションにいるかもしれない。攻撃センスが高い上に、戦術的な理解力、試合の状況判断力が飛び抜けており、そのポテンシャルはパリ五輪のトレーニングパートナーとして参加した際に、大岩監督が「正直そのままチームに残したかった」と嘆いたほどだ。

 しかし、アカデミーから育ったFC東京ではなかなかチャンスを得られず、J1初昇格の岡山に飛躍の場所を求めた。開幕から好調の岡山もボランチ、シャドーともに競争が激しく、佐藤にポジションが約束されているわけではないが、きっかけひとつでいきなりE-1選手権の候補に躍り出てもおかしくない。

 イラン戦の冷静なPKが印象的だった中島洋太朗(サンフレッチェ広島)も、広島では富士フイルム・スーパー杯やACL2で早くも存在感を示しており、ミヒャエル・スキッベ監督も中盤で、すぐにでもスタメンを奪う能力があることを認めている。そもそも広島は過密日程をこなさなければならず、中島はFW井上愛廉とともに、すでに重要戦力であることは間違いない。視野が広く、キックが恐ろしいほど正確であるため、ボールを持てば確実にプラス効果を生んでくれる。

 ボランチであるだけに、守備強度やカバー範囲はさらに上げて行きたいが、スキル面はもうA代表のメンバーにも引けを取らないだろう。中島にとってのアドバンテージはFWジャーメイン良やMF川辺駿、DF中野就斗など、広島にA代表の有力候補が多く、森保監督や代表スタッフに毎試合、チェックしてもらえる環境にいることだ。いきなりフルメンバーのA代表に呼ばれることは難しいが、E-1選手権に食い込む余地は十分にありそうだ。

海外組多数の激戦FW争い

 イラン戦でスーパーミドルを決めた小倉幸成(法政大)は小柄ながら運動量とスキルを兼ね備えており、積極性も買い。ここから期待して行きたいタレントの一人。ただ、現在は大学生という事情もあり、いきなり森保監督が北中米W杯を目指すA代表の即戦力として注目するとは考えにくい。まずはU-20W杯のメンバー入り、そして大岩ジャパンに定着していくことが当面の目標になりそうだ。今は大学生と言っても、早期の特別指定やプロ契約もあるので、小倉がどういうルートを進んでいくのか注目して行きたい。

 攻撃センスという意味では大関友翔(川崎フロンターレ)と石井久継(湘南ベルマーレ)にも期待したいが、川崎も湘南も開幕戦から好調で、中盤の選手層は厚いだけに、いかに食い込んでいけるか。ただ、川崎の場合はACLエリートでも出場チャンスがあるだけに、ボランチでチャンスの起点になりながら、ボックス内まで侵入していく特殊能力がアジアの舞台で発揮されるか注目だ。石井も湘南の主力メンバーに無い持ち出しのスキルがあり、文字通り開幕3連勝と波に乗るチームで、山口智監督がどうチャンスを与えていくか。

 FWは今回のメンバーでは神田奏真(川崎フロンターレ)が筆頭格か。178cmと大型ではないが、ボールを収める能力が高く、機動力もある。所属クラブでは昨シーズンの終盤から良いアピールをしており、今シーズンから指揮する長谷部茂利監督も、ジョーカーとしては十分に計算しているはず。無論、早期のA代表を狙うにはE-1の有力候補と見られるエース山田新のお株を奪うぐらいのスーパーブレイクが必要だ。

 FWは後藤ら海外組の他にも徳田誉(鹿島アントラーズ)など、今回メンバー外だった有力株が多く、仮にフルメンバーで世界に挑めるなら、神田ですら招集の保証がないぐらい競争力が高い。道脇豊(ベフェレン)はポテンシャルだけで言えば、後藤や塩貝にも比肩するものがあるだけに、アジアカップで多大なインパクトを残せなかったことを良い意味で糧にして、欧州での飛躍に期待したい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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