J1全20クラブ「最新戦力値」ランキング 鹿島&柏が“補強Aランク”…神戸&広島の2強で明暗【コラム】
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J1各クラブの戦力を「攻撃力」「守備力」「組織力」の項目で査定
2025年のJリーグ開幕に向け、J1各クラブの戦力を「攻撃力」「守備力」「組織力」の項目で査定し、合計値を現時点のチーム戦力として評価した。また数値とは別に、筆者の視点で「補強ランク」と「伸びしろ」を付けて、数値の評価では拾えないチームのポテンシャルを示してる。(文=河治良幸)
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合計値トップになったのは富士フイルムスーパー杯で、今年初のタイトルを獲得したサンフレッチェ広島だ。「攻撃力」「守備力」ともに高く、ミヒャエル・スキッベ監督が4年目となるチームは継続路線。組織としてのまとまりを見せながら、新戦力補強も実に効果的であることが、新エースとして期待されるジャーメイン良や中盤の軸となりそうな田中聡、スーパー杯で途中出場ながらアシストを記録した菅大輝のプレーぶりを観ても、大いに感じられた。
惜しくもリーグ優勝を逃した昨年は終盤の失速で、過密日程における選手起用の課題も浮き彫りになったが、ボランチのスタメン候補に躍り出た18歳の中島洋太朗など、各ポジションの競争力が高まっており、スキッベ監督も幅のあるスタメン選択、そして9人に増えるベンチメンバーから柔軟に、選手交代をしていけるのではないか。ただ、すでに完成度が高いゆえに、ライバルは徹底して対策してくることが目に見えているので、シーズン中のプラス要素というのは必要になってくる。外国人枠を余らせているのは、夏の補強によるブースターを示唆しているかもしれない。
3連覇を目指す神戸も、広島とほぼ遜色ない戦力を有しているが、やはりACL(AFCチャンピオンズリーグ)エリートという負荷の高い大会をシーズンの前半、後半それぞれで戦う必要がある分、選手層の不安は広島より大きい。スーパー杯では8連戦を見越して、主力の大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳らをベンチスタートにさせたことが、タイトルを逃す要因にもなった。539日ぶりに戦線復帰した齊藤未月をはじめ、スーパー杯で悔しい思いをした若手や新戦力から、昨年の佐々木大樹や宮代大聖のように突き抜けてくる選手が2、3人と出てこないと、シーズンを戦い抜けないことが、リーグ戦の開幕前に実感できた。吉田孝行監督にも良いサンプルになったはずだ。
広島と神戸を“2強”とするなら、合計値から浦和レッズ、鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、FC町田ゼルビアあたりが“第2勢力”になってくる。鹿島は昨年の実績もあり、鈴木優磨と新加入のレオ・セアラという攻撃の“2枚看板”は強力だ。川崎フロンターレで4度のリーグ優勝を果たした鬼木達監督のサッカーがうまく鹿島の選手たちに馴染んで来れば、着実に優勝争いに加わってくると見る、ただし、広島や神戸が順調に勝ち点を伸ばしていった場合、そこを上回るにはプラスアルファが必要になってくるだろう。
G大阪もダニエル・ポヤトス監督が堅実な守備にポゼッションとカウンターを織り交ぜたチーム戦術が成熟期を迎えつつあり、大崩れは考えにくい。ただ、やはりダワンと坂本一彩という2人の主力が抜けた穴を開幕時点では確実に埋められていない。中盤の強度やクオリティーは大卒2年目の美藤倫、得点力は高卒ルーキーの名和田我空やレンタルバックの南野遙海、唐山翔自のブレイクに期待するしかない。戦術的な完成度が高い割に「伸びしろ」をCに評価したのはそのため。中盤、前線ともに開幕後の補強の可能性も残しているが、今回は不確定要素として、査定の対象外とした。
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転換を図った柏は一桁フィニッシュの可能性も
戦力的には浦和も優勝争いに絡むポテンシャルはあるが、昨シーズンは一時、残留争いに巻き込まれる13位に終わっているだけに、過度な期待は禁物だ。それでもマチェイ・スコルジャ監督は守備的なイメージを払拭するべく、得点力の向上に取り組んでおり、マテウス・サヴィオ、金子拓郎、松本泰志の3人は頼れるビッグピースになっていきそうだ。課題は昨夏にキャプテンだった酒井宏樹など、心身でチームを支えた選手たちが去ったあとのリーダーシップで、関根貴大キャプテンをはじめ、今年はボランチが主戦場となる渡邊凌磨などがしっかりと担っていけるか。また、2列目に比べて選手層の薄い最終ラインはスピードを武器とするブラジル人のダニーロ・ボザのフィット次第で埋まる部分もあるが、6月のクラブワールドカップや前後の過密日程を想定して、プラス材料が欲しいところだ。
町田は昨シーズン“昇格組”ながら大躍進を果たし、神戸や広島と最後まで優勝争いを演じた。昨年の主力は多く残り、岡村大八や西村拓真など、早期のスタメン奪取も期待できるタレントを加えたが、J2時代からチームを支えた鈴木準弥や荒木駿太など、準主力級の選手たちがほぼ退団しており、コーチの入れ替わりも未知数な要素となる。町田のストロングがライバルクラブに知れ渡っている今季は、いわゆる“初見殺し”がアドバンテージにならないなかで、黒田剛監督がどう相手を上回っていくか。ベースの戦力を考えれば下位転落の可能性は高くないと見るが、スタートダッシュの成功か失敗で、優勝争いから10位前後までの振れ幅はあるかもしれない。
そのほか、マテウス・カストロが復帰した名古屋グランパス、スティーブ・ホーランド監督の下、新たなサイクルに入る横浜F・マリノス、昨シーズン6位と躍進した東京ヴェルディ、長谷部茂利監督が攻撃的なスタイルにどう守備戦術をブレンドしていくか注目の川崎フロンターレが上位候補と見る。そして昨年は最終節に残留が確定した柏レイソルが、徳島ヴォルティスや浦和を率いたリカルド・ロドリゲス監督とともに、大転換を図っているのは注目だ。通常、新監督就任1年目のチームは落ち着いて見守ることも必要だが、指揮官は成長の過渡期にも結果を出すリアリティーも備えているだけに、ベースがブレることなく難局を乗り越えていければ、一桁フィニッシュも十分にあると見ている。
開幕時点の評価では上位にできなかったチームの中で、昨年の町田や東京Vのような周囲をあっと言わせる躍進があるとしたら、J2王者の清水エスパルス、前体制より攻撃面でのレベルアップが見込めそうなアビスパ福岡か。J1初挑戦となるファジアーノ岡山は残留が目標になることは間違いないが、個で局面を変えられる江坂任やU-20日本代表の佐藤龍之介など、個性的なタレントが多く加わっており、用兵力に優れる木山隆之監督が、昨年プレーオフで昇格に貢献したメンバーに新戦力をどう組み込んで行くのか注目したい。
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河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。