元代表も驚愕の「狙った股抜き」 日本人の50m超ドリブル突破に秘められた“真髄”【見解】

アジア杯に出場した三笘薫【写真:Getty Images】
アジア杯に出場した三笘薫【写真:Getty Images】

「いいドリブラーは常にルックアップしている」

 2024年のサッカー界では、国内外で数々の印象的なシーンが生まれた。1月のアジアカップでは日本代表MF三笘薫が相手選手3人を置き去りにする“50m独走ドリブル”を披露。「レベチすぎ」「これはカッコよすぎ」と、ファンの度肝を抜くシーンがあった。

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 舞台は決勝トーナメント1回戦のバーレーン戦。3-1で勝利を収めた試合の後半40分、自陣左サイドでボールを受けた三笘は、ハーフウェーライン手前からドリブルを開始した。目の前にいた2人の相手選手を軽々と抜き去ると、そこからゴール前まで独走。ゴールにはつながらなかったものの、50メートル超にわたる圧巻のドリブルからFW浅野拓磨へラストパスを通した。

 元日本代表でジュビロ磐田、ベガルタ仙台でプレーした太田吉彰氏が改めて、この一連のプレーに見られる三笘の卓越した状況判断力を分析。「スタートのドリブルの段階から常にルックアップしている。いいドリブラーは常にルックアップしている。最初の選手が後ろ向きから前に出てくるタイミングで瞬時に方向転換で抜きさり、2人目が一歩前に出た瞬時の判断で縦に抜けている」と、その凄みを語る。

 ゴール前まで侵入し、浅野にラストパスを通した場面も「しっかりとルックアップしながらいけている。自分でシュートに行くチャンスを見つつ、浅野選手が確実にフリーになるということも想定しながらのドリブル。敵のディフェンダーの足が出るタイミングが確実に見えていて、狙った股抜きのパスですよね。たまたまじゃないです」と振り返る。

「常に周りが見えているというところが凄さですね。三笘選手は世界で活躍する選手なんで、もちろん比べることはできないですけど、自分は蹴って走るタイプのプレーヤーでしたから、これほどまでに状況を把握しながらドリブルすることは正直できなかった」と脱帽する。「ただドリブル突破をしているだけじゃないよ、ということ。周りの状況とかも常に考えながらプレーして、常に良い選択肢を取れているというところが本当にすごい」。所属するブライトンでも高く評価されている三笘の技術の本質が、この場面に凝縮されていたと言えるだろう。

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太田吉彰

おおた・よしあき/1983年6月11日生まれ、静岡県出身。ジュビロ磐田ユース―磐田―仙台―磐田。J1通算310試合36得点、J2通算39試合4得点。トップ下やFW、サイドハーフなど攻撃的なポジションをマルチにこなす鉄人として活躍した。2007年にはイビチャ・オシム監督が指揮する日本代表にも選出。2019年限りで現役を引退し、現在はサッカー指導者として子どもたちに自身の経験を伝える活動をしている。

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