J1を制覇するチームの”予兆”「内容はあまり関係ない」 元日本代表が明かす実体験【インタビュー】
大津氏が回想 苦戦から一転してJ1優勝を遂げた横浜FMの背景
まもなく、2025シーズンのJリーグが開幕する。昨季のJ1はヴィッセル神戸が連覇を達成した一方、昇格組のFC町田ゼルビアが優勝争いを演じる大健闘を示した。今季はどのような優勝争いが待ち受けているのだろうか? 現役時代の2019年、横浜F・マリノスでJ1優勝に立ち会った元日本代表MF大津祐樹氏は、自身の経験則から、優勝するチームに備わっている条件や特徴を紐解いている。(取材・文=城福達也)
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大津が横浜FMに加入したのは2018年。同時期にアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム)が就任したなか、伝統的な堅守速攻のスタイルから、ハイライン・ハイプレスの超攻撃的スタイルへとチーム戦術が劇的に変化したこともあり、加入初年度は降格プレーオフに回ったジュビロ磐田と同勝ち点(得失点差で先行)、自動降格となった柏レイソルと勝ち点2差と、最終節まで残留争いを演じる苦戦を余儀なくされた。
とりわけ終盤は連敗が続き、右肩下がりでシーズンを終えることになった。「残留争いはめちゃめちゃ大変だったし、しんどかった」一方、「やっているサッカーがとにかく面白かったので、選手たち全員、不思議な感覚ではあった」とチームも不穏な空気にはならず、「僕が加入する前のマリノスは真逆のサッカーをしていたので、変革の瞬間に立ち会っている実感はあった」と振り返った。
「あの魅力的なサッカーをしっかりと定着させることができれば、強力なチームになる手応えは感じていた。それもあって翌シーズン前のキャンプも、チームは非常に前向きなムードだった。ポステコグルーのスタイルに合った選手たちも加入してきて、前年に共闘した選手たちの戦術理解も深まってきていた段階だったので、まとまりのあるスタートを切った印象がある」
「まさか翌年に優勝できるとは正直思っていなかった」と本音を語りつつも、「このサッカーで新シーズンを迎えるのが楽しみだ、と思える充足感はあった。大半の選手がそういった意欲的な姿勢でキャンプに臨めたというのは非常に大きかったと思う」と、前年の結果を引きずることなく、開幕前からポジティブな雰囲気がチームに漂っていたようだ。
優勝するチームの最重要要素「サッカーの内容よりも…」
そして、手応えが自信へと”羽化”したのは、開幕から数か月が経ってのことだった。「内容だけでなく、結果でも勝ち切れる試合が増えてきて、夏頃には優勝できるかもしれないと感じていた」と思い返し、「僕も現役時代、数多くのチームでプレーさせてもらったが、結束力という面では、あの時のマリノスが一番だった」と明かした。
「監督が掲げるサッカーに、選手たちが心から納得できている環境の整っているチームは強いと思う。ポステコグルー監督のスタイルは本当にやっていて楽しく魅力的なサッカーだったこともあり、選手たちもピッチで体現しようとする団結力が強かった。それに加えて、このサッカーを一貫できればチームは勝てるんだ、と選手たちを同じ方向に向かせる力も長けていた。なので、極論を言えば、仮にあの時、ポステコグルー監督が正反対の堅守速攻を掲げていたとしても、同じように優勝していたと思う」
前年の大苦戦から打って変わってJ1優勝を成し遂げたチームを「サッカーの内容以上に、目標に向かってはっきりしたマネジメントの態勢がとれていたのが最大の強みだった」と分析し、「ポゼッションサッカーが栄華を極めた時代もあれば、堅守速攻がサッカー界を席巻する時代もあった。このサッカーであれば優勝できる、といった正解はない」と、取り組むサッカーのスタイル以上に重要なことがあると強調している。
「どういったスタイルのサッカーで勝つかというのは、内容はあまり関係なくて、あくまで結果論だと思っている。大事なのは、監督が示してくれたわかりやすい画を、選手たちがしっかり理解し、その画を忠実に描くよう努めること。そういった環境が整っているチームは自然と雰囲気も良くなるし、優勝争いを演じるチームに多い傾向なのは確かだと思う」
世界的に見ても、どのチームが優勝するのか予想が難しい群雄割拠のJリーグ。大津氏が経験則から紐解いた“ヒント”を元に、今季の優勝争いを予想するのも面白いかもしれない
(城福達也 / Tatsuya Jofuku)