元フランス代表も絶賛「素晴らしい才能」 高校→即プレミア逸材も…ロス世代の注目ストライカー【コラム】
神田、井上、徳田、高岡…勝負の2025年に向け、しのぎを削るロス世代FW陣
今夏のパリ五輪を率いた大岩剛監督の2028年ロサンゼルス五輪続投が決まり、若い世代に大きな刺激を与えている。そんな中、12月16日から19日にかけてU-19日本代表合宿が千葉・幕張で行われ、ロス世代の精鋭たちがアピール合戦を繰り広げた。(文=元川悦子)
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
最終日には流通経済大学との練習試合(30分×3本)が行われ、井上愛簾(広島)、高岡伶颯(日章学園高校)、徳田誉(鹿島)らが次々とゴール。1本目で先発1トップに陣取った神田奏真(川崎)もいい動きを見せており、FW陣のサバイバルは激化の一途を辿っている様子だ。
目下、ロス世代のFWのトップを走るのは、2024年1月にジュビロ磐田からベルギー1部・アンデルレヒトにレンタル移籍した19歳の後藤啓介。2023年J2で33試合出場7ゴールという目覚ましい実績を残した191センチの長身FWはこの1年間、セカンドチームでプレー。今月完全移籍することが発表されたばかりだ。2025年はトップチームデビューも有力視されており、非常に楽しみな逸材だ。
ロアッソ熊本で2003年に18試合、2024年に9試合に出場している18歳の道脇豊(ベフェレン)も有望な点取屋。彼もまた186センチと大柄で前線でのスケール感を感じさせる選手だ。まだベルギー2部で活躍するには至っていないが、早いうちから海外に出ていったことでフィジカルコンタクトや強度を体感し、適応していくのは間違いないだろう。
彼ら海外組は2月のAFC・U-20アジアカップ(中国)や9月のU-20ワールドカップ(W杯=チリ)の招集が困難と目される。ゆえに、現時点で国内でプレーしているFW陣のブレイクは必須なのだ。
まず神田だが、今年9月のAFC・U-20アジアカップ予選(キルギス)ではファーストチョイスと位置づけられた。静岡学園高校出身らしいボール扱い、クロスからのヘディングの強さ、高い身体能力を備えたFWで、川崎フロンターレで共闘した元フランス代表のバフェティンビ・ゴミスから「ソウマには素晴らしい才能がある」と絶賛されたほどだ。
今回の流経大とのゲームでも井上や佐藤龍之介(FC東京)を巧みに生かし、ゴールチャンスを作るなど、非凡な才能を随所に示していた。2025年の川崎は長谷部茂利監督率いる新体制で再出発することになっているが、若い世代にとっては大きなチャンス。それは今季、福島ユナイテッドへレンタルで赴いていた大関友翔も強調していたこと。神田も序列を挙げられれば、ロス世代筆頭FWの1人になれるかもしれない。そういう意味でも動向が注目されるところだ。
その神田と組んでいい動きを見せたのが、1つ年下の18歳・井上。今季サンフレッチェ広島ではリーグ戦4試合出場にとどまったが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2などでも経験を積み、大きく成長したのは確かだ。
「練習試合1本目のフォーメーションが広島と同じだったのですごくやりやすかった。自分は日頃からチームで高いレベルでやらせてもらっているので、U-19に来てやれないことはないし、むしろやれることは多かった。チームではフィジカル的な部分で勝てないなと感じることも多いけど、一歩目の動き出した背後への抜け出しから点も取れたりしている。そこに磨きをかけて近いうちにスタメンで活躍できたらいい」と本人もギラギラ感を前面に押し出していた。
確かに普段から佐々木翔や荒木隼人らを相手にアタックしているのだから、年代別代表では十分やれるはず。しかも広島には今季限りで引退した青山敏弘、退団した柏好文といったベテランもいて、つねに高い要求を突きつけられていたはずだ。
「アオさんからは『頼むぞ』と言われましたし、柏さんはテンション高く練習に参加している姿から刺激を受けた。僕もあれだけ楽しめたらいいと思います」と井上は神妙な面持ちで言う。偉大な先人からの学びも糧にして、ここから一気に突き抜けるしかない。
井上と同学年で、2007年の早生まれである徳田と高岡もポテンシャルの高い選手。徳田は今季鹿島アントラーズで12試合出場1ゴールというポジティブな数字を残し、リーグ終盤は重要なジョーカーと位置付けられた。
「今季は体の使い方やボールの隠し方、ゴール前で収めることをすごく意識させられた。そこは中後(雅喜=監督)さん、羽田(憲司=コーチ)さん、(鈴木)優磨くんからも求められたので、自分なりに取り組みました。9月の広島戦のゴールみたいに手ごたえをつかんだ部分もあったけど、もっともっとチームに貢献できるようにならないといけない。今季は1点しか取れなかったし、出場時間も短かったので、そこは自分に厳しく要求してやっていく必要があると思います」と17歳の大型FWは毅然と前を向いていた。
鹿島も来季は川崎で7冠を獲得している名将・鬼木達監督が就任し、新たなスタートを切ることになる。絶対的エース・鈴木優磨が軸を担うのは変わらないが、今季後半を負傷で棒に振ったチャヴリッチも復帰するだろうし、レオ・セアラ(C大阪)加入の噂もある。となれば、徳田にとっては厳しい環境だ。
その間に割って入り、実績を残さなければ、2月のAFC・U-20アジアカップも9月のU-20W杯も呼ばれない可能性が高い。実際、彼は今年9月の予選はメンバー外。本人も悔しさを感じたという。それを今後の活力にしていくしかないだろう。
そして最後の高岡だが、ご存知のとおり、年明けからサウサンプトン入りすることが決まっている注目株だ。通常であれば、渡英してしまえば代表活動参戦は難しくなるのだが、彼の場合はまだいつから現地入りするか決まっておらず、2月のAFC・U-20アジアカップ参戦の可能性はあるという。船越優蔵監督の期待値も高いこともあって、今回も重要戦力と位置付けられている様子だった。
「僕のストロングはスピードとか裏に抜けるところ。日本で通用する部分と海外で通用する部分は違ったりするので、いろいろ工夫が必要だと思うし、パワーとかもまだまだ足りないと感じています。でも僕のゴールへの貪欲さは絶対にどこでも負けない。そこには自信を持っています」と本人は野心を前面に押し出した。165センチという小柄な体躯ながら、2023年U-17W杯(インドネシア)で4ゴールを叩き出した男は普通の10代選手とはメンタル面が大きく違うようだ。
「参考にしているのは(元イングランド代表の)マイケル・オーウェン」とも語っていたが、2007年生まれの高岡はオーウェンの絶頂期を知らない。それでも自分から動画をチェックし、彼の凄さに目を奪われ、プレー分析を重ねているという。その探求心や向上心も特筆すべき点だ。こういうガツガツした人材が上へ上へと突き進んでいくのかもしれない。
いずれにしても、ロス世代はFWの人材が非常に豊富である。それは紛れもない事実だ。彼らは今の森保ジャパンの主軸である上田綺世(フェイエノールト)や小川航基(NECナイメンヘン)ら東京五輪世代と代替わりする世代。彼らの突き上げは日本サッカー界、日本代表の今後を大きく左右する。そういう意味でもロス世代のFWたちがバチバチと競争を繰り広げるのはいいことだ。
果たして2025年は誰がブレイクするのか。興味深く見守りたいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。