Jクラブ練習に衝撃「到底通用しない」 高卒プロ志望も…突きつけられた現実「悔しい」

悔しさ残る選手権敗退…青森山田2年生GK松田駿の現在地
2月上旬に開催された東北新人サッカー大会の準々決勝。同じプレミアリーグEASTに所属する尚志(福島)と対戦した青森山田(青森)は、前半を1-0で折り返すも、後半だけで4失点を喫して準々決勝敗退を喫した。
屈辱のスコアに青森山田の2年生GK松田駿はタイムアップのホイッスルの瞬間、しばらく動けなかった。
「後半に相手のスイッチが入ったなかで、GKからチームの士気を高めるべきだった。リスクマネジメントはやっぱり課題だと思いました」
勝負の厳しさを痛感したばかりだった。ちょうど1か月前の高校選手権初戦の高川学園(山口)戦にスタメン出場した松田は、0-0で迎えた後半7分に一瞬の隙を突かれた。右CK(コーナーキック)を得た高川学園はニアサイドのペナルティーエリア内で4人が手をつないでその場で旋回する「トルメンタ」を仕掛けてきた。
スカウティングでも警戒していたが「ショートコーナーをしてくるとは思わなかった」と振り返ったように、トルメンタが解けたあとにキッカーに駆け寄っていったMF柿本陽佑にボールが渡った瞬間、松田は一瞬混乱をしてしまったという。
「正直、ニアはないと思っていました……。あの瞬間、『ポジションを取り直さなきゃ』と自分の準備に精一杯になって、DF陣に指示を出せなかった。映像で見返しても、ショートコーナーになった瞬間に、味方の選手に対して『前に出ろ!』とはっきりと指示をしていたら、もっと強く2番(柿本)に寄せることができていたし、DF2人でクロスをブロックしたり、そこで奪えたりしていたかもしれない。それなのにその声を出すことができず、簡単にクロスを上げられてしまって、反応も遅れてしまった結果、(ポストに当たった跳ね返りを折り返されてヘッドで)決められてしまった。完全に自分の判断によっては防げた失点でした」
後半33分にPKで追加点を許し、終了間際に1点を返すも追いつくことができないまま、屈辱の初戦敗退を喫してしまった。
「失点してからの時間の流れも本当に早くて、勝負というのはあんな一瞬で左右してしまうんだと。よく『勝負が決まるのは一瞬』と言われていましたが、それを身に染みて感じました」
悔しさが色濃く残るうちにさらなる悔しい思いを味わうことになったが、この2つの経験が彼をGKとして成長させる土台になることは間違いない。
「僕は高卒プロを目指しているからこそ、こういう経験は必要だと思うし、ただプロを目指しているからと言ってチームよりも自分を優先しては絶対にいけない。チームが勝つために何ができるか、悔しい思いをした時に何がダメだったのかを分析して向き合っていかないといけないと思っています」
彼の兄である松田陸(ジェフユナイテッド千葉)も高卒でプロになり、今季でプロ8年目を迎える。兄の姿も間近で見ているからこそ、思いも強いし、厳しさも理解している。さらに、すでにJクラブの練習にも参加しており、そこでプロのシュートスピードとプレースピードに衝撃を受け、「このままでは到底通用しない」と強烈な危機感を持った一方で、「やっぱりプロになりたいという気持ちが強くなった」と向上心にも火がついた。
「悔しいですが、現実から目を背けてはいけないと思っています。プレミア開幕に向けてもう一度しっかりと見つめ直して行きたいと思います」
そう精悍な顔つきで目線を上げた。次見るときはさらに逞しくなった姿が見られるだろう。そう期待できる表情だった。
(FOOTBALL ZONE編集部)