東京V強化部の交渉術 大型補強敢行…パリ五輪DFを落とした“口説き文句”
磐田から加入の平川には「熊本の時のような輝きを取り戻してほしい」
東京ヴェルディは1月7日に2025年シーズンの始動日を迎えた。新加入の8選手、負傷で別メニューの2選手を含めた全選手がAGFフィールドで汗を流し、同日には味の素スタジアムで新体制会見も行われた。その中で江尻篤彦強化部長は新シーズンに向けて、どのように選手と交渉し、契約に至ったかを明かした。
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今オフ、東京Vは昨季レンタル移籍でチームに加わっていたFW木村勇大(前京都サンガF.C.)、FW染野唯月、DF林尚輝(ともに前鹿島アントラーズ)、FW山見大登(前ガンバ大阪)を完全移籍で獲得。他クラブからはDF福田湧矢(前ガンバ大阪)、DF鈴木海音とMF平川怜(ともに前ジュビロ磐田)と、20代前半の若い選手を完全移籍で迎えた。
才能ある若手には、多くのクラブからの関心が寄せられる。選手との交渉に携わった江尻強化部長は、どのような口説き文句で東京V入りを実現させたのか。東京VのライバルクラブであるFC東京の下部組織育ちで、大きな覚悟を持って磐田から加入した平川は「熊本の時のような輝きを取り戻してほしい。それがこのチームだったらできる」と言われたことが胸に響いたと明かした。
江尻強化部長は西脇徹也・強化担当にデータを集めてもらい、ともにプレゼンをするための資料を作り、どういうところから口説くかを話し合っているという。「例えば、平川選手は先ほど『熊本の時のような輝きを』と表現していましたが、熊本の時の彼のデータと昨年のデータの比較を持っていきました。J1とJ2の違いはありますが、彼のデータは熊本の時の方が明らかに高かった。その高い数値が、うちの中盤を構成しているMF森田晃樹、MF齋藤功佑のデータにものすごく近かった。彼が『ここでなら熊本の時のような輝きを取り戻せる』と感じてくれたのは、うまくデータを使って彼に伝えられたと思います」と説明した。
パリ五輪代表だった鈴木は磐田の下部組織で育ち、磐田時代と同じ背番号15を選んだ。同じ磐田の下部組織から育ったDF伊藤洋輝(バイエルン)が着けていた番号だったからだ。古巣への強い思いを持つ鈴木に対しては、江尻強化部長は磐田への恩義に理解を示しつつ「チャレンジすることにはリスクが伴う。リスクのないチャレンジはない。成功するか、失敗するか、どうなるかは分からない。でも、その成功を手繰り寄せるためには、立ち止まってはダメだ。チャレンジなくして成功はない。リスクを冒して成功をつかめ」と、自身が元日本代表監督でもあるイビチャ・オシム氏からかけられた言葉で「彼の心を動かせた」という手応えを持てたという。
「ヨーロッパのシーズンが終わる」という夏の移籍市場では「城福さんが考えるアグレッシブなサッカーにフィットすれば」という条件付きで、外国籍選手の獲得も視野に入れているという江尻強化部長。昨季を上回る「超野心的な目標」を達成するために、先を見据えながらチームをバックアップしていく。
(河合 拓 / Taku Kawai)