中井卓大の現在地 早期退団でスペイン4部へ…最もやりやすいと話す「真ん中」【現地発コラム】

中井卓大が4部ラージョ・カンタブリアで再スタート【写真:Getty Images】
中井卓大が4部ラージョ・カンタブリアで再スタート【写真:Getty Images】

中井卓大が4部ラージョ・カンタブリアへ、監督は称賛「素晴らしい」

 現在21歳の中井卓大が今冬の移籍市場で新たな一歩を踏み出し、今季終了までラージョ・カンタブリアに期限付き移籍することが決定した。

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 中井はスペインの名門レアル・マドリードと2025年夏まで契約を結んでいるなか、プロ3年目を迎えた今季初め、1年間のレンタル移籍でプリメーラRFEF(3部)のアモレビエタに加入。その理由について中井は、「監督の息子のジュレン・ジョンと一緒にレアル・マドリードで3、4年プレーしていたので、ジュレン・ゲレーロ監督から連絡をもらった。レアル・マドリードがもう1年契約を更新してレンタルで出したいと言ってくれたので、その時はもう何も考えず、代理人に行きたいと話してすぐに決定した」と、アスレティック・ビルバオのレジェンドから直接声をかけられたと明かしていた。

 すぐさま監督の信頼を勝ち取ると、開幕から8試合連続で先発出場を果たす。しかしその後、成績不振に陥ったチームは監督を解任。この出来事が怪我で離脱していた時と重なったことは中井にとって不運となった。復帰後、新監督の下でほとんど出番を得られず、今冬の移籍市場で早期退団が決定した。最終的な成績は11試合出場(先発8試合)、0得点0アシストだった。

 中井が後半戦を戦うラージョ・カンタブリアはラシン・サンタンデールのBチームで、セグンダRFEF(4部)・グループ1に属している。

 トップチームはプリメーラ(1部)在籍44シーズンを誇る古豪であり、スペイン北部カンタブリア州を代表するチームだ。ここ3年はセグンダ(2部)に属しているが、今季は2位のウエスカに勝ち点2差をつけて首位の座をキープしており、15季ぶりの1部復帰に近づいている。

 平均年齢が21〜22歳と、中井と同年代の選手が多いラージョ・カンタブリアの監督を務めるのは、地元出身のエセキエル・ロサ氏。ラシン・サンタンデールの下部組織育ちで、現役時代はラージョ・カンタブリアでもプレーした。約15年の監督キャリアがあり、2021年よりこのチームを率いている。

 ロサ監督は今冬唯一の補強となった中井について、「中盤に多くのクオリティー、ダイナミズム、強さをもたらしてくれる非常に優れた選手。彼がここに来てくれたことを嬉しく思う。我々は彼が人間としても素晴らしいことを分かっている。それはロッカールームにおいてとても重要なことだ」と言及している。

 中井はその期待に応えるべく、移籍直後の2月9日にアウェーで行われた第22節レアル・アビラ戦で背番号8のユニフォームをまとい、0-1で負けている後半最初から途中出場するも、0-4で大敗。ほろ苦いデビュー戦となった。

中井が「一番やりやすい」と語っていたポジションは?

 ラージョ・カンタブリアは今季、ここまで4部で22試合を戦い、6勝7分9敗の勝ち点25で13位。残り12節で昇格プレーオフ圏内のチームと勝ち点9離れている。序盤は順調に勝ち点を稼いだが、11月半ばから調子を大きく崩している。ここ10試合勝利に見放され、今年に入ってから5連敗と非常に苦しい状況だ。レアル・アビラ戦の敗北を受けてロサ監督は、「今年の目標は残留することだと認識している」と昇格が厳しいことを認めてきた。

 実際、結果が出ないことでロサ監督は毎試合、迷いが生じているように感じられる。今年に入ってからの5試合ですでに、システムを4-5-1、5-3-2、4-2-3-1、4-5-1と4パターン試し、スタメンを1試合平均4人入れ替えている。しかし状況が好転しないため、今後も試行錯誤を繰り返す必要があるだろう。

 中井はアモレビエタ時代、「ワンボランチでの4-3-3が一番やりやすい。今は真ん中をやっているが、中盤だったらどこでも大丈夫」と語っていた。ラージョ・カンタブリアはそのシステムで戦っていないため、2ボランチや3ボランチの一角でプレーする可能性が高そうだ。同じ中盤のチームメイトには、レアル・マドリードのフベニールA(U-19)まで同期だったMFネストル・ルーカスがいて、ポジション争いのライバルとなるかもしれない。

 また、中井はこのチームで結果を出し続けた場合、大抜擢で2部デビューのチャンスを掴める可能性も秘めている。今季、DFホルへ・サリナス、DFマルコ・カラスカル、MFイサン・ユリエタ、FWディエゴ・ディアスが2部でもプレーしている。そのため、活躍次第でその機会が訪れる可能性はあるだろう。

 レギュラーシーズン終了まであと3か月、まずはポジション争いに勝利し、チームの目標となる残留を目指すことになる。中井の新たな挑戦は始まったばかりだ。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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