ドイツで放出浮上の苦難「キツかった」…20歳日本人の評価一変 覚醒を支えた日本代表DFの存在【現地発コラム】

ヴォルフスブルク戦でブンデス初ゴールを決めた福田師王【写真:Getty Images】
ヴォルフスブルク戦でブンデス初ゴールを決めた福田師王【写真:Getty Images】

ボルシアMG福田師王がブンデスリーガ初ゴール、大きかった板倉滉の存在

 待望の初ゴールは、デビューから約1年の時を経て生まれた。
 
 1月14日のブンデスリーガ第17節・ヴォルフスブルク戦。後半25分から投入されたドイツ1部ボルシアMGのFW福田師王は、短い時間で存在感を示す。同44分、GKからパスを引き出すと、近くのアルサヌ・プレアにダイレクトで預けてスピードアップ。最終ラインの背後に抜け出した福田にリターンパスが届けられると、最後は相手GKの股を抜くシュートでゴールに流し込んだ。

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 現地のドイツメディア「ビルト」は「唯一の光明」と称賛。「並外れた得点力を証明した」と賛辞を送り、福田のパフォーマンスに高い評価を与えるに至った。

 スコアを見れば大差がついていたなかでの1点ではある。最終的に1-5で敗れ、チームの結果に対する貢献にはつながっていない。しかし、苦しい時間が続いていた福田からすれば、価値ある初ゴールとなったのは明らかだった。

 今季、これほど出番を得るのに苦戦するとは思っていなかった。昨夏の移籍市場で新たにドイツ代表FWティム・クラインディーンストを獲得し、福田のスタメン出場が容易ではないことは分かっていた。実際、今季ボルシアMGのリーグ戦では、怪我で欠場した1試合以外すべてクラインディーンストがセンターフォワード(CF)でスタメン出場を果たしている。

 それでもCFの2番手争いをするなか、今季からトップチームでトレーニングを続ける福田に、なかなかチャンスが回ってこない事態になるとは想像していなかった。それも多くの試合でベンチ入りしているにもかかわらず、だ。毎試合、出番を待ちながらアップするも、機会は回ってこずにベンチを温める日々。20歳の若者としては、モヤモヤする時間が長かっただろう。

「キツかったですね。毎試合帯同して、でも試合に出られなくて。誰よりも悔しい思いをしていたと思います」

 ただ、不貞腐れることなく自分自身にフォーカスできたのは、チームメイトであり“オレのスーパースター”と慕う日本代表DF板倉滉の存在が大きかった。

「コウくんが毎日、『チャンスは来るから頑張り続けろ』と言ってくれたおかげで頑張れていましたね。自分自身も夢があるので、折れることなく、それに向かって日々頑張ってこれたと思います」

冬の移籍市場で移籍の可能性が浮上…現状打破のきっかけとなった一撃

 苦しい時期を一歩抜け出し、現状から前進することができたゴール。この得点はボルシアMGでの現状を多少なりとも変えることになった。
 
 というのもチームの結果が出ていない時期、現地メディアは指揮官に対して若手起用を求めていたが、セオアネ監督は頑なに起用しなかった。それこそ2番手で出場することが多かったトーマス・クバンカラが退場処分を受け、攻撃の枚数が少なかった試合でも福田は起用されずに終わっている。

 そんな現実もあり、冬の移籍市場でローンによる移籍の可能性が伝えられていたのだが、このゴールをきっかけに福田のローン移籍の話はパタリと止んだ。結局、もう1人の若手FWであるグラント・レオン・ラノスのローン移籍が決まった。

 これは指揮官とクラブに信頼された証だろう。短い時間でも結果を残せる力を示し、選択肢の1つに数えられるようになったと言える。第19節のボーフム戦こそ出場機会はなかったが、シーズン終盤に向けて確実にチャンスは増えてくるはずだ。あとは、そこでどんな結果を残せるか。そこに懸かっている。

「もっと試合に出て点を決めたい。あと4点、5点を取ることはマストだと思っています」

 クラブやサポーターに大きな期待を寄せられているなかで、まだ1つ点を取っただけにすぎない。ここは通過点。福田は多くの期待に応えるため、限られたチャンスをしっかりと結果に結びつけながら、次なるステージへの道を切り開いていく。

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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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