野澤大志ブランドン、プロ入りまでの道のり

　今季のJ1開幕戦で横浜FCに1-0の完封勝利でスタートしたFC東京。そのゴールを守ったのは、GK野澤大志ブランドンだった。高校生になるタイミングでFC東京のアカデミーに加入。他地域とのかかわりの難しさがあるという沖縄県出身の彼は、地元にできたJクラブの存在が人生のキッカケになったのだと話す。（取材・文＝轡田哲朗／全4回の2回目）

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場！

　　　◇　　　◇　　　◇

　昨年は1月のアジアカップでA代表に、夏にはパリ五輪代表に選出された。鈴木彩艶、小久保玲央ブライアンとともに、GK黄金世代とすら言える一角を占める野澤がサッカーを始めたのは小学3年生頃。「親に勧められたんですよ」という形でスタートしたのが、GKとしてのプレーだった。

「小学5年生の時にはいろいろと悔しい思いもしながら、本気でGKを頑張ろう、もっと取り組もうと思った」と話した野澤は、沖縄県内でも注目の選手になっていく。一方で、「小学6年生の頃に沖縄県トレセンや九州トレセンにも選ばれたんですけど、沖縄は県外とのつながりがサッカーをするうえの難しさだと思う」と話す環境もこの世代の頃から実感していた。

　その野澤はFC琉球のアカデミーへ加入するチャンスを掴む。「沖縄の中でしか競争がないと僕は思っていたし、うまくなるためには部活じゃなく良い環境で勝負できるほうが自分のためになるのかなと。FC琉球に行けるなら行きたいと思ったところで選んでいただけた。感謝したいです」と、迷いなくFC琉球への加入を決めた。

　今から約10年前、FC琉球は創設から10年足らずのクラブで、JFL（日本フットボールリーグ）で戦いJ3への昇格を勝ち取るかどうかというころだった。それでも野澤にとっては「地元にあったJクラブのアカデミーに行けたのは自分の人生に大きなキッカケになったと思います」と、自身にとって大きな転機を振り返る。

　沖縄県で着実に成長を続けた野澤は、U-15日本代表にも選出される。そこで次のチャンスを勝ち取ることになった。「FC東京にスカウトしていただいて、練習参加もさせてもらったんです。そこですごくピッチ内外で刺激的でワクワクしたんですよね。それで決めたという感じです」と、高校年代からは上京してFC東京のアカデミーへ進むことを決意した。

「サッカーをしたい思いもあったし、どんどん成長したかった。僕自身は挑戦をしたかったのでホームシックなどはなかったですけど、両親からしたら15歳で突然家を離れる寂しさはあったと思うんです。僕の選択を尊重してもらったので、感謝という言葉が浮かびました。最終的には選択を尊重してくれて、不安はあったのかもしれないけどパニックになることもなく背中を押してくれました」

　その野澤は着々と成長し、16歳の誕生日を迎える前にFC東京U-18に所属しながらJリーグの公式戦にも出場できる二種登録をされる。そして2019年には17歳で、FC東京U-23チームの一員としてJ3でデビューも果たした。2020年に向け、FC東京は野澤にトップ昇格を告げプロ契約を結んだ。

「高校3年生の時からプロ選手としての生活が始まって、イメージしていたのは卒業後のプロ入りだったけど、それを1年早くできたのは僕自身を謙虚にさせる出来事でした。自分で掴み取って自信をつけたというより、その環境がより謙虚にさせましたね。自分の力だけでなく、支えられ、助けられて、ここに来られたと。それが今の自分を形作ってきたと思います。

　当時はU-17ワールドカップもあり、高校2年生の1年間はそこを目標に頑張っていたんですけど、メンバーに選ばれて本大会に行ったものの試合に出られず帰ってきたのが秋頃でした。その1、2か月後にチームから『来シーズンからプロ契約します』と言われて。いろいろと自分で目標を立てて頑張ったけど、W杯はむなしく終わった。高校3年生でどう頑張ろうかなと思っていたところ、そう言ってもらえたので、自分の人生を振り返るキッカケになりましたし、振り返った時に支えられたなと。そういう感謝の気持ちになったなと感じます」

　もちろん、J1は17歳の選手がいきなりチームの勝敗に直結するGKのポジションでレギュラーを掴めるほど簡単な世界ではない。そのなかで、若き日の野澤に自身のキャリアを大きく左右するコーチと出会う合宿が待っていた。（第3回へ続く）

【試合情報】
開催日：2025年2月22日（土）
カテゴリー：J1リーグ第2節
対戦カード：FC東京 vs FC町田ゼルビア
キックオフ時間：15:00
試合会場：味の素スタジアム

試合に関するイベント情報はこちら