“157cm”ドリブラー「何のために県外に出たんだ」 10番が複雑な思い、完敗で涙「プロを目指して」
矢板中央を牽引したFW堀内は長野出身
第103回全国高校サッカー選手権大会の第3回戦が各会場で1月2日に行われた。フクダ電子アリーナ1試合目には矢板中央(栃木)と上田西(長野)が登場。0-2の完敗となった矢板中央で10番を背負う157センチFW堀内凰希(3年)は、試合後に涙をこらえながら並々ならぬ悔しさを滲ませた。
矢板中央は2年連続14回目、上田西は7年ぶり3回目の全国の舞台だ。攻撃的サッカーへ舵を切った“新たな”矢板中央で攻守の要となっているのが堀内だ。AC長野パルセイロU-15の出身で、地元から「より高いレベルを求めて」高円宮杯プリンスリーグの矢板中央へと進路を選んだ。3回戦で地元校を相手に、堀内は前半開始早々、キレのあるドリブルで早速チャンスを作る。
右サイド深い位置で細かいタッチで相手を一枚剥がしペナルティーエリア内へ侵入。勢いに乗ったところで相手の足がかかり、PKを獲得した。思わずガッツポーズ。先制のチャンスだが、キッカーは堀内ではなかった。「(選手内で)事前にキッカーは決まっていた」と試合後に明かしているが、このPKは上田西GK牧野長太朗にセーブされ、先制の機会を逃した。
その後、試合の流れは一気に上田西へ。前半11分にDF東風谷崇太、後半21分にはロングスローからFW柳沢纏に頭で決められた。過去堅守を誇ってきた矢板中央。高橋健二監督も「昔の矢板中央を見ているようだ」と相手チームについて率直な印象を口にした。
長野から覚悟をもって矢板中央へとやってきた堀内は、声を震わせ「地元相手という複雑な思い、難しい思いが色々あった。絶対に勝ってやろうという気持ちだったんですけど勝てなくて…。何のために県外に出たんだって」と悔しさを滲ませる。
「県外に出て成長しに行ったのに、地元という絶対負けてはならないチームに負けてしまった。引かれたときに点を決める、決定力が自分たちの課題だった。最後にこれまでの隙、甘えが出てしまったんだと思う」
上田西の白尾監督「10番の子をどうやって止めようかと…」
堀内には、上田西の白尾秀人監督も一目置いていた。「矢板中央の10番の子が長野県出身というのもあって。どうやって止めようかと…。(勝てたのは)上手く身体張って、みんな1人1人守備を頑張ってくれたおかげ」と自チームを称えつつ、地元出身の“10番”が要警戒選手だったことも明かしている。
また堀内は、上田西でPK含むスーパーセーブを披露した牧野と「中学の地区トレセンがずっと一緒」。「絶対負けない」…お互い試合前に話もした。間違いなくこのゲームに懸ける思いが強かった。この苦い経験を踏まえ、高校3年間で「誰よりもきつい思いしたと思う」と自負する堀内は、「岡崎(慎司)選手のように、最後飛び込むだったりその際々をやっていける選手になりたい」と涙を拭い、前を向く。
上田西戦は相手にダブルマークに付かれるシーンもあり、自身の持ち味を十分には発揮できなかった。それでも、試合終盤には堀内が守備で全力疾走。懸命に走り、相手への激しいプレッシャーをかけた場面はファウルになってしまったが、本人の持つ強いメンタルがあのスプリントを生み出した。「課題を直し、プロを目指してやっていきたい」。157センチ小柄なアタッカーは、今日流した涙を胸に未来へ進む。