3軍から選手権へ…「苦しかった」 苦楽味わった7番、スタンド側の人間が「応援される側に」
流通経済大柏MF和田哲平、苦楽経て掴んだトップチームでの出番
スタメンで出場をしたら必ず結果を残す。流通経済大柏(千葉)のMF和田哲平は、初戦の佐賀東(佐賀)戦で1ゴール、準々決勝の上田西(長野)戦では2ゴールをマークしている。
主戦場は右サイドハーフとトップ下。170センチとサイズはないが、鋭い出足と何度でも繰り出される馬力十分のスプリントは相手にとって大きな圧となる。トップ下の時は1トップを張るFW粕谷悠と2人で相手の最終ライン全員に猛プレスを仕掛け、右サイドハーフになると、前線のプレスを見定めて、コースを限定しながら相手のボランチやサイドハーフにボールが入ると一気に食らいついてボールを奪い取る。スナイパーのようにボールとゴールを奪える機会を狙い続けながらプレーする和田は、1.5列目、2列目に潜む獰猛なライオンのように相手に威圧感を与え続ける。
「エノさん(榎本雅大監督)から常に言われているのはこぼれ球をマイボールにする重要性。セカンドボールもそうだし、ゴール前でもそう。そこを制すれば僕のゴールの可能性が上がるというのはリーグ戦でも今大会でも結果として出ているので、そこは絶対に逃さない気持ちでやっています」
準々決勝の2ゴールはまさにその形だった。1-0で迎えた前半17分、ゴール前に入っていた和田は、右のDF富樫龍暉からのクロスにいち早く反応し相手と入れ替わると、飛び出しきたGKとの球際を制して追加点を蹴り込んだ。同39分にはロングボールに抜け出したFW松本果成の背後のスペースに猛ダッシュで入り込んで、松本からのヒールパスを右足アウトサイドで冷静にゴールへ流し込んだ。
この大会、和田は苦しかった時間を思い出しながらプレーしている。その大きな源となっているのが、彼が背負っている7番だった。
「7番は僕が昨年、県リーグでプレーしていた時につけていた番号でした」
流通経済大柏はトップチームが高円宮杯プレミアリーグEASTに所属し、セカンドチームがプリンスリーグ関東2部、サードチームが千葉県リーグ1部に所属している。つまり和田は昨年、サードチームにいた。
「県リーグの時はゴールを奪えていたので、僕の中では好きな番号でした。でも、やっぱりずっとトップチームに上がりたいと思ってやっていたので、活躍しても上がれなかった時は本当に悔しかったし、苦しかった。トップチームで試合に出るということは、到底誰でも立てる場所ではないことはサードチームでこれでもかというほど学びました」
背番号への愛着は強く「7番を背負いたいと思っていた」
はるか遠くにあるトップチームだったが、県リーグでの地道なアピールが認められ、昨年終盤にはセカンドに昇格してプリンス関東2部で出番を掴み取り、今年はプレミアEASTで開幕スタメンを勝ち取った。
リーグ戦での背番号は18番だったが、「7番を背負いたいと思っていた」と苦楽をともにした背番号への愛着は強く、インターハイ予選では念願の7番を背負った。しかし、チームは決勝でライバル・市立船橋に敗れて全国行きを逃した。
プレミアEASTでは高体連最高順位の4位でフィニッシュし、和田も18番で5ゴールをマークする活躍を見せたが、選手権で背番号を自分の意思で決められることになった時、彼は真っ先に7番に手をあげた。
「最初で最後の選手権は7番で勝負をしたかった。ゴールのイメージが染みついている番号だし、悔しさも味わっている番号。背負うと不思議な力が湧いてくるんです」
今大会、彼は想いの刻まれた7番で躍動を見せている。3回戦の大津(熊本)戦ではベンチスタートで、残り10分のところでの投入だったが、チームのために身体を張った守備を見せた。
「一昨年までの苦労があったからこそ、今の自分があると思っています。自分が今まで目指してきた舞台はまさにここだし、僕はずっと応援する側の人間だったのですが、昨年に入ってから応援される側になったので、絶対に結果で恩返ししたい。出られない選手の気持ちが分かるからこそ、あの時の気持ちを忘れないでスタメンだろうが、ベンチスタートだろうが、どのポジションだろうが、自分は精一杯プレーするという気持ちは変わりません」
思いは1つ。この赤いユニフォームを身に纏って、チームのために走り、攻守において貢献して優勝を手にすること。高校生活のすべてが詰まった7番とともに――。
(FOOTBALL ZONE編集部)