高卒プロ狙えても「どうしても行きたい」 異例の選択…「1本と決めていた」憧れの進路
大津高エースストライカー・山下景司が選んだ筑波大進学の訳
高円宮杯プレミアリーグWESTで20ゴールを叩き出し、真のユース年代日本一の立役者となった大津(熊本)のエースストライカー・山下景司。選手権では3回戦で流通経済大柏(千葉)に敗れて、彼の高校サッカーは幕を閉じたが、今年度の高校サッカーで残したインパクトは色褪せない。
「内容では五分でしたが、FWが点を決めないからこうなったと思います。今までで一番観客が入って、僕の人生の中で一番お客さんが見てくれて、本当に楽しくて夢のような舞台でした。だからこそ、自分が決めて勝ちたかったです」
流通経済大柏戦後、山下は目を真っ赤にしてこう口にしていたが、これからのことを聞くと引き締まった表情で決意を表明した。
「強度も足りないし、ボールを引き出す動き、フィジカルも足りなかった。正直、全部だからこそ、すべてこれからの大学で磨きたい。今日の悔しさは絶対に忘れないで、ここからが勝負なので自分を律しながらやっていきたい」
山下は卒業後、大学サッカーの名門・筑波大学に進学する。彼にとってこの進路は特別な思いがあるものだった。
「大津高に入学した時から筑波大に進学することは明確な目標でした。谷口彰悟さんをはじめ、多くの先輩が行ってプロになっていますし、入学するタイミングでもGK佐藤瑠星さんが進学しましたし、どうしても行きたいと思っていました」
家族や周りには多少は口にしていたが、2年生までは「まだその実力が伴っていないなと感じていたので、そこまで声を大にして言えませんでした」
そして今年度最初の進路相談。山城朋大監督に自分の目標を口にすると、「頑張ってほしいが、正直今のままでは厳しいぞ」と発破をかけられたことで一念発起。プレミアWEST開幕戦で2ゴールと好発進を切ると、第6節のサガン鳥栖U-18戦では4ゴールをマーク。大学関係者のみならず、Jクラブのスカウトも目を引く存在となった。
「徐々に結果を出せるようになったことで、筑波大に行きたいという意思をはっきりと口に出せるようになりました」
高卒プロの可能性が広がっていく中でも山下は「筑波大1本と決めていました」と意思は固かった。そしてその願いはついに叶った。
「佐藤さん、2学年上のFW小林俊英さんと一緒に出来る。本当に気持ちが引き締まります」
今大会、山下は徹底マークされ、1ゴールしか挙げられなかった。3回戦もゴールには何回か迫ったが、流通経済大柏の守備陣をこじ開けることができなかった。
「最後は自分の力を出し切って、いい高校サッカーの終わり方をしたかったです。憧れの舞台ではありましたし、このメンバーでもっとやりたかった」
大好きな仲間との高校サッカーがこれで終わってしまうことを悲しみながらも、その心には闘士が沸々と湧き上がっていた。
「今日に関しては相手DFと1対1のバトルで勝てなかった。彼らの中にはそのまま流通経済大学に進む選手がいると思うので、大学サッカーでやり合うことになる。次、顔を合わせた時は絶対に相手を凌駕して、筑波大の勝利に貢献したい。4年間で彼らが手をつけられない存在になりたいと思っています」
最後はギラついた目をしてスタジアムをあとにした。リベンジと願い続けて勝ち取った筑波大学での成長を心に期して。
(FOOTBALL ZONE編集部)