高校生に会場どよめき「凄い」 驚異の3人抜きドリブル…1.4万大観衆沸かせたJ内定ドリブラー
流通経済大柏MF亀田歩夢、大津との一戦で得意のドリブル技術を発揮
「僕は歓声で乗るタイプです」
流通経済大柏の3年生MF亀田歩夢のドリブルはフットサル仕込みで、インサイド、インフロント、アウトサイド、インステップと足のすべての箇所を使ってボールを自在に操り、面白いように相手を交わしていく。カターレ富山入りが内定している逸材は、複数に囲まれても、ボールタッチとしなやかな身のこなしで打破していくプレーは観衆を何度も沸かせる。その歓声が聞こえれば聞こえるほど、彼のドリブルは切れ味を増す。
初戦の佐賀東(佐賀)戦では1万人近く詰めかけた柏の葉総合公園競技場の観衆を何度も沸かせると、冒頭の言葉どおりスイッチが入った亀田は、チームの3点目を強烈なミドルシュートで叩き込み、右サイドからの突破で4点目の起点となるなど大活躍を見せた。
そして3回戦の大津(熊本)とのビッグマッチ。U-18プレミアリーグチャンピオンの大津は左サイドに位置する亀田を明らかに警戒していた。右サイドバックの野口悠真だけではなく、ボランチの嶋本悠大、右CB(センターバック)の五嶋夏生もチャレンジ&カバーでドリブルコースを塞ぎに来た。
だが、それでも亀田のドリブルは猛威を振るった。前半15分に左サイドから細かいボールタッチとボディフェイントを織り混ぜながら相手を3人に引きつけてから間にパスを通し、粕谷悠の決定機を演出した。
さらに圧巻は後半16分だった。センターライン手前の左のスペースで縦パスを受けてドリブルを開始。左に進路を取りながら寄せてきたDFを腕で抑えながら前に出ると、進路を塞ぎにきた野口のDFの股を通して一気に敵陣深くに運んで行く。さらに畑拓海が奪いに行くと、右アウトサイドで股を通して一気に中へ。もう一度寄せてきた野口の股を再び通してさらに中に入ったところで、相手に倒されて反則のように見えたがノーファールだった。
「股は常に狙っていますし、股が閉じた時の次のプレーも常に考えています。股が閉じれば重心が内側に入るので、カットインで仕掛けられる。そこの駆け引きは得意だし、股抜きができたら本当にサッカーが楽しいと感じられるし、さらに乗れるので狙っています」
「正直、今日は初戦に比べるとあまり歓声はなかった気がします」
狙いどおりの3連続股抜きのドリブルには、フクダ電子アリーナに詰めかけた1万4235人の大観衆からどよめきと「凄い!」と言う感嘆の声が沸き起こった。
後半20分には選手交代によって左サイドハーフからボランチにポジションを移すと、今度は豊富な運動量を生かし、スペースを埋めたり、相手のエースストライカーの山下景司、長身ストライカーの兼松将へ強烈なプレスバックをしたりと守備面で献身的なプレーを披露。その一方でセカンドボールを回収しては、突破のドリブルだけではなく運ぶドリブルで相手のベクトルを折りながら、攻撃の時間を作り出していく。
大観衆が歓声を上げれば上げるほど、亀田のドリブルは切れ味を増し、さらに「歓声は聞こえますが、ドリブルする時は常に相手の状況や狙い、重心の動きや足の運びなども見えています」と、ボールを触ることでどんどんゾーンに入っていく。
本能と冷静さを併せ持って、リズミカルかつテクニカルなドリブルを見せる。亀田のエンターテイメント性と機能性の高いプレーもあり、流通経済大柏は事実上の決勝戦と呼ばれるにふさわしい熱戦を制して準々決勝進出を決めた。
「正直、今日は初戦に比べるとあまり歓声はなかった気がします。自分がドリブルしても『おーっ!』とは聞こえなかった。あまりスタンドが沸かなかったので悔しいですね」
試合後、彼はいつもの冷静な表情でこう口にしたが、「実際はかなり沸いていましたよ」と伝えると、少しだけ笑顔を見せながらこう続けた。
「沸いていましたか? でも僕的にはまだ少ないと思っているので、この先ではもっと声を出してもらいたいですね」
流通経済大柏が誇る変幻自在のドリブラー。準々決勝以降はもっと歓声を引き出して、頂点まで魅せながら駆け上がっていくつもりだ。