番記者が見る今季の浦和 大型補強も潜む罠…リーグ制覇へ“枠拡大”の好材料「非常に良い」【コラム】

浦和レッズが2度目のJリーグ制覇に向けて大型補強【写真:轡田哲朗】
浦和レッズが2度目のJリーグ制覇に向けて大型補強【写真:轡田哲朗】

浦和はサヴィオ、金子、松本、荻原、ダニーロ・ボザなど強力な選手を補強

 浦和レッズは2月15日に2025年のJ1リーグ開幕戦で2連覇中のヴィッセル神戸と戦う。強化責任者の堀之内聖スポーツ・ダイレクター(SD)がリーグ優勝を今季の明確な目標に定めてスタートするシーズンに、その目標に近づき達成することはできるのか。大型補強の行われたプレシーズンと、だからこそ乗り越えるべき課題とどう向き合っていくのか注目される。

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「今季の目標はリーグ優勝です」と、1月7日の新加入選手記者会見の席上で堀之内SDは明言した。電撃退任した西野努テクニカル・ダイレクター(TD、当時)の後を受けてトップチームの強化責任者に就任したのが昨年4月で、内部昇格ではあったものの昨年夏のウインドーではDF酒井宏樹、DFアレクサンダー・ショルツ、MF岩尾憲、MF伊藤敦樹といった主力の退団に加え、ペア・マティアス・ヘグモ監督の解任にも踏み切ったが、最終的に混乱を脱すことのできなかったチームはリーグ13位で終えた。

 いかにJ1が拮抗したリーグであり、過去にも二桁順位はおろかJ2からの昇格1年目で優勝を果たしたチームがいるような環境であるにしても、順調な積み上げをしてきたクラブと比較すれば厳しい位置なのは事実だ。少なくとも、ポール・ポジションを獲得して始まるシーズンではない。

 それでも柏レイソルで活躍してきたJ1トップクラスのアタッカーMFマテウス・サヴィオや、欧州での経験を積んでキャリアの最盛期にあるMF金子拓郎、サンフレッチェ広島から獲得のMF松本泰志に加え、クロアチア1部ディナモ・ザグレブからDF荻原拓也もレンタルバック。さらに1月末にはブラジル1部ジュベントゥージからDFダニーロ・ボザも獲得した。「大型補強」と言えるラインアップであり、優勝への意気込みを示すものとは言える。

 しかしながら、1年前も同様に「大型補強」と言われ11人が加入していた。昨季のチームを支えたMF渡邊凌磨らの選手たちに加え、夏のウインドーではMF原口元気が10年ぶりにドイツから復帰するなど4人が加入した。荻原のように23年シーズンに在籍していた選手も含まれるとはいえ、3回のウインドーで延べ26人が新加入していることはチームスポーツにおいて決して簡単ではなく、額面通りに補強=強化と受け取り切れない部分があるのがサッカーでもある。

 23年にチームを率いてリーグ4位に入り、昨夏にヘグモ監督の解任を受け復帰したマチェイ・スコルジャ監督もその点は気になっているという。神戸戦に向けた監督会見でも「数多くの新加入選手がいる中で、公式戦で初めてプレッシャーのかかるゲームを迎えることになる。神戸戦で初めて現在のチーム状態が分かると思うので、そこも興味深く見ていきたい」と慎重な姿勢を見せた。その要素については沖縄県でのトレーニングキャンプで「今回はメンバーを少し固定してゲームをしてきた」と、練習試合のメンバー構成から念頭に置いてきたと話す。

スコルジャ監督の戦術浸透にも期待だ【写真:轡田哲朗】
スコルジャ監督の戦術浸透にも期待だ【写真:轡田哲朗】

9人にベンチ入りの枠が拡大、スコルジャ監督「非常に良い判断」

 今季から主将になったMF関根貴大やキャプテングループの一員になった原口も含め、選手たちからはそうしたチームの雰囲気については現時点で一様に「いいと思う」という言葉で一致する。

 しかし、原口が「スタメンであったり、ベンチであったり、負けたり勝ったり、ここからシーズンが始まってから、本当にストレスの量がプレシーズンとは比較にならないレベルになってくるので、どれだけこれを継続できるか。今は比較的やりやすかった時間だったと思うので、これを継続するのは、僕らキャプテングループの仕事でもあると思うし、率先してやっていきたい」という言葉には、今季の浦和が特に序盤戦で乗り越えるべき課題が示されていると言えるだろう。

 6月に開幕するクラブ・ワールドカップ(W杯)の影響もあり、それまでにリーグ21試合を消化しなければならない。その関係でルヴァンカップも天皇杯もシードされて夏以降のラウンドから登場することはタイトルの獲得へは追い風だが、スタメンと控えがハッキリしがちになった時にテストを兼ねて使える公式戦がなくなったことも意味する。

 ただしピッチ上に目を向ければ、スコルジャ監督が「私は監督として、相手チームに合わせる部分もある。神戸戦のスタートの11人を誰にするか考えている」と話すなど、必ずしも自分たちのやり方を90分貫き通して相手に押し付けるような志向でプレーすることはないだろう。だからこそ、今季から9人にベンチ入りの枠が拡大されることについて指揮官は「2023年、チーム全体の力を使えないと感じていたのであまり快適ではなかった。そしてこれは、非常に良い判断だったと思う」と話すように、選手層を有効活用できる可能性は高まった。

 こうしたいくつものプラス要素とマイナス要素が混在する中で、いかにマイナスの影響を小さくしてプラスを大きくできるか。アウェー3連戦で始まる日程も決して楽ではないが、それらすべてを乗り越えた時にあらためて浦和は今季の優勝候補として上位戦線に打って出ていくことができるだろう。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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