反主流派、攻撃全フリ、台風の目…補強に見る2025年「J1リーグ傾向」【コラム】
昨季トップ3は従来路線を踏襲か、流れを変える可能性を秘めたC大阪とFC東京
Jリーグは新シーズンに向けてキャンプに入っている。J1のここまでの移籍動向からすると、大きく変化しそうなチームはあまりなく、大半が継続路線に見える。
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王者のヴィッセル神戸に大きな動きはなく、武藤嘉紀をはじめ2連覇の主力をキープできたのが最大の補強というところだろうか。サンフレッチェ広島は即戦力の田中聡、ジャーメイン良を獲得。ただ、松本泰志と1トップのドウグラス・ビエイラ、ピエロス・ソティリウが退団しているので、抜けたポジションの補強だ。FC町田ゼルビアはリーグ屈指のセンターバック岡村大八を獲得し、菊池流帆、西村拓真、前寛之と今季も意欲的な補強を行った。ただ、こちらも従来の路線を踏襲することを前提としての人選に見える。
昨季のトップ3の特徴は縦に速い攻め込みとプレッシングの強度だった。他チームもそれぞれ補強はしているが、トップ3と同タイプか違うスタイルかはあっても、昨季の路線を継続しそうなチームがほとんど。つまり、J1の戦術的な傾向はあまり変わらないのではないかと思える。
縦速勢有利の流れを変えるとすれば、可能性がありそうなのがセレッソ大阪。エースのレオ・セアラが鹿島アントラーズへ、左の切り込み役だったカピシャーバは清水エスパルスへ移籍。ここを埋めるのがチアゴ・アンドラーデ、ラファエル・ハットンの新戦力となる。MFに中島元彦が加入し、すでにライン間職人として香川真司、柴山昌也、北野颯太、ヴィトール・ブエノがいるところへ追加しているわけで、ボール保持して崩す気満々なのだろう。新外国籍選手がフィットするなら縦速勢とは違うタイプのチームとして面白いかもしれない。
横浜F・マリノス、川崎フロンターレによるボール保持のサッカーが優勢だった時期に、少し遅れてこちらに舵を切ったFC東京は時流を読み間違えたようにも思えるが、逆に新しい勢力として流れを変えるかもしれない。J2に降格したサガン鳥栖から獲得したマルセロ・ヒアンはカウンターをさせたらリーグ有数の能力がある。ポゼッション型でどうかは未知数なのだが、FC東京がポゼッションと見せてのカウンターを確立すればヒアンは猛威を振るうかもしれない。
良い補強だが…「どうなるかよく分からない」クラブも
良い補強をしているけれども、どうなるかよく分からないのが浦和レッズだ。J1最高クラスのアタッカー、マテウス・サヴィオの獲得は大きい。さらに長倉幹樹、松本泰志。ただ、スコルジャ監督は守備型指向のはず。DFの補強はこれからなのかもしれないが、ここまでは攻撃に全フリしたような補強になっていて、戦術的にどうするつもりなのかがよく分からない。
リカルド・ロドリゲス監督が就任した柏レイソルのプレースタイルが変わるのは間違いない。井原前監督の堅守速攻から攻撃型へ変化するだろう。小泉佳穂、原川力、小島享介、渡井理己といった新加入の顔ぶれからも察しがつく。昨季、上位を占めた縦速型に追随しない反主流派としてどこまで存在感を示せるか。
おそらく、ここ2年の戦術的な傾向は続きそうなので、神戸、広島、町田は力を維持し、昨季後半に強烈な印象を残した京都サンガF.C.も有力かもしれない。一方で、活性化のためにも流れを変えるチームの台頭にも期待したい。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。