憧れの“天才”が「辞めるって」 盟友からの決断聞き…32歳が決心「もっと上を目指したい」【コラム】

大宮の杉本健勇写真【写真:Getty Images】
大宮の杉本健勇写真【写真:Getty Images】

大宮への移籍でJ3優勝&J2復帰に貢献、杉本健勇の歩みと覚悟

 RB大宮アルディージャは昨季J3を制し、今季は2年ぶりのJ2を戦う。オーナーシップは世界規模でフットボール戦略を展開するレッドブル・グループに移行したが、昨シーズンから差しあたり大きな転換はなく、攻撃の大黒柱を担う32歳の杉本健勇も「自分たちが何か変わったかと言われれば、あまり変わってない。でも本当に心強いというか。そういうサポートをしていただいているので。僕たちも期待に応えたい」と語る。

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 その杉本はセレッソ大阪時代の2017年にJ1で22得点を挙げて、日本代表にも選ばれるなど、Jリーグを代表する大型ストライカーとして一世を風靡したが、浦和レッズ、横浜F・マリノス、ジュビロ磐田と渡り歩くなかで、安定して得点力を発揮することができなかった。そして一念発起して、磐田からJ3に降格した大宮に期限付き移籍。主にトップ下やシャドーで起用されて、10得点7アシストを記録するなど、大車輪の働きで大宮を圧倒的な強さでのJ3優勝、J2昇格に導いた。

「僕がそうやってできるのも、前線でスペースを空けてくれたり、周りが動いてくれるおかげ。去年は少し、何て言うんだろう……言い方は悪いかもしれないけど、自由にやらせてもらったので。それがチームとしてもやりやすかったし、今年はそれだけではダメだと思います」

 そう杉本は語る。長澤徹監督が率いるチームのベースはおそらく大きく変わらないが、ステージがJ2に上がることで、シンプルに相手の強度、クオリティー、精度などが変わってくる。昨年の大宮であれば、多少ディフェンスが噛み合わなくても、センターバックの1対1の対応でしのぎ、好機にアタッカー陣が決定力を発揮する形で勝ち点3をモノにすることもできたが、そうした局面、局面がよりシビアになってくるだろう。

 これまでキャリアの大半をJ1で過ごしてきた杉本も「やっぱり準備してるものがうまく行かなかったり、そういうところも必ず出てくる。そこで1人1人がどういう判断をするか。そこでもっと基準、レベルを上げて行きたい」と自覚する。それでも周囲に期待されるとおり、杉本が第一に狙うのは勝利に直結するゴールだ。そんな杉本にとって、大きな存在だった柿谷曜一朗の現役引退というのは奮起する材料になるかもしれない。

「本当にちっちゃい時から、一緒というか。一緒のチームでやって、みんなが本当に目標というか、憧れる選手だった。歳も近いですし、そういう選手が辞めるって。僕は発表する2週間ぐらい前に連絡は取っていたので分かってたんですけど。でも本当に、難しい決断だったと思います。僕はそれを尊重して、俺たちがもっとこれから活躍することを願ってくれてると思うので。しっかり、楽しんでプレーしているところを見て欲しい」

 杉本は大宮というクラブで、自分がいるべき場所に這い上がるために、今ある戦いに向き合っている。「本当に下からみんなで這い上がってきて。もっともっと上を目指したいし、全く満足できていない」という杉本が目指すのはJ1の頂点だ。そのために、大宮で出会った仲間たちとともに、コツコツと結果を積み重ねていく。その先に、どんな未来が待っているだろうか。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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