J名門クラブの“10番”志願「恩を返さないと」 複数オファーも決断、完全移籍で己に課す責任
「城福さんをはじめ、そういう人たちに恩を返さないと、という思いもありました」
東京ヴェルディの2025シーズンに向けたトップチーム登録選手の新背番号が1月7日に発表された。かつて元日本代表MFラモス瑠偉氏らが背負ったエースナンバーの「10」は今シーズン、京都サンガF.C.から完全移籍となったFW木村勇大が背負うこととなった。同日、2025シーズンの初練習を終えた木村は、メディアの取材に応じて10番を背負う意気込みを語った。
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昨シーズン、16年ぶりのJ1で下馬評を覆して6位に入った東京V。京都からレンタル移籍で加入していた木村はチームの象徴的な存在だった。キャリアハイとなる36試合に出場し、同じくキャリアハイの10得点をマーク。今オフには複数のクラブからオファーを受けたものの、緑の首都クラブへの完全移籍を決めた。
新体制会見内で城福浩監督もレンタルから完全移籍になった選手たちの獲得に投じた資金について「安い金額ではない」と語っていた。昨シーズンの活躍が評価される形で完全移籍することとなった木村は「去年以上に責任感を持ってやらないとダメだと思います。クラブも強い思いを持って取ってくれましたし、自分も改めて強い思いを持って来ました。去年、みんなチームとして頑張って、個人としても結構頑張った中で、2年目っていうのが一番大事だと思う。去年以上にしっかり結果を残せるように良い準備をしたいです」と語った。
完全移籍を決断する上で決め手となったのはクラブが示してくれた「熱量」だった。「もちろん条件の部分もそうですけど、そういうのも踏まえて熱量っていうのは、やっぱりすごく感じました。ほかにも考えましたけど、去年、自分が大きく成長できたのは、ヴェルディに来たおかげなので、城福さんをはじめ、そういう人たちに恩を返さないと、という思いもありました。そういう思いを含めて、ヴェルディに決めました」と心中を明かす。
昨季は20番を背負っていた木村だが、大阪桐蔭高、関西学院大でも背負っていた「10」番を着けることになった。昨季は10番を背負っていたMF見木友哉はアビスパ福岡に移籍。より自分にプレッシャーをかけるためにも、木村自ら10番の着用を志願したという。
「頑張るのが一番嫌いで、責任とか重いものがあったら頑張れるタイプ」
「代理人と背番号の話になった時、友哉くんもいなくなったので『10番をつけたい』という話をしていたら、ヴェルディも用意してくれると言ってくれた。責任が伴う番号なんで。20のままでも良かったですけど、自分にプレッシャーをかけるためにも。自分は結構、すぐ緩んじゃう。頑張るのが一番嫌いで、責任とか重いものがあったら頑張れるタイプ(笑)。何番でもいいんですけど、サッカーでいえばチームを象徴する番号ですし、恥ずかしいプレーは絶対にできない。チームを勝たせる仕事をしないとダメですし、今年は去年以上にチームを引っ張る思いを持ってやれればと思います」
昨季、チーム最多得点を挙げた得点力だけではなく、献身的なプレッシングでもチームに貢献してきた木村だったが、意外にも本来は頑張れないタイプ。あえて自分に責任を課すことで、頑張らなければいけない環境を作り出したのだ。
高校、大学と過去に10番を付けたシーズンを振り返り「1年を通してみれば、あまり悪かったことはない。いや、あったかな……」と笑った木村。過去を紐解くと高校時代は、現在もチームメイトであるFW山田剛綺とともにプリンスリーグ関西で10得点を挙げて得点王に輝いた。大学時代は3年時から10番を背負い、1年目に関西1部リーグで6年ぶりに優勝、4年時には世代別日本代表への招集やインカレ準決勝進出を果たしている。
今年は対戦相手からのマークも厳しくなることが予想される中で木村は自分自身にプレッシャーをかけて追い込みながら、10番を背負うシーズンに新たな良い記憶と記録を刻みこむ。
(河合 拓 / Taku Kawai)