強豪校入りで「レベル高すぎてビビった」 入学後まさかの現実、2年生で「このままじゃダメだ」
京都橘高校の2年生GK平誠都、自らを変え掴んだ国立でのスタメン
人間は簡単に自分を変えることはできない。引っ込み思案の性格、恥ずかしがり屋の性格、消極的な性格などいろいろある中で、「それではダメだ」と一念発起し、そうした自らの姿から目を背けずに向かい合って、何かアクションを起こす。これは学生だろうが、社会人だろうが、スポーツをやっている、いないに関係なく重要なことだ。
サッカーの世界に身を置いていると、「自分にベクトルを向ける」という言葉が多用されるように、そういう自分と向き合い、打破していく過程を踏んでいる人間に多く出会す。12月28日の第103回全国高校サッカー選手権大会開幕戦でも、その過程を踏んでいる1人の選手と出会った。京都橘高校の2年生GK平誠都。182cmのサイズと俊敏性を持つ彼は、国立競技場という大舞台でも堂々たるプレーを見せた。
結果は開始早々の5分にセットプレーから、試合終了間際の後半40分に流れの中から決められ、2失点を喫しての敗戦となったが、失点前には相手のカットインからのシュートを横っ飛びでセーブし、前半23分には帝京のエースFW森田晃の左からの強烈なシュートを弾き出した。後半13分にも途中出場のFW宮本周征が放った決定的なヘッドを完全に読み切ってダイビングキャッチ。背後のボールにも冷静に対応するなど、持ち味を存分に発揮していた。
「全国大会は僕自身初めてでしたし、場所が国立というのもあって、1つ1つのプレーに重みを感じました。ハイボールやキックはまだ甘かったですし、反省点も多いですが、この経験ができたのは大きな自信になります」
人生を通じて初の全国大会。この舞台を経験できたのは、まさに自分の弱さと向き合って、「このままではダメだ」と意識改革を行ったゆえであった。「入学したての時からしばらくは周りのレベルが高すぎて、自分にあまり自信が持てなかったというか、これは性格的なものなのですが、控え目というか、どこかでビビっているプレーが多かったんです」
GKはただゴールを守っていればいいのではなく、ハイラインや前からのプレスが主流になっているなかで、どうしてもペナルティーエリアを果敢に飛び出していくプレーが求められる。1対1の出足も含めて、奪われたらどうしよう、やられたらどうしようというネガティブな思いが、自分のプレーを縮こませていると課題を明確に感じていた。
「どこかで自分から逃げずに向き合わないと、いつまで経ってもGKとして成長しないし、試合にも出られない。このままじゃダメだ、どうするべきかと考えた時に、リスクもありますが積極的なプレーをするべきだと、2年生になってずっと意識を持って取り組みました。積極的に前に出るGKとしての守備範囲を広げて、攻撃的にいくプレーをどんどん増やしていったら、徐々に『自分でもできるんだ、成功出来るんだ』という経験が積み重なっていき、自分の中で自信を生み出していきました」
自身初の全国舞台で「前向きな気持ちと意欲を持って挑めました」
失敗を恐れずにチャレンジする。言葉で言うのは簡単だが、それを実践することは勇気がいるし、継続することは難しい。だが、それを彼が出来たのは、尊敬する京都橘出身の偉大な先輩たちがいたからと言う。
「永井建成選手は僕の地元のFC大阪でプレーしていて、花園で試合を観にいきました。直接話したことはないのですが、試合中に常にポジティブな声をかけると聞いていて、GKとして守備の選手に安心感を与えるのは重要なことなのだと思いました。来年、東洋大からアスルクラロ沼津に加入する前田宙杜選手は同じ岩田FCジュニアユース出身で、中学の先輩に当たる存在。岩田FCから京都橘への道を作ってくれた人で、本当に僕が入る時もサポートをしていただいたので、僕も先輩たちに続けるように京都橘からプロの道を目指していきたいと思っています。だからこそ、自分が変わらないといけないと思えました」
来年は主軸としてチームを牽引していかなければいけない立場となる。より積極性を持って行動をしながら、チームに安心感を与える存在にならないといけない。
「初めての全国ではありましたが、初めてではないくらいの前向きな気持ちと意欲を持って挑めました。だからこそ今日の試合は勝って次につなげたかった。この悔しさ、経験を必ず来年のチームに還元して、もっと強くなってインターハイ、選手権と2度目、3度目の全国に帰ってきて今日のリベンジをしたいので、これからはより真摯に取り組んでいかないといけないと思っています。1月になったらすぐに京都の新人戦が始まるので、そこでライバルの東山に負けないようにチームを引っ張っていけるようにしたいです」
より積極的に。自分で自分を変えられた自信を胸に、平の成長はまだまだ止まらない。
(FOOTBALL ZONE編集部)