ファイナルで涙の「銀メダル」 名門ユース→高校へ転籍…異例経歴も国立で誓ったリベンジ
悔しい思い出から踏み出した帝京の田所莉旺
全国高校サッカー選手権の開幕戦で京都橘を下した帝京の田所莉旺にとって、国立競技場はある種特別なスタジアムだ。
田所は高校1年まで川崎フロンターレU-18に所属しており2022年のプレミアEASTにも2試合に出場している。チームは初昇格のプレミアEAST2022で初優勝しており、鳥栖U-18とのプレミアファイナルに臨んだ。その舞台が国立競技場だった。
「自分はその試合はメンバーには入れなかったんですけれど、ベンチとかロッカーには行けましたし、自分が一番憧れていた先輩でしたし、好きだった代の先輩だったので」
当時の3年には、高井幸大や大関友翔(川崎)、松長根悠仁(福島)といった選手たちがプレー。田所が憧れて好きだった3年生たちは鳥栖U-18に先制しながらも3失点。結果的に2-3で逆転負けし優勝には手が届かなかった。
「自分はプレミアには出させてもらっていたので、JFAのメダルはもらって、それが家にあるメダルの一番大きいメダルなんですけど、やっぱりそれが銀メダルで」
そんな悔しさに加え、鳥栖U-18の福井太智(当時バイエルン・ミュンヘンに加入)がヒーローとして取材を受ける姿を見ており、成長の糧にしたという。
「ちょうどここ(開幕戦後の国立競技場のミックスゾーン)で、福井太智くんが囲み取材みたいなのを受けているところを横目に見ながら帰ったのを自分は鮮明に覚えていて。自分も高校3年生になったらこういうスターになりたいなと思っていました」
また、プレミアファイナル敗戦後に、憧れの先輩方からの激励を受けていたとのことで、その恩返しの意味もあるのだという。
「その時(プレミアファイナル後)に大関さんと喋って、期待してもらっていたので。ちょっと恩返しする場所が変わっちゃうんですけど。選手権で国立で、しっかり勝てるように。国立でリベンジできるようにっていう話で。ナガネ(松長根悠仁)さんとか高井さんとかにもすごい励まされて。絶対国立で(選手権を)獲ってくれと言われていたので」
2年越しの金メダルに向けその第一歩を踏み出した形の田所は、このあと思い出深い等々力に会場を移し3試合を勝ち抜く覚悟だ。
思いで深い等々力で…心強い応援団・元チームメイトが集結
「あと3回等々力でやって、準決勝で(国立に)帰ってきて、最後は優勝できればいいなって思います」
ちなみに田所は開幕戦前日の27日にも大関と話したとのこと。
「昨日(27日)、大関さんは(川崎への)レンタルバックが発表されて。それで喋って。『帰ってくるんですね』という話をしたら『そんなことどうでもいいから選手権頑張れ』と。自分的には『(川崎に)お帰り』っていう気分だったんですが、『頑張れよ』と言われて。『応援しているから』と言ってもらったので」
なお、田所の応援のため等々力には川崎U-18時代のチームメイトが集結するとのこと。そんな旧友の前で勝ち上がる姿を見せられるのかどうか、楽しみなところだ。
(江藤高志 / Takashi Eto)
江藤高志
えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。