元日本代表が驚き…街を歩くと「神様みたいに崇められる」 約1000億円スタジアムの価値【インタビュー】
長崎の高木琢也CROが「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」を語った
今年のJリーグで最も話題になった出来事の1つが、V・ファーレン長崎の新スタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」が開業したことだろう。新スタ元年を奔走した高木琢也代表取締役兼C.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)がその舞台裏を明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全3回の1回目)
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「私自身も長崎の出身なので、これまで長崎になかったようなものが完成し、県民目線としてもすごく感動しました。もちろん私自身は競技者であり指導者でしたが、そのこと以上に県民として、長崎のさまざまなところにいい影響を与えてくれるようなものが出来上がったんだなと感じました」
高木氏といえば長崎・国見高校を経てJリーグで活躍し、日本代表としても活躍。「アジアの大砲」というニックネームでも人気を集めた地元のレジェンドだ。新スタジアムが完成してからは、市内を歩いていると「あんなすごいものを作ってもらってありがとうございますと神様みたいに崇められる」という。
計画の段階で欧州や米国を視察し、スタジアム、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスという5つを含んだ複合施設が誕生。高木氏は「特にホテルの場合はスタジアムビューで臨場感があり、日本には今までになかったような施設だと思います」とその特別さを強調する。
「無事に開業を迎えることができ、これからはしっかり収益を上げていかないといけないと思っています。こういう施設がビジネスとしても成立し、実際にスポーツで地域活性化が実現するということを証明するためにも、しっかりと結果も出していかないといけないと思っています。地域創生のロールモデルにするためにも、自分たちの力がこれから問われていくと思っています」
3週間で課題を改善
総事業費は約1000億円とも言われるが、開業からわずか2試合ほどで投資回収していく手応えはあったという。高木氏は「もっともっとやれることはある。サッカーのスタジアムだけではなくスタジアムシティ全体で、その1000億円の価値をうまく伝えていかないといけないのかなと思います」と展望を語る。
大成功の一方、いくつかの課題もあった。話題のスタジアムグルメには長蛇の列ができ、購入を断念したという不満の声も。「そこの予測とかもいろいろな意味で甘かった。お客様を待たせることなく、楽しんでもらえるような環境作りをしないといけない」と解決に向け、すでに動き出しているようだ。
また、ピースタ初戦となった大分戦では、これまで試合を行ってきたトランスコスモススタジアム長崎とはピッチの芝の状態も変わり、選手からも意見が挙がった。しかし、3週間後の鹿児島戦までに急ピッチで改善。「いろいろな問題があって当然。それをジャパネット流で言うと、スピード感を持って改善する。それが我々のこの会社の強みだと思っています」と高木氏は説明する。
そして、クラブとして最も大切にしているのはこれまで支えてきてくれたファン・サポーターだ。試合会場はトランスコスモススタジアム長崎のある諫早市から長崎市に移ったが、高木氏は「試合を行う場所は長崎市へ移りましたが、練習拠点としては変わりなく諫早市のなごみ練習場でやっています。それはアカデミーも同じです」と強調する。
「一般のお客様はもちろんのこと、行政ともしっかりと協力しながら進めていかなくてはいけない。これまではホームゲームでは諫早の皆様に協力していただいていましたが、これからはまた違った形で地域貢献、子供たち、教育、そして文化など引き続き連携していきたいと考えています」
その足がかりとなったのが、諫早市の小学校を選手たちが訪問するプロジェクト。さらには、ホームタウンとしている21市町村すべてでさまざまな活動を予定しているという。一見、華やかにも見える新スタジアム開業の裏で行われている地道な努力。地元への恩返しに尽力している高木琢也CROが教えてくれた。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)