マンC、なぜ不振? 強者に思わぬ落とし穴…短期間で染み付いた癖、弱者との明暗【コラム】

シティ不調の原因は?【写真:ロイター】
シティ不調の原因は?【写真:ロイター】

マンチェスター・ダービーはマンUに軍配、選手を不安にさせるマンCの状況

 プレミアリーグ第16節のマンチェスター・ダービーはアウェーのユナイテッドがシティに逆転で勝利している。

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 ルベン・アモリム監督はこれでシティに連勝したことになるわけだ。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第4節でスポルティングを率いて4-1。スポルティングでの最後の試合だった。そして今回はマンチェスター・ユナイテッドで2-1。

 試合展開はどちらも似ていて、シティのほうが攻勢だった。アモリムのチームは我慢の時間帯を凌いでいるうちに巡ってきた好機を逃さず勝利している。

 アモリムに率いられて2度のリーグ優勝を成し遂げたスポルティングは、さながらポルトガルのマンチェスター・シティであり、そのプレースタイルはペップ・グアルディオラ監督の影響が色濃く表れていたものだ。

 後方からの丁寧なビルドアップと前進、敵陣で失った時のプレッシングによる早期奪回。この循環でゲームを支配していくスタイルだ。できることなら、シティを相手にも同じようにプレーしたかったはずだ。

 ところが相手はシティである。同じタイプの格上のチーム。スポルティングもユナイテッドも劣勢を余儀なくされた。それでも自分たちがボールを持った時には、自分たちのサッカーを諦めてはいない。引きっぱなしではなく、何度か押し返すことができた。これはシティ戦連勝の1つのポイントだったと思う。

 ただ、やはり大半はシティに攻め込まれて守備を固める流れに変わりはなく、先制されながら我慢して追加点を与えなかったことが最大の勝因である。

 一方、シティはすっかり負け癖がついてしまったようだ。マンチェスター・ダービーでは終盤にミスからPKを与え、さらに90分に縦パス1本で裏を取られて失点。攻め込んでいるけれども追加点を奪えず、そのうちに隙を突かれる。

 グアルディオラのチームが短期間でこれほど負けたことはない。そのことが、逆に選手たちの心理を不安定にさせているのかもしれない。

弱者の立場でプレーしてきたアモリム監督の経験と強さ

 FCバルセロナを率いていた時から常に強者の立場でプレーし、相手を圧倒して勝利を重ねてきた。実はペップのチームに全く隙がなかったわけではなく、それなりのリスクを抱えながらの攻撃サッカーだったのだが、自分たちのスタイルで押し切ってきた。

 シティの今季の不振は主力の負傷やそれに伴うコンディション不良、ベテランたちの強度の低下など、さまざまな理由があるが、負け慣れていないというのも大きな要因だろう。

 アモリムはグアルディオラほど強者の立場ではなかった。スポルティングとユナイテッドを率いてのシティ戦2試合がそうだったように、弱者の立場でプレーしなければならないケースもあった。

 同じプレースタイルを志向しているが、それで押し切れない試合をそれなりに経験してきたわけで、それがシティ戦連勝での粘り強さに表れていた気がする。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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