Jスカウト熱視線「面白い選手」…プロ内定逸材に劣らぬ17歳、いきなり躍動したドリブラー
流経大柏2年生MF安藤晃希が選手権で示したポテンシャル
優勝候補筆頭の流通経済大柏(千葉)は、選手権初戦で佐賀東を5-0で圧倒して好発進を切った。
佐賀東戦のチケットは完売し、実に1万人近くの観客が押し寄せた。熱気が帯びるスタジアムを一番沸かせたのが、カターレ富山入りが内定している3年生MF亀田歩夢だった。フットサル仕込みの繊細なボールタッチと相手の逆を面白いように取っていく変幻自在のドリブルで相手を翻弄するたびに、観客からはどよめきが起こった。
そんな亀田に負けじと存在感を放ったのが、3-0で迎えた後半23分に投入された2年生MF安藤晃希だ。
安藤の持ち味は爆発的なスピードを生かしたドリブル。亀田とはタイプの異なるドリブラーだが、早くもJスカウトから「面白い選手」として名前が挙がるなど、今大会の隠れた注目選手でもある。
投入されるといきなり躍動した。左サイドからスピードに乗ったドリブルでチャンスメイクすると、後半26分にはMF堀川由幹の右からのクロスが目の前にこぼれて来る。右足でワントラップして飛び出してきたGKを右アウトサイドで冷静に交わしてからゴールに蹴り込み4点目をマークした。短い時間だったが、インパクトと結果を残すことができた。
「僕が入るということで求められるのは、何度もサイドを突破して、コーナー(キック)を取ったり、チャンスを作ったり、得点をするという役割でした。自分の武器を出すことに集中しました」
試合後、こう口にした安藤に同じドリブラーの亀田について聞くと、「学ぶことが多いです」と自身の進化のヒントにしていると教えてくれた。
「僕はスピード系で、亀田さんはテクニック系とタイプは違うのですが、ただ持ち味が違うと片付けるのではなくて、亀田さんのテクニックを僕が身につければ大きなプラスアルファになると思っているんです」
スピード系のドリブラーはどうしても自分の特徴が分かりやすく、絶対的な自信を持ってしまうあまり、スピードに頼り切ったり、ごまかしたりしてしまう傾向が強い。多少ファーストタッチが雑になっても、コース取りが甘くても、自分のスピードならなんとかなると思ってしまう。
だが、これは肝心なところでスピードやパワーを使えないというマイナス面を生み出す。まだ勝負どころではない時や、パスや周りを使えばシンプルに状況打破できる時に、スピード勝負をしてしまい、いざフィニッシュに持ち込む時にパワーが残っていない。安藤も当初はそのタイプだったが、自身のフィニッシュワークの精度の低さを課題に感じるようになったことで、スピードの使い方を工夫しないといけないという思考が生まれた。その時に目に行ったのが亀田のドリブルだった。
「狭いところで繊細なタッチでボールを奪われないのが凄いなと思って、亀田さんのドリブルをよく見たら、タイミングで抜かしていることに気づいたんです。例えば、相手が近寄ってくる前にボールをわざと晒してから抜くなど、相手の間合いを図って、リズムを崩しながら突破していく。僕も亀田さんのようにスピードに頼らないで相手を交わすことができれば、そのあとは自分のスピードでぶっちぎれると思うので、相手との間合いを意識してドリブルするようになりました」
持っている武器をより唯一無二のものにするために。彼は先輩から学びながら、自分独自のドリブルを追求している。
「来年は僕たちが引っ張っていかないといけないと思うし、この大会で自分の名前を全国に広めるために、ドリブルを発揮して得点を取りたい。今日のゴールで自信を掴めたので、次の3回戦はチャンスが来たらもっと自分の良さを出したいと思います」
流通経済大柏のドリブラーは亀田だけじゃない。そう力強く主張するためには次の3回戦の大津との一戦は最高の舞台。プレミア対決に向けて、安藤はその牙をさらに研ぎ澄ませる。