主戦場変わり「どうしていいか」…強豪校で苦悩、Jリーガー兄の助言受け「勝負の1年に」

樺山諒乃介を兄に持つ興國高の2年生MFの決意表明
1月に静岡で行われたU-17日本高校選抜候補合宿。そこに気合いの丸刈り頭で現れたのは、興國高の2年生MF樺山文代志だった。
「周りからは『何かやらかしたんか?』とよく聞かれたのですが、そうではなくて自分の今年に懸ける強い思いを表現したくて、自らの意思で刈ったんです」
この理由を記す前に、彼の選手としての特徴と歩みを触れていきたい。J3ギラヴァンツ北九州に所属する樺山諒乃介を兄に持ち、兄は力強いドリブルが武器のアタッカーなのに対して、弟はボランチやトップ下でフィニッシュまでの過程を担うセントラルMFとしてプレーをする。
昨年は攻守の要としてプリンス関西1部では卓越したセンスと、瞬間的な首振りから周囲の情報を把握してセカンドボールを回収したり、ワンタッチで縦パスを入れて攻撃の起点を作ったり、玄人好みのプレーを披露していた。
チームもプリンス関西開幕から好調を維持し、一時期は無敗で首位を走っていたが、9月に失速したことが響いて順位を落とすと、選手権では大阪府予選準決勝で履正社に1-1からのPK戦負けを喫し、全国の舞台には届かなかった。それでも選手権予選後にリーグ3連勝したが、プレミア参入戦進出枠にはわずかに届かず、3位でフィニッシュした。
「本当に悔しい1年でした。これまでずっとやってきたサイドと違って、中央のポジションは360度どこからでもボールが来ますし、事前に首を振って状況を見ておかないと次のプレーに大きな影響が出る。そこはずっと悩みながらやってきました。やれている手応えはあったのですが、結果を見るとやっぱりまだまだ足りないところだらけだったかなと思います」
彼が中央のポジションにコンバートされたのは昨年からだった。それまでは兄と同じサイドハーフとしてドリブルでガンガン仕掛けて行くタイプだった。だが、彼の足もとの技術とボディーバランス、ボールを持ってからの引き出しの多さからボランチやトップ下を与えられた。
「中をやるまで首を振るという習慣がなかったので、『360度見るなんてできへん』と思ってめっちゃ苦戦したんです。ボールを受けてからどうしていいか分からなくて、練習中とかでも奪われまくって、『サイドに戻りたい』と逃げたくなったこともありました」
移籍するJリーガー兄から突如「丸刈りにしてくれ」
だが、周りからアドバイスをもらっていくなかで、徐々に自分なりのアプローチができるようになっていった。特に兄からのアドバイスは貴重だった。プロで目の当たりにしたセントラルMFの選手たちの特徴や、兄が真ん中の選手に求めるプレー、時には自分の試合映像を送って見てもらい、具体的なアドバイスをもらう日々。
「(兄の言葉で)心に響いたのは『ボールをもっと受けにいけ。そのためにはもっと首振って周りを見ておけ』の一言。受けてから見るのではなく、受ける前に見ておいて、そこから予測をして、ボールを持って顔を上げた時に変化していたら、そこでももう一度見直してからプレーする。そこは大事にしています」
4月からは高校最高学年を迎える。「後悔をしないようにやり切る。これが僕の目標で、この丸刈り頭は目標達成のための覚悟です」と決意表明をしながら頭をさすった。その清々しい表情に感心していると、彼は「実はこれも兄に感化されたからです」と続けた。
「お兄ちゃんは今季からギラヴァンツ(北九州)に移籍をすることになったのですが、大阪の実家で北九州に行く前に、『勝負の年として気合いを入れて行きたいから、丸刈りにしてくれ』と僕にいきなり言ってきたんです。めっちゃ驚いたのですが、お兄ちゃんの覚悟が相当だったので、僕も気持ちを込めてお兄ちゃんの頭を丸めました。そこから数日経った始業式の前日に急に『僕もお兄ちゃんのように気合いを入れて、勝負の1年にしたいな』と思ったので、真ん中のお兄ちゃん(諒乃介は長男、文代志は三男)にお願いして頭を刈ってもらったんです」
同じ勝負師として刺激し合いながら、未来を切り開いて行く。彼は兄と同じステージに立つことを夢見て動き出している。
(FOOTBALL ZONE編集部)