米国代表にルーツも…「日本のために」 ライバルを意識した五輪、歴代ハイレベルのGK争い「今後は分からない」【インタビュー】

野澤が小久保、彩艶らと日本代表の一枠を争う
FC東京のゴールを守るGK野澤大志ブランドンは、17歳でプロ契約を結ぶといわてグルージャ盛岡への育成型期限付き移籍を経て23年に復帰した。少しずつ出場機会を得ながら、GK黄金世代とも言える仲間達とも切磋琢磨しながら成長を続けた。集大成となった24年のパリ五輪では出場機会を得られなかったが、それは同時にGKとして考えさせられるものがあった時間になったという。(取材・文=轡田哲朗/全4回の4回目)
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岩手での1シーズン半を終えると、FC東京から復帰の打診があった。「まず、FC東京に戻れると思っていないところから声を掛けてもらい、戻ってこられたのが不思議だった。『自分でいいんですか? まだまだじゃないですか?』と。ちょっと変化に追いつかないところもあったけど、2番手でもチャンスがいつ転んでくるか分からないから、そこに身を置いてみようと思いました」と、高校生年代からアカデミーに加入したチームへ戻る。
当初はGKヤクブ・スウォビィクが主戦だったが、ラスト10試合は野澤が任せられた。その活躍が評価されたか、翌年1月に開幕するアジアカップではA代表にも選ばれた。それでも、第2GKの難しさを感じたシーズンだったという。
「いつでもやってやるという気持ちはあったようで、まだなかったなと思います。試合に出たらやってやるという気持ちはあったけど、いざピッチに立ってみると意外とまだ心の準備ができていなくて不安になった。2番手としてパッと試合に出る難しさはこういうことかと。準備ができているようでできていないんだなと思わされる時期もありました。すごくありがたい話ですけど、試合に出ながら得てきたものが大きいですね。ミスも失敗もありながら使っていただいたことは感謝です」
そしてアジアカップでは同い年のGK鈴木彩艶が正GKを務め、出場機会をなく終えた。一方で、パリ五輪世代として注目も浴びるスタートになった。「そんなに大きな目標を立てて歩んでいくタイプでもなく、目の前のことを無駄にしないで誠実に歩んでいこうというタイプなので、『2024年だから今年は五輪だぞ』と力んでいたわけでもなかったですね」という野澤だが、アジア予選から本大会では2学年上のGK小久保玲央ブライアンの大活躍を目の当たりにすることになる。それは、野澤に考えるキッカケを与えた。
「試合で使いたいGKはどういうGKなのかを考えさせられるキッカケになったと思います。『プレーしたい、プレーしたい』と、わがままに思えるくらいの熱い気持ちも大切なんですけど、使いたくなるGKがどういうものか今も探っているところだし、もっと成長できると思っています。上手いだけでない、何かの要素があるんだなと。それは勢いや安定感などだと思いますけど。
僕の中ではU-23のアジアカップや五輪もそうですけど、小久保選手がチームに勢いをもたらしていたと思います。もちろん、当時はすでに鈴木選手がA代表に選ばれてプレーをしていたけど、小久保選手が出ているのを見て勢いを感じましたね。技術的なところではもしかしたら鈴木選手が上の部分があるのかもしれないけど、短期決戦で厳しい戦いをチームが勝つためのエネルギーを出すのに必要な選手だったと思います」
家族構成によりルーツのある米国代表でプレーする可能性もある野澤だが「日本のために、日本代表として戦うことに誇りを感じますね」と話す。それは、日本代表への選考や大舞台への道のりで、この世代の切磋琢磨がこれからも続いていくことも意味する。
「今後どうなるか分からないし、短い選手生活の中でもたくさんの変化をしてきたので、現状に満足していると変化も少ないと思う。特にこれからどうなるかそんなに考えていないですけど、今まで自分が歩んだ中で大切にしてきたものを大切しながら、もっとできる部分をさらに良くしていきたいなと思います」
2025シーズンは「年間を通して勝負をしたい」と話した野澤。1つ1つ地に足を着けて目の前のことをクリアしていく先に日本代表としての活躍が待っているはずだ。
【試合情報】
開催日:2025年2月26日(水)
カテゴリー:J1リーグ第3節
対戦カード:FC東京 vs 名古屋グランパス
キックオフ時間:19:00
試合会場:味の素スタジアム
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(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)