「削ることだけ考えてる」欧州の完全アウェー体験 日本と異なる独自文化も「楽しかった」【インタビュー】

欧州の国際大会にも出場した金子拓郎【写真:Getty Images】
欧州の国際大会にも出場した金子拓郎【写真:Getty Images】

金子が欧州CL予選で実感したアウェー「差は日本より大きい」

 浦和レッズに今季の新戦力としてベルギー1部コルトレイクから加入したMF金子拓郎は、クロアチア1部ディナモ・ザグレブ時代にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の予選と、UEFAカンファレンスリーグ(ECL)に出場した。その中では、両大会での顔を合わせることになったギリシャのクラブとの強烈なアウェーゲームが最も印象に残る経験になったと話す。(取材・文=轡田哲朗/全6回の6回目)

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 金子は日本大学4年時の2019年に札幌へ特別指定登録され、公式戦デビューを飾った。翌年に正式加入するとコンスタントな出場機会を掴み、得点力も身に付けていく。そして、23年夏にザグレブへと移籍した。スタジアム全体でその1試合、その時間を楽しもうという空気がどこかにある日本とは違い、そこにあるのは戦いであり、国内リーグであっても対戦相手ではなく「敵」という扱いであることが珍しくない。

 金子は、その空気感について「そうですね、デュエル(戦い)という感じで」と苦笑いした。

「対戦相手はそんな感じですよね。ハードワークして、デュエルも多かった。ダービーなんかになるとボールを狙ってない感じで、足を削ることだけ考えているような殺伐とした雰囲気の中でやる感じだった。それは日本では経験できない雰囲気で楽しかったですね。

 やっぱり文化が、サッカーが文化なので日本との違いは感じましたね。それが楽しかったですね。もともと対人が好きなので、削りに来る、殺しに来るようなのをかわしていくのは気持ち良かったです。でも、えぐいタックルもあったし、『今の、当たってたらヤバかったな』みたいなのも結構ありましたよ。でも、海外はこんな感じなんだろうなと思って、楽しんでましたね」

ECLではアウェーで「飲み込まれる感覚」

 その2023-24年シーズンにおいてザグレブの最初の山場こそCL予選を突破できるかどうか。ザグレブはギリシャのAIKアテネとの対戦になり、2戦合計3-4で敗れてしまう。金子は両試合ともベンチスタートで、ホームでの初戦に途中出場の記録が残っている。しかし、そのアウェーの空気は別格なものだったという。

「CLの予選に出ていて、そこで負けてしまったんですけど、ギリシャのチームはスタジアムの雰囲気がヤバかったですね。一番すごかったと思う。そう、AEKアテネです。試合の前日か何かに、サポーター同士の抗争みたいなので1人亡くなったというニュースもあって、余計に雰囲気もヤバかった。スタジアム中がブーイングみたいな感じで」

 そして、CLで敗退するもECLで決勝トーナメント進出したザグレブは、16強でギリシャのPAOKと対戦する。ホームの初戦で2-0の勝利を飾ったが、アウェーでは1-5の大敗を喫して敗退した。金子は2試合とも途中出場の記録が残っている。

「今度はカンファレンスリーグでPAOKとやったんですけど、それもすごかった。日本だと、だいたいゴール裏だけじゃないですか。ギリシャはもう会場全体が本当にヤバくて、全員がブーイングをして、全員が応援する。本当に飲み込まれる感覚ですよね。あとは、(ECLプレーオフで)ベティス(スペイン1部)とやった時もそんな感じでした。会場全体で応援する感じで、文化の違いだとは思うけど凄かったですよ」

「やりたくてもやれないものだし、いい経験だった」

 ホームとアウェーの違いは、なかなかJリーグからイメージするのは難しい。これまでにも海外でのプレー経験のある選手が、それこそ試合会場で与えられるロッカールームの設備も違うと話したこともあった。

 そのような環境を経験したことについて金子は「やっぱりホームとアウェーの差は日本より大きいと思いますね。日本でもありますけど、それとはちょっと違って完全アウェーという感じなので。でも、それが楽しかった。やりたくてもやれないものだし、いい経験だったなと思いますよ。プロサッカー選手人生は短いので、その中でカンファレンスリーグでもヨーロッパの大会に出られたのは良かったと思いますよ」と話した。

 加入が決まった浦和は日本の中でも勝負にこだわる雰囲気をホームで作るクラブとしてサポーターも有名だが、ギリシャで味わった完全アウェーの環境は選手としてかけがえのない経験になったようだ。

[プロフィール]
金子拓郎(かねこ・たくろう)/1997年7月30日生まれ、埼玉県出身。前橋育英―日本大学―札幌―ディナモ・ザグレブ(クロアチア/期限付き)―コルトレイク(ベルギー)―浦和。23年には札幌で半年間の在籍ながらJ1ドリブル総数で1位(156回)を記録。ザグレブ時代にUEFAカンファレンスリーグで8試合2得点。25年に地元クラブである浦和に完全移籍し、Jリーグに復帰した。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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