“新生”横浜F・マリノスはまだ「2割」 3バック導入、過密日程…試合巧者になるための布石【インタビュー】

【横浜ダービー熱狂週間】“新生F・マリノス”の現在地
「日本サッカーを共に盛り上げる」を新たなコンセプトに掲げる「FOOTBALL ZONE」では、クラブや選手の魅力を“深掘り”する「ZONE的Jクラブの深層」を掲載。今回は、「横浜ダービー熱狂週間」と題し、 “横浜ダービー”のカウントダウン企画を実施する。2月26日にホーム「日産スタジアム」で横浜FCを迎え撃つ横浜F・マリノスは今季、新監督の下で新たなスタートを切った。そんな“新生F・マリノス”の現在地をクラブアンバサダーの波戸康広氏に語ってもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の2回目) ※取材を実施した2月19日時点の情報に基づく
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イングランド・プレミアリーグのチェルシーやイングランド代表で参謀としてチームを支えてきた経歴を持つスティーブ・ホーランド氏を新監督に迎えた横浜F・マリノス。アタッキングフットボールの哲学はそのままに、さらなる進化を目指そうとしている。
新体制が始動後、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)では2連勝を飾ったのに対し、Jリーグ開幕節となるアルビレックス新潟戦を1-1のドローで終えている。3バックの新システムを採用して1か月弱、波戸氏はシーズン序盤の公式戦を振り返り「監督が落とし込もうとしている戦術は2割ほどしか発揮されていないのではないか」と冷静に分析する。
特に、新潟戦では前半のシュートは0本。後半25分に3選手を一気に交代させて4バックへシステム変更するまでは、相手に主導権を握られた。
「ファン・サポーターのみなさんとしては、3バックに基本システムが変わったことで、昨季の横浜F・マリノスが良かったときのアタッキングフットボールを見せられていない、守備が重くなった、パスワークにリズムがないんじゃないかなど、いろいろな意見を持たれているのではないかと推察します」
それでも、FWアンデルソン・ロペスのPKで追い付き勝ち点1をもぎ取ったこの試合に「個人的にいいと思う発見があった」と指摘する。
「この一戦でチームは、3バックでスタートして流れが悪くても、4バックでリズムを取り戻せることを証明できました。この戦術変更に対応できた選手を素晴らしいと感じましたし、開幕戦の結果は自信につながったはずです。また今後は、リードしている展開から守備固めで3バックへとシフトチェンジするという戦い方もできるかもしれません。昨シーズンにはなかった3バックと4バックの使い分けの練度を高められれば、さらに進化した横浜F・マリノスになるんじゃないかと期待が膨らみました」

過密日程がチームにもたらす効果
とはいえ、アジアでの戦いもこなすことで、横浜ダービーまでに消化する公式戦は横浜FCよりも2試合多い。新シーズンが始まったばかりでコンディションが心配される。タイトな日程は来たる一戦へ戦術の練度を高める意味でプラスか、それともマイナスに働き得るか。
この疑問に対し、波戸氏は現在のチームにとって「過密日程はプラス材料」と力強く言い切る。その根拠はこうだ。
「確かに、昨シーズンは60試合以上を戦ったために選手が疲弊していました。クラブとして未知の領域だったので仕方ありません。しかし、これがトップクラブとしてのベースなんだと理解できた部分でもあります。
なので、真の強豪になるのであればこれを乗り越えていかなければならないと、今シーズンはチーム全員がそうした意識を持てていると思います。今は全選手がモチベーションの高い状態です。監督はアジアでの戦いも並行して行っていく中で可能な限り全員を使っていこうと考えているはずですし、選手だってレギュラー取りへ向けてアピールしたい思いは強いので、モチベーションを高く維持するためのすごくいい条件が整っています」
また、波戸氏は過密日程の中でも勝利を追及することがリーグ戦をはじめとした国内の戦いで相乗効果を生むと考える。
「国内の他クラブよりも消化試合数が多いとなると、当然ながら疲労度が違ってきます。なので、前半で畳みかけて試合を決め、後半はボールを保持し次戦を見据えるといった戦い方を場合によってはしなければなりません。タイトな日程で試合をこなしていけば、チームはやがてそういう考えを共有するようになってくると思います。
つまり、“試合巧者”にならないと厳しい状況を乗り切れません。次を考えながら試合をする、それが本当に強いチームの姿とも言えます。そして、横浜F・マリノスはその段階に来ているクラブです」
横浜F・マリノスが今シーズンに掲げるチームスローガン「Be a Stunner 圧倒的な存在であれ」。チームを取り巻く現在の状況は、そのための近道とも呼べそうだ。
[プロフィール]
波戸康広(はと・やすひろ)/1976年5月4日生まれ、兵庫県南あわじ市出身。滝川第二高校卒業後の1995年に横浜フリューゲルスに加入し98年までプレー。フリューゲルスのチーム消滅に伴い、99年に横浜F・マリノスへと移籍し2004年シーズン途中まで在籍した後、柏レイソル、大宮アルディージャを経て10年に横浜F・マリノスへ復帰を果たし、翌年に現役を退いた。12年に横浜F・マリノスのアンバサダーに就任。現役時代は主にサイドバックとして活躍し、日本代表としても15試合出場を記録している。
(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)