J1で2年ぶりダービー 横浜を巡るプライド激突…一戦に懸かる重み「存在価値を示す場だった」【インタビュー】
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【横浜ダービー熱狂週間】Jリーグ屈指の伝統を誇る横浜のクラブ同士の戦い
「日本サッカーを共に盛り上げる」を新たなコンセプトに掲げる「FOOTBALL ZONE」では、クラブや選手の魅力を“深掘り”する「ZONE的Jクラブの深層」を掲載。今回は、「横浜ダービー熱狂週間」と題し、 “横浜ダービー”のカウントダウン企画を実施する。今季初戦は2月26日午後7時、横浜F・マリノスがホーム「日産スタジアム」に横浜FCを迎えキックオフ。Jリーグにおける横浜ダービーの歴史的な意義や未来への願いを、横浜F・マリノスのアンバサダーである波戸康広氏に訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の1回目)
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J1の舞台で“横浜ダービー”が2年ぶりに実現する。横浜F・マリノスと横浜FCによるダービーが初めて行われたのは、横浜FCがクラブ史上初めてJ1に昇格した2007年。以来、計8試合が行われ、横浜F・マリノスが4勝1分3敗で勝ち越している。
とはいえ、日本プロサッカー界の歴史から見れば、横浜ダービーはJリーグ屈指の伝統を誇るカードでもある。“オリジナル10”の横浜マリノスと横浜フリューゲルスが紡いできた歴史。1995年から98年まで在籍したフリューゲルスでダービーを戦った波戸氏は、この一戦に感じた重みをこう振り返る。
「マリノスというクラブは僕にとって凄く大きな存在であったと同時に、フリューゲルスの立場からは追いつけ追い越せと意識したチームでした。そんな日本サッカー界を代表する名門クラブということもあり、マリノスとの一戦で自分をアピールできれば日本全体にアピールできるくらいの思いがありました。横浜ダービーは、日本代表入りへ向けて自分の存在価値を示す場だったんです」
周知のとおり、99年元日での天皇杯優勝を最後にフリューゲルスはクラブ消滅の道を辿った。こうした背景から、波戸氏は「現在の横浜ダービーにも熱い思いを抱くサポーターは多いはずです」と指摘する。
99年3月5日に日本サッカー協会理事会にて日本フットボールリーグ(JFL)準会員加盟を正式承認されて以来、横浜FCはクラブ独自の歴史をここまで築いてきた。それは、声援を送る側も同じ。横浜FCの誕生で新たな横浜ダービーとなっても、決して歴史が断絶されたわけではない。
「歴史を作ってきたのは横浜FCのファン・サポーターも同じです。在籍してきた選手の思いも受け止めてきたわけですから、チームの形が変わったとはいえ、Jリーグ発足当時からの熱い思いは連綿と受け継がれてきたのではないでしょうか」
横浜ダービーが“日本のナショナルダービー”となる未来へ
横浜F・マリノスに対し、横浜FCは近年もJ1とJ2の昇降格を繰り返すなどチームの置かれた状況は大きくことなる。2年ぶりの横浜ダービーを波戸氏はどうなると見ているのか。
「横浜FCは苦労の多い近年かもしれません。ただ、昨年をJ2で過ごしてもすぐにJ1への復帰を果たしました。これはつまり、それだけクラブとしての地力があるということです。降格したチームが1年で復帰するには本当にパワーを要します。監督も続投しましたし、選手がJ2を戦い抜いた事実を考えると、昨年を通して積み上げてきたものがあります。
さらに、今年は他クラブから経験ある選手を迎えましたから、積み重ねに新しい血が加わりパワーアップしている印象があります。そんな横浜FCをF・マリノスとしても下に見ているとは一切思えません。むしろ、横浜FCのチーム力を警戒しなければ足元をすくわれてしまうでしょう。だからこそ、今年の横浜ダービーはこれまで以上の球際の激しさなどが期待できると思います」
新たな歴史が紡がれようとしている横浜ダービー。まだまだJリーグで風物詩のような盛り上がりを見せているとは言い難いが、横浜F・マリノスのアンバサダーとして願うは“日本のナショナルダービー”と呼べる一戦へと発展することだ。
「将来的に『横浜ダービーを制するチームがJリーグの頂点に立つ』くらいのビッグな一戦として認知されるようになってほしいですね。神奈川にはプロチームが多いわけですし、その中で横浜のチームが特に存在感を高め、日本一へしのぎを削る未来が実現してほしい。そのためにも、横浜F・マリノスと横浜FCにはハイレベルな一戦を繰り広げてもらいたいと思っています」
横浜を代表するクラブは俺たち――。そんな意地のぶつかり合いが期待される一戦が刻々と迫っている。
[プロフィール]
波戸康広(はと・やすひろ)/1976年5月4日生まれ、兵庫県南あわじ市出身。滝川第二高校卒業後の1995年に横浜フリューゲルスに加入し98年までプレー。フリューゲルスのチーム消滅に伴い、99年に横浜F・マリノスへと移籍し2004年シーズン途中まで在籍した後、柏レイソル、大宮アルディージャを経て10年に横浜F・マリノスへ復帰を果たし、翌年に現役を退いた。12年に横浜F・マリノスのアンバサダーに就任。現役時代は主にサイドバックとして活躍し、日本代表としても15試合出場を記録している。
(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)