日本代表から3ゴール…プレミアで爆発した超逸材 Jリーグも狙うべき身近に眠る原石【コラム】
ニュージーランド代表のクリス・ウッドがプレミア得点ランク5位の大活躍
Jリーグ各チームが始動し、急ピッチで開幕に向けた準備を進めている。今年も多くの外国籍選手がそれぞれのチームで助っ人として活躍することだろう。(文=森雅史)
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その外国籍選手も賢く選ぶ時代になってきた。集客のためには確かにネームバリューのある選手を呼ぶことも効果的だが、たとえメジャーとは言えなくても実力のある選手をスカウトすることは成績にも、そして財務的にも重要になってくる。
日本人選手も、その実力を評価されているからこそ欧州のクラブが注目し始めていると言えるだろう。同じようにJクラブも広い視野で選手をスカウトすることを考えなければならない。近場に埋もれている選手が必ずいる。
そんなことを考えさせられる例が欧州のトップリーグにいる。たとえばプレミアリーグのノッティンガム・フォレスト。今シーズンの新体制発表会で東京ヴェルディの城福浩監督が言及したクラブだ。
「僕が注目すべきは、今プレミアではノッティンガム・フォレストです。彼らのチームバージェットってどれくらいなのか。むしろそれこそが我々が勇気をもらえることで、彼らがじゃあ弱者のサッカーをしているか、なぜビッグ6のところを何チームか凌駕しているのかというところは注目しています」
イングランドでは2番目に古いプロクラブとして知られるノッティンガム・フォレストは、かつて故ブライアン・クラフ監督に率いられ、1978-79シーズン、1979-80シーズンにチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)を連覇したことのある古豪だ。1981年に第1回トヨタカップが開催されたとき、欧州王者として来日もしている。
だがその後は1988-89シーズン、1989-90シーズンにリーグカップを制した以外は低迷していった。1998-99シーズンに降格すると下位リーグでの戦いを続ける。それでも2021-22シーズンにプレーオフから24年ぶりのプレミア昇格を決めた。
しかし2022-23シーズンは16位、2023-24シーズンは17位と降格すれすれの順位をさまよった。決して大きくないクラブの規模から言えば必然的とも言えるだろう。ところが2024-25シーズンは奇跡が起きている。
シーズンの折り返しを過ぎ、第22週を終えたところでも3位とチャンピオンズリーグ出場圏内。1月15日には首位のリバプールにアウェーで引き分けた。
この躍進を支えている選手がリバプール戦でも先制ゴールを挙げ、今シーズン14ゴールを挙げているクリス・ウッドだ。この名前を聞いて「おや?」と思った人も多いかもしれない。ウッドはニュージーランド代表としてこれまで2回、日本代表と対戦している。
最初は旧国立競技場の最後を飾った2014年3月5日の親善試合。このとき日本代表は4-2と勝利を収めた。次は2017年10月6日、豊田スタジアムで開催された親善試合で、このときも日本が2-1で勝っている。
だがこの2試合でウッドはニュージーランドのすべてのゴールを挙げていた。2014年3月当時はレスター(チャンピオンシップ・岡崎慎司の加入は2015年)所属、そして2017年10月はバーンリー(プレミアリーグ)でプレーしていた。
イングランドのなかだけでも12チームを渡り歩いている苦労人でもある。それだけ実力をなかなか発揮できなかったのだが、うまくハマればプレミアリーグの得点ランク5位の決定力を持っていたのだ。
ウッドは極端な例かもしれないが、たとえば現役時代は日本代表を散々苦しめ、リバプール時代にチャンピオンズリーグを獲得している元横浜F・マリノス監督のハリー・キューウェルもいる。これまでの日本代表戦を見返すと、獲得すべき選手がいるのではないかと思えるのだ。
2024年、日本代表は13勝1分2敗という素晴らしい成績を残した。だがそのなかでもベトナムとイラク、イランに2失点、インドネシアとバーレーン、オーストラリアには1失点ずつしている。もしかするとこの相手のスコアラーの中に原石がいるかもしれない。またもしかするとほかのポジションにもすごい選手がいるかもしれないのだ。
現在、Jリーグの外国籍選手は登録人数に制限がなく、試合にエントリーできるのはJ1が5人、J2・J3が4人。また、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシアの選手は「Jリーグ提携国枠」として外国籍選手にはカウントされない。
そんな点も考えると、予算の厳しいクラブはもっと身近に目を向けてもいいだろう。幸い、いろいろな国に日本人の指導者が散らばっている。彼らの力をもっと活用できるはずだ。
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。