ベテラン川島永嗣が苦言…無失点でも「命取りに」 突如見せた鬼の形相、怒り露わの舞台裏【コラム】

磐田の川島永嗣【写真:徳原隆元】
磐田の川島永嗣【写真:徳原隆元】

J2リーグ第2節・鳥栖戦で1-0勝利も…あわやの場面に言及

「最後のところは本当に命取りになると思うので、自分たち自身でもう一度見つめ直して厳しくやっていかなければいけない」

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 ジュビロ磐田の元日本代表GK川島永嗣は、昇格のライバルとなるサガン鳥栖とのJ2第2節(2月22日)で、殊勲のPKストップでチームを救った。1-0で磐田を開幕2連勝に導いたベテラン守護神が、こう厳しく振り返ったのは後半42分にPKを与えた場面ではなく、後半アディショナルタイム6分に訪れた最後のピンチについてだった。

 鳥栖の右センターバック(CB)井上太聖がハーフウェーライン手前から完全に前を向いて前線にロングフィードを送る。そこに構えていたMFヴィキンタス・スリヴカが磐田の左サイドバック(SB)松原后とDFリカルド・グラッサの間にポジションを取ってボールを受けにいく。ディフェンスラインが下がり、グラッサだけが残って競りに行くところに、鳥栖は途中投入のFW酒井宣福も競りかけて、ヴィキンタスと挟む形に。

 結果的に外側のヴィキンタスが頭ですらしたボールを追い越したMF西川潤が拾うと、松原が後手を踏む形で対応できず、右CB江﨑巧朗も松原とのスペースを埋め切れないまま、西川に前を向かせてしまった。そこから左足で放ったシュートは川島がワンハンドで弾き出したが、川島はPKを止めたシーンとは打って変わり、チームメイトに向かって鬼の形相を見せながら叫んだ。

「結果を見れば無失点かもしれませんけど、まだまだ詰められたことはあると思うので、そういうシーンを作らせないように自分たちでまたやっていきたい」と川島。3-2で勝利した水戸ホーリーホックとの開幕戦でも、最後の時間帯で失点し、あわや引き分けというところに追い込まれたことを大きな反省材料として認識している。

 もちろん鳥栖側も終盤で点を取るためにベストを尽くそうとしてくるなかで、すべて完璧に防ぐことは難しい。しかし、こういう時間帯に前からのプレッシャーはもちろん、後方の基本的なオーガナイズが崩れたところでやられたら、それまでの頑張りも無駄になってしまう。

「試合は70分、75分では終わらない」 指揮官も課題指摘

 試合を通して見ると、前半からボールは持つものの鳥栖のコンパクトなブロックに対して、なかなか効果的な攻撃を生み出すことができずに、自陣でのボール回しや苦しいところからのクロスが増えてしまった。後半は鳥栖のプレス強度が強まるなかでも、勇気を持ってボランチのMF中村駿やMF上原力也を経由して、サイドのMFジョルディ・クルークスやMF倍井謙がボールを持つシーンが増えたところから、鳥栖陣内での連続性のある攻撃も見られた。

 そうした展開の中で生まれたゴールはハイラインで来る鳥栖に対して、グラッサのロングボールから左の倍井が抜け出して、飛び出してきたGKヤン・ハンビンの頭上に決めた見事なゴールだった。

「相手のラインが高いっていうのは前半からずっと感じたので、リカとしっかり目が合って、タイミングよく抜け出せたのが一番大きかったですし、GKが出てくるのがしっかり見えた。あとはもう丁寧に、ゴールに流し込むことを考えていました」

 そう振り返る倍井の狙い、シュートそのものも素晴らしかったが、水戸戦に続く貴重なゴールを挙げた倍井のそこまでの布石がつながったゴールでもあるだろう。それでも全体としては60%以上のボール保持率を記録したなかで、シュートは鳥栖の半分の7本で、いかに決定的なチャンスを作っていくかにプラスして、シュート意識のところでも課題が残った。

 磐田としてはジョン・ハッチンソン監督がポゼッションとハイプレスをベースにした新しいスタイルに取り組んでいるところで、改善すべきところは多々ある。その中で結果を出しながらアップデートしていけることはポジティブだが、水戸戦での3点リードからの2失点しかり、鳥栖戦での最後のピンチしかり、チームとしての甘さが命取りになりかねない状況が続いている。今のうちに改善していかないと、ここから長いシーズンの中で勝ち点を取りこぼすことになるだろう。

 ハッチンソン監督も「試合は70分、75分では終わらない。これはメンタリティーだったり、クラブのカルチャーという部分だと思いますけど、これは我々全員の問題であり、改善していかなければいけない」とチームの大きな課題を認識しているが、意識1つで変えられるほど簡単なことではないかもしれない。それでも磐田が勝ち点3を継続的に積み重ねていくために、避けては通れない課題だ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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