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現役続行に批判「当然だと思うけど」 キングカズが明かす心中、第2の人生否定「やりたいとも思わない」【独占インタビュー】
カズの存在がJリーグ入りへの切り札、「僕は確実にいなくなる」と語る真意
JFLアトレチコ鈴鹿に所属するカズことFW三浦知良は今年、プロ40年目のシーズンに臨む。2月の誕生日を経て58歳で開幕を迎える今季は、Jリーグ入りを目指す厳しい戦いになる。「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じたカズは、クラブの未来、そして自身の将来について、自然体でシンプルに思いを語った。(取材・文=荻島弘一/全3回の3回目)
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◇ ◇ ◇
カズと鈴鹿の契約は26年1月まで。今シーズンは鈴鹿で2年目、ポイントゲッターズ時代の2022年を含めれば「鈴鹿FW」としてのシーズンは3年目になる。元Jリーガーの斉藤浩史オーナー率いるクラブは、Jリーグ昇格に向けて、22年に失効したJ3ライセンスの再取得を目指している。
「斉藤オーナーが頑張っているけれど、まずは街の盛り上がりがないとダメでしょう。選手はプレーするだけ、何かできることではない。街と行政とクラブが一緒になってやらないと(Jリーグ入りは)難しい。コツコツやっていくしかないよね」
もちろん、斉藤オーナーにとって、クラブにとって、カズの存在はJリーグ入りへの「切り札」になる。実際に三重県庁への表敬訪問などにはクラブの「顔」としてカズも同席。小学校への訪問授業など、街の盛り上がりには重要な役割を担っている。
「もちろん、協力はするけれど、選手としてやることはサッカーしかない。僕は確実にいなくなる。(今季限りの)契約が終わったらどうなるか、誰にも分からない。クラブに関わっているかもしれないけれど。まずはクラブとしてきちんと基礎を作り、それをつなげていくこと。クラブとしてちゃんとした戦略と目標がないとダメ」
カズ自身、今季限りで鈴鹿との契約が切れれば、その先が保証されているわけではない。筋力や体力の衰えはある。20代、30代の時のようなプレーも難しい。長く現役を続けることに批判の声があるのも確か。「引退しては」の声があることも分かっている。
「気にならないし、気にしないですね。そういう声があるのは当然だとは思うけれど(引退を)決めるのは自分。自分の人生だから。辞めるのも、続けるのも、自分の意思。人から言われて決めることではない」
プロとして貫き続けているもの…「それは、ずっと一緒。変わることはない」
鈴鹿とは昨年7月の帰国時に1年半という契約を結んだが、近年の契約は基本的に単年。契約が切れるたびに、決して少なくないクラブが獲得に動く。「プロ」として、求められるクラブでプレーする。そのスタンスは少しも変わることはない。
「自分から、やらせてください、と言ったことは1回もない。プレーを続けたいと思っても、やれるチームがなければできない。必要としてくれるチームがあるから、そこで頑張ろうと思える。それは、ずっと一緒。変わることはない」
日本代表の盟友でもある中山雅史(現・J3アスルクラロ沼津監督)が一線を退いたのは53歳だったし、昨季限りで引退した伊東輝悦は50歳だった。かつてサッカーの選手寿命は30代半ばと言われたが、今は40歳を過ぎた選手も普通になった。Jリーグだけでなく、JFLや地域リーグ、県リーグでプレーを続ける選手も増えた。
「昔とは違うよ。今はプロのJリーグが60チームあって、JFLにもプロとしてやっていこうというチームが増えた。その選手の実力と名前が欲しいというチームがあって、プレーが続けられる。ぜんぜん昔とは違う。プロの世界だし、自分の意思で(引退を)決められるのは普通なんじゃないかな」
もちろん、カズ自身も必要とされるクラブがなければプレーを続けられなくなる。もっともカズの場合、実力はもちろん観客動員につながる人気面やサッカーに取り組む姿勢から若手への影響力もあって、今もオファーが絶えない。
「いろいろな事情で続けられない選手もいる。自分の場合は続けられている。そういう意味では恵まれているよね。サッカーをして、それで生活が成り立っている。やりたいことを続けていられるのは、幸せだと思いますよ」
多くの選手はプレーを続けながら引退後のことを考える。指導者を目指してライセンス取得など準備をするのも普通だ。クラブ経営などの勉強もする選手も珍しくない。もっとも、カズは笑いながら「第2のサッカー人生」を否定した。
「将来像なんて、まったくないね。選手としてプレーすること以外はまったく考えていない。監督とかは考えてもいないし、クラブ経営などやりたいとも思わない。選手以外はないね」
父を偲ぶ会で挨拶「選手として父に褒められるようなプレーをしたい」
とはいえ、選手としてのプレーが永遠に続くわけではないことも少しずつ意識している。かつては「70歳まで」「死ぬまで」と口にしていたが、今後についての本音も吐露した。
「60歳? いや、まったく考えていないよ。練習できないとか、試合に向けての準備ができなくなったら、今すぐにでも辞める。58歳かもしれないし、59歳かもしれない。今はプレーする気力もあるし、身体もついてきている。ただ、続けるのは大変だよ。自分で無理だと思ったら、人に言われるのではなく自分で決めるよ」
昨年末、一昨年亡くなったカズの父・納谷宣雄さんを「偲ぶ会」が静岡市内で行われた。カズは列席者260人に向けた挨拶で「選手として父に褒められるようなプレーをしたい」と話す前に「いつまでできるか分かりませんが」と付け加えた。「生涯一選手」を目指しながらも確実に近づく「引退」。自分の意思で決断するまで、カズは全精力を傾けて走り、ボールを追い、ゴールを目指す。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。