浦和の“切り札”「ガンガン仕掛けて」 連係強化へ自信…挑戦者として「口で言うのは簡単」【インタビュー】
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得点力アップの切り札…金子が今季目指すもの
浦和レッズに今季の新戦力としてベルギー1部コルトレイクから加入したMF金子拓郎は、マチェイ・スコルジャ監督が率いて堅守に定評があるなか、課題となっている得点力アップの切り札としての期待も大きい。「僕は開幕戦の相手が神戸で良かったと思っています」と、試合事前には2連覇中の王者との対戦を歓迎していた。(取材・文=轡田哲朗/全6回の1回目)
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「浦和へ移籍をすると決めてから、本気でリーグ優勝すると思って来ました」と話す金子は、沖縄県でのトレーニングキャンプでも存在感を発揮していた。右サイドから仕掛けに入る迫力があり、チームメートと要求をぶつけ合う姿もある。昨季に「少し静かなチーム」という評判もあったが、フィールドプレーヤーで最年長になったMF原口元気を筆頭にその雰囲気は変わりつつある。金子にもまた、ウォーミングアップの時から声を掛けて盛り上げていく姿がある。
同じ埼玉出身ということもあり「元気くんとも地元の話で盛り上がることもありますよ」という金子だが、「去年の雰囲気を分からないですけど、もともとああやって盛り上げながらやるタイプなので、それでチームの雰囲気が良くなるならこれからもそうしたいです」と話す。それは、強化責任者の堀之内聖スポーツ・ダイレクター(SD)が金子も出席した新加入選手会見の際に明言した今季の最大目標、リーグ優勝を念頭に置いたものだ。
「リーグ優勝と口で言うのは簡単ですけど、そのためにはもっとやらないといけない。チームの雰囲気も大事ですし、一定の選手だけが声を出して引っ張るだけじゃ勝てないと思うので、全員がリーダーのつもりでやらないといけない」
スコルジャ監督の指揮下で浦和は堅守に定評がある。23年はJ1最少失点を記録し、昨季9月の再就任後は10試合で7失点だった。しかし、その23年はリーグ戦で15試合も無失点試合がありながら、その成績は7勝8分と勝ち点が伸びなかった。金子はその数字に「もったいない」とつぶやく。だからこそ、浦和は金子の獲得を狙った部分があるだろう。
得点力アップへの道のりについて「一番は周りとの連係がないと、いくら1人で頑張ってもゴールは難しいので、連係やコミュニケーションが一番ですね」として、「押し込めていれば攻撃の回数も増えるし、守備の回数も減るわけじゃないですか。マチェイさんの守備ができていれば失点が減るし、押し込めばさらに少なくなる。それはキャンプでトライしている部分でもあるので、コミュニケーションや連携を深めながらやれればと思います。それができる選手がそろっていると思いますし、浦和に来て1人1人のクオリティーは高いと思うので、だからこそ連係が本当に大事になると思います」と、そのポイントを整理しながら言葉にした。
しかし、その表情は暗くない。「ガンガン仕掛けて、ガンガンシュートを打ったら入るだろうくらいの感覚でやってますね」と、楽観的な言葉を並べながら、積極的にゴールに迫る姿勢を誓った。
具体的な数字の目標は「立ててますけど、言わないタイプです」
J1での最多ゴールは、23年に夏のヨーロッパ移籍までに北海道コンサドーレ札幌で出場した21試合での8ゴール。シーズン終了まで戦えば二桁ゴールは確実と思われる成績だったが、今季に向けた具体的な数字の目標は「立ててますけど、言わないタイプです」と、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。その理由は「具体的な数字を言うと、言ったシーズンだけ良くなかったので」というものだそうだが、「もちろん、毎年キャリアハイは目指しますよ」と、ヒントは出してくれた。
金子を含む11人が新加入選手であり、阿吽の呼吸とも呼ぶべき連係を築いていくのには少し時間が必要だろう。まして、今季の浦和はアウェー3連戦で開幕でありスケジュールにも難しさはある。そうした意味でも、ホーム開幕戦となる3月2日の柏レイソル戦あたりからチームがより機能性を増していくのではないかという期待感はある。
独力での仕掛けに力を見せる金子だが、そこに味方との好連携が加わってくれば間違いなく爆発力は増す。今季の浦和右サイド攻撃的な位置には、新たに加わった「77番」がいると見込まれる。「ガンガン仕掛けて、ガンガンシュートを打ったら入るだろう」という言葉のままに、躍動感のあるプレーを見せる姿が期待される。そして、その先には歓喜で爆発する真っ赤なスタジアムの光景が何度も見られるはずだ。(第2回へ続く)
[プロフィール]
金子拓郎(かねこ・たくろう)/1997年7月30日生まれ、埼玉県出身。前橋育英―日本大学―札幌―ディナモ・ザグレブ(クロアチア/期限付き)―コルトレイク(ベルギー)―浦和。23年には札幌で半年間の在籍ながらJ1ドリブル総数で1位(156回)を記録。ザグレブ時代にUEFAカンファレンスリーグで8試合2得点。25年に地元クラブである浦和に完全移籍し、Jリーグに復帰した。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)