”3年越し”のトルメンタ「やっちゃいましたね」 前回王者にリベンジ…指揮官の思い「先輩のためにも」

高川学園が青森山田に勝利して3回戦へ【写真:徳原隆元】
高川学園が青森山田に勝利して3回戦へ【写真:徳原隆元】

高川学園は青森山田に2-1で勝利し3回戦進出

 3年越しの「トルメンタ」が前回王者を破った。第103回全国高校サッカー選手権で高川学園(山口)は12月31日の2回戦で青森山田(青森)と対戦し、2-1で勝利した。先制点は得意のセットプレーから生まれたが、そこには世代を超えたリベンジの思いが乗っていた。

 後半7分、コーナーキックのチャンスを得ると高川学園は中央からニアサイドに少し寄った位置で4人の選手が円形に立って手をつないで回りかく乱する「トルメンタ」の動きから、1人がニアサイドに寄った。ショートコーナーのようにボールを受け、そこからファーサイドに入れたシュート性のクロスがゴールポストに当たった跳ね返りを中央に入れるとFW大森風牙が押し込んだ。

 このゴールには様々な伏線があった。約3年前の第100回大会で、高川学園の「トルメンタ」が脚光を浴びた。奇抜な動きでもあり、海外でもニュースになった。それも1つの武器にしながら準決勝まで勝ち残ったチームを待っていた相手こそ、青森山田だった。

 江本孝監督は「ちょっと僕も3年前の話をしていて、青森山田戦でセットプレーを1回もさせてもらえなかった。シュートは1本か2本打ったけど、セットプレーではトルメンタが流行っていた時で。『先輩のためにもお前たち、トルメンタ1回くらいやってくれねえかなあ』って言っていた」のだと話した。

 この時に中学3年生でトルメンタを見ていたのが、今の3年生たちの世代になる。江本監督は「ああいうのでバズったというか、色々なメディアに取り上げられて選手が高川学園を知ってくれたのもあるし、これが高校年代だけでなく小中学校でも自分たち発信でアクションを起こすようなプレーが出てくると面白いですね」とした。

 この試合で初めてのコーナーキックの場面で見せたトルメンタは見事に先制点を導いた。指揮官は「やっちゃいましたね。まさかやると思わなかったけど」と笑い「まさかその流れで点が生まれると思わなかった」と話す。それでも、セットプレーで大事にしているのは自主性であり、「普段も最後にいつもセットプレーの練習はしますけど、僕は入らない」のだという。

 その理由が「選手の時にフリーキックのキッカーだったんで、あまり指示をされたくなかった。好きにやらせてくれよと思っていたから、逆の立場になったら口を出さない様にしようと」というもの。そして、「ピッチの中で話していて、練習もしていたと思う。僕はベンチから「何かやって」とは言ったけど、やってくれましたね。3年前だったので忘れられているのかなと思っていたので、ちょうどよかったですね」とも話した。

 このセットプレーで先制したチームは交代選手も効果的なプレーを見せて2点目を奪い、相手の反撃を1点に抑えた。もちろん先制点につながったという意味でセットプレーは勝利を引き寄せる重要な要素にはなっただろう。しかし、3年前に0-6の大敗を喫した時と違う姿を見せたのは、流れの中でのプレーがメインだった。3バックで相手のロングボールを跳ね返し、3ボランチがセカンドボールの競り合いで優位に立つ。その球際の戦いに負けない、根本的な強化のキッカケはやはり3年前だった。

「3年前に0-6で準決勝に負けた悔しさ、これくらいの体を作らないと全国では勝てないよなと。3年かけて、OBの子たちも頑張ってくれた。この1年はメンバーだけじゃなく全部員がプロテインの摂取など食事の部分でも強化してきた。それが間違いなく今日の結果に結びついていると思う」

 その動きの特殊さや独自性が話題になるセットプレーだが、それを披露するセットプレーを得たのも流れの中での試合展開が互角かそれ以上のものだったこと。そして、土台のしっかりしたケーキの上に乗せたイチゴのように、3年越しのトルメンタが仕上げになった。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング