苦悩の2年経て…町田で「生きるかもしれない」 驚きの覚醒、異国でも「やれるな」【インタビュー】
![町田のオ・セフン【写真:徳原隆元】](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2024/09/01181747/20240901_Oh-Se-hun-1-Tokuhara.gif)
町田の韓国代表FWオ・セフン、一躍ブレイクの裏側
FC町田ゼルビアは昨季、J1初挑戦ながら昇格組として大躍進を遂げ、堂々の3位でシーズンを終えた。その原動力の1人になったのが、韓国代表ストライカーのオ・セフンだった。2022年の来日後、思いどおりに結果を残せなかったものの、町田への移籍が転機となりブレイク。異国の地でキャリア最多の8得点を挙げた充実のシーズンを、193センチの長身ストライカーに改めて振り返ってもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓)
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「来日後の2年間、なかなか結果がついてこなくて、精神的に難しかったですね。本当に辛かったんですけど、その2年間が今になってすごく生きている。そこで得た経験っていうのも大きかったとは思っています」
紆余曲折を経た日本でのキャリアをこう振り返るオ・セフン。そもそも、なぜ日本のサッカー、Jリーグへ興味を抱いたのか。
「いつ頃かはっきり覚えていないんですけど、学生時代から日本のサッカーに注目していたんです。常にボールに関わったり、切り替えが速かったり、駆け引きだったり、そういう細かい部分を習得してみたいなと」
アンダー世代の韓国代表で、日本と対戦経験も重ねたなかで、いつか「日本のサッカーを学んでみたい」という考えが浮かんでいた。母国でのプロデビューから4年後、2022年に蔚山現代から清水エスパルスへ移籍。望みを叶えたが、待っていたのは厳しい現実。移籍1年目にして、いきなり挫折を味わった。
「攻守の切り替えがとにかく速くて、相手との駆け引きもすごく難しかった」。清水での1年目、デビュー2戦目で初得点と幸先は良かったがあとが続かず、シーズンを通して奪ったリーグ戦の得点は結局この1点のみ。チームがJ2に降格した翌年は2得点に終わった。
「ストライカーとしてどうあるべきか、助っ人としてどうしていかないといけないか、何が必要なのかっていうことをすごく考えさせられました。もちろんネガティブな思いにはなったんですけど、1試合1試合必死で準備していたので落ち込んでいる時間もないくらい。当時はそんな感覚でした」
もがき続けたオ・セフンに2023年のオフ、転機が訪れる。その年のJ2を制し、翌年にJ1初挑戦を控えた町田からオファーが届いた。「空中戦や前線からの献身的な守備を評価してくれました。黒田(剛)監督が志向する戦術に合うからぜひ来て欲しいと」
熱心な誘いを断る理由はなかった。「町田のサッカーなら、生きるかもしれない」。そう強く感じて新天地への挑戦に心は傾く。すると、このレンタル移籍を機にそれまでのうっ憤を晴らすかのようにJ1のピッチで舞った。高さ、キープ力、球際での強度……。自らの持ち味と戦術が見事に噛み合った。
昨季8得点でも…「悔しさがあるんですよね」
町田での初ゴールは、開幕から5試合目のサガン鳥栖戦。味方のお膳立てから左足で1点、頭で1点を叩き込んだ。以降、その得点ペースは上がっていき、開幕からおよそ2か月で6得点、最終的には自身のキャリア最多となる8得点をマークした。
「結果が出たなかでも、改善しなきゃいけない部分もあったんですよ。監督はその都度、アドバイスをくれて。それに応えながらプレーできたのは大きかった」。開幕前のキャンプで「できる、やれるな」という感触を、オ・セフン自身は掴んでいた。開幕後、それは次第に確信へ変わった。ただそれも、周りからの助言があってこそ。
「黒田監督や金明輝(前)コーチ(現・アビスパ福岡監督)の指導によって、考え方が改められたというか、気づかされることが多かったんですよ。攻撃の第一歩として、前線からの守備に対する重要性を認識するようになったのは町田に来てから。これまであまり意識してこなかったことが、実は大事だったんだなと。目覚めさせてくれたというか、本当に感謝しかないです」
Jリーグで苦悩の2年を経て、町田ではエース格へ。韓国代表にも初招集された昨年は、急成長を遂げた。まさに充実の1年だった一方で、8得点という数字に満足できない心境も覗かせる。「チャンスがあったので……」。二桁を視界に捉えながら、それを逃した。喜びに浸りきれない理由は、その思いがあるからだ。
「もっと決められていたなという悔しさがあるんですよね。そこは心残りですし、自分自身がよくやったというより、チームメイトや監督、コーチのおかげでもある。個人的にはもっとできたシーズンだったなと。ただ、1つステップアップできたかなとは思いますね」
今季から完全移籍へ移行し、町田で2シーズン目を戦う。新シーズンのホーム開幕戦の相手は、昨季2位のサンフレッチェ広島。オフの補強により、さらに手強さが増したものの、ホーム、アウェーとも敗れた昨季のリベンジを期する思いが上回る。
「もちろんいいチームなのは間違いないですし、手強い相手だなと感じます。ただそれでも勝てないことはないと思っていますし、しっかりやるべきこと、いい準備ができれば、我々もいい選手が揃ってるので、自信を持っています」。昨季にあと一歩届かなかった2桁得点へ、背番号90を纏う大型ストライカーは、さらなる高みを目指す。
【試合情報】
開催日:2025年2月16日(日)
カテゴリー:J1リーグ第1節
対戦カード:FC町田ゼルビア vs サンフレッチェ広島
キックオフ時間:14:00
試合会場:町田GIONスタジアム
(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)