久保建英が浴びた人種差別発言「中国人、目を開けろ」 ファンや記者も蛮行非難「肌の色が違ってもみんな同じ人間」【現地発コラム】

バレンシア戦で人種差別被害を受けた久保建英【写真:Getty Images】
バレンシア戦で人種差別被害を受けた久保建英【写真:Getty Images】

久保建英らにバレンシアサポーターから人種差別発言や罵倒

 1月19日、メスタージャで行われたラ・リーガ第20節バレンシア対レアル・ソシエダ。ベンチスタートだったレアル・ソシエダの久保建英は、後半タッチラインでアップしていた際、複数人のバレンシアサポーターから「中国人、目を開けろ」と人種差別発言を受けた。

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 同僚のミケル・オヤルサバルやアンデル・バレネチェアも、「ETAのメンバー!クソ野郎」などの罵声を浴びせられた(※ETAは「バスク祖国と自由」という組織。バスク地方の分離独立を目指してテロ活動を行ってきた過激派。18年に解散発表)。

 レアル・ソシエダはこの事態を重く受け止め、試合後すぐにラ・リーガに訴えを起こし、「メスタージャの一部のスタンドから複数のバレンシアサポーターによって当クラブの選手に向けて発せられた人種差別的な侮辱を強く非難する」という内容の公式声明を出すと、バレンシアも犯人が特定され次第、入場禁止の厳しい処分を下すことを発表した。

 いまだ解決策が見出せていないスペインの人種差別問題を、レアル・ソシエダのサポーターたちはどう捉えているのか。自分たちが応援する選手たちに対する侮辱はどのように受け止められたのか。

 レアル・ソシエダの熱狂的サポーターであるパチさんは、「どこにでも愚かな人はいる。ラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)にも馬鹿げたことをするサポーターが残念ながらいる。でも久保に対する人種差別はスペインの文化とはまったく関係ない。単にそういう人がいるというだけだ。そのようなことはバレンシア以外でまた起こることもあるだろうが、スペイン中で問題となったヴィニシウスの件と同じく、私には到底理解できない。肌の色が違ってもみんな同じ人間だ」と、バレンシアサポーターの蛮行を非難した。

 友人のチェさんも同意したうえで、「それはリスペクトや教育の欠如であり、マナーの悪さによる恥ずべきもの。それ以上でもそれ以下でもない。対象チームはセグンダ(2部)に降格されるくらいの処分を受けてもいいと思う」と憤慨していた。

久保は「みんなから愛されている」 侮辱行為に「社会的には許されない」

 識者の意見として、レアル・ソシエダ戦の実況を務めるラジオ局「オンダ・セロ」のイニゴ・タベルナ記者は、バレンシア戦で久保が受けた人種差別的な侮辱について、次のような見解を示した。

「タケ・クボはここで本当にみんなから愛されている選手だ。バレンシア戦のようなことが起こったのは本当に悲しいことだと思う。なんであんなことを言われたのかは分からないし、タケ・クボがスタジアムであんなふうに侮辱されるのは初めてのことだ。サッカーファンがスタジアムに行き、アジア人だからとか、肌の色とかで選手を罵倒するのは残念なことだよ」

「『中国人、目を開けろ!』なんて言うのは馬鹿げたことだ。タケ・クボはプロらしくそれを冗談として、上手く受け流したと思う。でもそれは冗談では済まされない非常に深刻な問題であり、レアル・ソシエダが公式声明で人種差別に抗議したことは異常事態だ。バレンシアが早急に犯人を特定し、2度とスタジアムに入れさせないようにする措置を取ることを願うよ。スペインはそれを真剣にやらなければならない時期にきている」

 スタジアムで人種差別問題が頻発していることを考えると、スペインの社会や文化的背景も影響しているのか。タベルナ記者は完全否定している。

「いや、全く関係ない。バレンシアは過去にヴィニシウスを侮辱したスタジアムだ。オヤルサバルとバレネチェアのこともETAのメンバーとからかい、タケ・クボのことも侮蔑したが、ラ・レアルの選手を動揺させようとしたのだろう。彼らにとっては軽い気持ちで言った言葉だろうが、社会的には許されない」

 また、これまでレアレ・アレーナで相手チームの選手に対する人種差別が起こったことはなかったという。

「もちろんここでも選手を罵倒する人はいるが、人種差別的な言葉を投げかけるサポーターはいない。それが人として本当に愚かな行為だということをみんな分かっている。アノエタ(レアレ・アレーナ)は、ほかのスタジアムとは違い、人種差別的な行為が行われているなんて言われたことはない」

 スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でレアル・ソシエダを担当するマウリシオ・イディアケス記者もこの件について、「なんでバレンシアのサポーターがあそこまで久保を侮辱したのか理解できない。私が知る限り、彼がこれまでに所属したマジョルカやビジャレアル、ヘタフェ時代にあんなことが起こったなんて話は聞いたことがない」と驚いた様子だった。

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)



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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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