Jリーグの「リアルな頭痛の種」…打開した神戸の“逆輸入戦略”「成功事例に」 勢力図の変化は?【見解】

大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳らがチームを引っ張る【写真:柳瀬心祐】
大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳らがチームを引っ張る【写真:柳瀬心祐】

3連覇を目指す神戸 大津氏が注目する補強策

 ヴィッセル神戸は今季も、J1王者としてシーズンに臨む。勢力図が目まぐるしく入れ替わる群雄割拠のJ1で連覇を達成するのは至難の業だが、貫禄の勝負強さで王座を守り抜いた。3連覇に向けての戦いはすでに始まっているなか、元日本代表MF大津祐樹氏は、神戸が確立した“逆輸入戦略”に注目している。(取材・文=城福達也)

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「神戸の話は、以前からちょくちょく現場の人間から聞いているんですよ」。大津氏は、J1連覇を成し遂げている神戸について「マネジメントが少し独特で、選手が主体的に動いている。監督はそれを踏まえたうえで、組織力をさらに高める指揮を執っている」と印象を語った。

「なにより神戸には、大迫や武藤、酒井高徳といった頼れるベテラン勢がいて、彼らが背中でチームを引っ張っている。『俺の背中を見てくれ』と言わんばかりに、誰よりも手を抜かずにプレーする。その姿に周囲がついてくる。どちらかというとプレーで牽引するタイプで、こうした選手たちだからこそ、その言葉には非常に重みがあり、チームにまとまりが生まれる」

 日本では絶対王者が生まれにくい傾向がある。「サッカーには本当にトレンドというものがある。とりわけ日本は、欧州に比べて勢力図が固まらないリーグでもあるので、トレンドの移り変わりが顕著なのかもしれない」と語り、「例えば、バイエルン・ミュンヘンのように誰もが目指すチームが国内にあれば戦力が集中するが、チーム愛や律儀さを重んじる日本ではそういった一極集中が起こりにくい」と分析した。

 しかし、同時に「Jクラブの不可避な難題は、海外クラブからの引き抜きであり、これからも向き合い続けることになる」と指摘。「主力どころから、未来を担うはずの若手までも、早い段階で海を渡る。日本代表の強化という面では歓迎すべきことだが、実際にクラブとしてはリアルな頭痛の種になる」とJリーグの厳しい実情に触れつつ、「そういった意味で、神戸は選手を逆輸入する戦略が功を奏した」と見解を述べる。

今季から町田でプレーをする西村拓真【写真:Noriko NAGANO】
今季から町田でプレーをする西村拓真【写真:Noriko NAGANO】

町田の資金力が「Jリーグの勢力図を変えてくるかも」

「神戸が成功している理由の1つは、大迫のような選手が海外に引き抜かれない点にある。能力と経験値が抜群にあるも、年齢や高年俸が海外の市場では合わない選手が国内で活躍することで、チームが安定する。有望な若手を育てる川崎は、シーズン途中でも海外クラブに引き抜かれる事例が頻繁に発生したことで、安定した土台を築くのがどうしても難しかった。

 それに対し、神戸はアプローチが逆。海外である程度プレーしたベテラン選手に目を向けている。一度海外を経験した選手は、日本でのプレーに集中しやすく、高い報酬とチームの安定があれば残留する可能性が高い。こうした戦略が、神戸のスタイルとして確立されているのは、非常に大きな成功事例に映る」

 昨季に快進撃を見せたFC町田ゼルビアにおいても、一時は首位を快走していたが、夏の移籍市場で主力が渡欧して以降は失速し、結果的に優勝を逃す痛手となった。一方で、「町田には資金力がある。例えば、名古屋の相馬(勇紀)選手が加入したが、代表クラスの選手が国内で移籍することは珍しい。こうした動きが増えてくれば、Jリーグの勢力図を変えてくるかもしれない」と、新たなトレンドの可能性にも言及。実際に、町田は今季も元日本代表MF西村拓真(←横浜F・マリノス)を筆頭に国内トップレベルのタレントを続々と補強している。

 すでに開幕を迎えた2025シーズンのJ1だが、その勢力図は依然として未知数。開幕節の浦和レッズ戦は0-0のドローに終わったものの、例年尻上がりに調子を上げてくる神戸が偉業を成し遂げるのか。それとも、新たなトレンドを築く新興勢力が覇権を握るのか。今季も激戦必至なJ1の戦い、熱戦の幕は切って落とされている。

(城福達也 / Tatsuya Jofuku)



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大津祐樹

おおつ・ゆうき/1990年3月24日生まれ、茨城県出身。180センチ・73キロ。成立学園高―柏―ボルシアMG(ドイツ)―VVVフェンロ(オランダ)―柏―横浜FM―磐田。J1通算192試合13得点、J2通算60試合7得点。日本代表通算2試合0得点。フットサル仕込みのトリッキーな足技や華麗なプレーだけでなく、人間味あふれるキャラで愛されたアタッカー。2012年のロンドン五輪では初戦のスペイン戦で決勝ゴールを挙げるなど、チームのベスト4に大きく貢献した。23年シーズン限りで現役を引退し、大学生のキャリア支援・イベント開催・備品支援・社会人チームとの提携・留学などを行う株式会社「ASSIST」の代表取締役社長を務める。2024年から銀座の時計専門店株式会社コミットの取締役に就任。

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