大卒1年目で大抜擢…開幕戦スタメンに驚き「まったくのサプライズ」 本職で示す進化【コラム】
![大卒2年目のシーズンを迎える植村洋斗【写真:徳原隆元】](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2025/02/14141328/20250214_Uemura-Hiroto-Tokuhara.jpg)
先発外わずか4試合…一躍主力となった植村洋斗
大卒ルーキーとしてジュビロ磐田に加入した昨季、植村洋斗は横内昭展監督に抜擢され右サイドバックで開幕戦から先発出場を果たすと、以降同ポジションを主戦場にレギュラーに定着。先発を外れたのはわずか4試合という活躍ぶりで、一躍主力選手となった。(取材・文=高橋のぶこ)
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開幕からの先発は「まったくのサプライズ」。プロ1年目は、早稲田大学の4年生時に磐田の練習に参加して感じた、大学リーグとは次元の違うプロの切り替えや判断の速さ、プレー強度に慣れるための時間だと考えており、「スタメンを争える位置にいるとも思っていなかった」からだ。しかも、高校、大学時代は一貫してボランチ。中学生以来となったサイドバックでの起用も少なからず驚きだった。
前指揮官に第一に買われたのは、守備だった。「位置取り、相手との間合いの取り方が抜群にうまい」と評価された点は、植村も自分の特長の1つと自負するところ。ボランチとして最も大事にしてきたのは「ボールを奪いにいく守備」で、身体的な強度が特別高くないことを補うためにも、相手ボールホルダーに対して比較的近い距離を取り、機を捉えて飛び込んでいく技術、感覚を徹底して磨いてきた。しかし、新ポジションに求められる守備には当然、ボランチとは異なる要素がある。
「サイドバックは絶対に背後を取られないようにしないといけない。中盤での守備の間合いは身についていて自然にできるので、その自分の良さも生かしながら裏に抜かれないための位置取りを、練習や試合で取り組んできた。ボールがマークする相手に入ったとき、寄せるスピードには自信があるので、ひっくり返されて抜けられることがなく、かつボールを奪える位置を取ってどれだけプレッシャーをかけられるかを考えてやってきて、徐々にだけど倒れることも少なくなってうまく対応できるようになったと思う」
その言葉どおり、スピードとドリブル破壊力にあふれるJ1の外国人サイドアタッカーにも冷静に対峙。「強烈だけど、シンプルに一発で勝負してくることが多い」外国人選手に対して、「距離感さえ掴めれば封じることができる」という実感を試合ごとに深め、後半戦は強烈なアタッカーとの勝負を楽しむように。慣れないサイドバックでシュアなプレーを見せ、精神的な逞しさも身につけた。
![ジョン・ハッチンソン新監督の下、本職のボランチで勝負【写真:徳原隆元】](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2025/02/14153114/20250214_Uemura-Hiroto-2-Tokuhara.jpg)
ルーキーイヤーで得た経験と手応えを基に目指すさらなる飛躍
新ポジションで守備のタスクをこなすとともに、大卒ルーキーは序盤戦で攻撃面のポテンシャルの高さも見せつけた。第2節の川崎フロンターレ戦、巧みなトラップから左足を振り抜いたプロ初ゴールも見事だったが、相手ディフェンスラインの裏に抜けるFWジャーメイン良(現サンフレッチェ広島)にピッタリ合わせ、PK獲得につながったパスは、アウェースタンドをどよめかせ、サポーターを驚かせた。
「自分が受けたなかで一番すごいパスだった」と当時のエースも絶賛したのは、植村がボランチの位置に入って出した30メートル級のスルーパス。スピード、コントロールともに巧みだったが、ボールを受けてから前に運ぶことで相手を攪乱しパスコースを見出したことが成功のポイントだった。
「自分のサッカー人生のなかでもあそこまで長いスルーは出したことがないし少しびっくりしたけど、ボランチでやっていたことがあの1本につまっていたかなと思う。周りのカバーがあって中に入っていけて、ボールを前に運んだときにジャメくんが見えてあそこしかない、と。運ぶことが大事だし、それは攻撃面で自分の強みとしてきたところ。プロでも通用するし、選手として違いを見せられるところかもしれないと感じることができた。でも、もっとああいうシーンを増やしていきたかった」
攻め上がり前線に絡んでいくプレーも持ち味。加えてボランチが本職ゆえに、中を取ってゲームを組み立てることも期待されていると植村は感じていた。だが、昨季はその点で自身への物足りなさが残る。降格の危機を抱え、チームがまずは失点を避ける守備的な戦い方を採るようになったこともあるが、それでも「チャレンジが足りなかった」と植村。さらにこう振り返る。
「シーズンの中盤から終盤にかけて、攻撃面で自分の良さをなかなか出せなかった。ボールを持つ時間が少なかったこともあるけど、自分の意識もロストをしてはいけないとか、リスクを冒さないように、ということにウェイトがいっていた。自分が前に出れば攻撃に厚みが作れるという実感はあったし、負けている試合で割り切って前に出て行って大きなチャンスにつながったこともあった。でも、攻撃を組み立てることも含めて、そこはまだまだ。守備では成果があったけど、攻撃面では課題が多かった」
ジョン・ハッチンソン新監督が標榜する「ポゼッションをベースにした攻守でスーパーアグレッシブなサッカー」をピッチで体現しJ2優勝を目指す今季。植村は始動から本職のボランチに戻りトレーニングを続けてきている。
昨季、短い時間ながらボランチを務めたときは、視野の確保や360度のプレーエリアの感覚が掴めず若干戸惑ったところがあった。だが、今はその不安はない。「ボールにたくさん触れる楽しさ」を改めて味わいながら、最大の激戦区となっているボランチのスタメン争いに挑んでいる。武器は、「体力的に鍛えられたことも含めてすべてがこれからの土台になる」と言う昨季のすべての経験と、自分への信頼だ。
「1年目で得た経験と手応えは、想像していたよりもはるかに大きかった。加入したときに思い描いていたプロ選手として自分の姿も目標も、いい意味で今は全然違う。35試合に出場して得た一番の収穫は、自分がやってたことは間違ってないと実感しながらやれたこと。そしてもっと上に行くには何が足りないかが明確になったこと。試合に出るだけではなく、出てどれだけ結果を出せるかがこれからのキャリアを作るという意識で新しいシーズンに臨みたい」
2年目の目標は、本職で攻守の力を発揮し、得点とアシストを合せて二桁の結果を出すことだ。
(高橋のぶこ / Nobuko Takahashi)