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交換した香川のユニフォーム…敗戦チームが「おい!それくれよ!」 ドイツが熱狂した日本人の“舞台裏”【インタビュー】
元日本代表MF大津祐樹氏が振り返るドルトムント香川とのやりとり
元日本代表MF大津祐樹氏がドイツ1部ボルシアMGに在籍していた時期、ブンデスリーガに衝撃を与えていた日本人選手がいる。ボルシア・ドルトムントで飛躍した元日本代表MF香川真司は、リーグ連覇の立役者となり、サッカーファンに留まらず、他チームの選手からも絶大な人気を博していた。それを象徴する出来事として、大津氏は試合後に交換した香川のユニフォームを巡るエピソードを明かしている。(取材・文=城福達也)
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◇ ◇ ◇
今でこそ数多くの日本人選手が欧州リーグで活躍しているが、2011年当時は欧州市場で高く評価されていたとは言い難く、まだまだハードルの高い挑戦だった。そんななかで大津氏がドイツの名門ボルシアMGの扉を叩くことができたのは「真司くんのおかげ」と明言する。
「真司くんがドルトムントで爆発的に活躍していたため、ドイツ全体で日本人をマーケティングしていきたいという期待値が一気に高まっていたタイミングだったので、クラブや監督からも歓迎された。当時の真司くんは、まさにブンデスリーガを席巻する存在だった」
通訳もつけられていたが、「なるべくチームメイトとはドイツ語でやりとりするよう心掛けていた」と振り返る。加入当初から同僚たちと円滑なコミュニケーションをとれたのも、「仲間から真司くんのことを聞かれることが多くて、やはり真司くんの話題に助けられた部分が大きかった」と、ここでも香川が一役買っていた。
欧州でプレーする日本人選手との交流も多かった。香川とは、ボルシアMGとドルトムントは地域が隣接していたこともあり、「住んでいる家が近かったので、よく食事にも行っていた」という。ドイツで活躍するためのメソッドについて熱く語り合った……かと思いきや、「サッカーの話はほとんどしなくて。リラックスした雑談が多かったかな」と明かした。それでも、初の海外挑戦で肩に力が入っていた大津氏にとっては、貴重な時間だった。
交換した香川のユニフォームに「おい!それくれよ!」
大津氏が鮮明に覚えていることの1つに、2012年4月21日に行われた第32節で迎えた、香川との直接対決がある。ドルトムントはボルシアMG戦(2-0)での勝利でリーグ連覇を成し遂げたが、後半14分に香川が優勝を決定づける得点を奪っていた。
華麗なステップからゴールに流し込んだ瞬間、当時指揮していたユルゲン・クロップ監督がコーナーフラッグまで駆け寄り、香川を抱き上げて祝福した姿は、今でも有名なワンシーンだ。しかし、大津氏にとってより印象的だったのは、試合後の出来事だったという。
「ドルトムント戦でベンチだったんですけど、試合後に真司くんとユニフォーム交換をしたらいきなりチームメイトたちが、おい!それくれよ!と寄ってたかってきて、びっくりしましたね。でも、それくらい、真司くんはスーパースターだった。優勝を決めるゴールを奪っているのを目の前で見ていて、やっぱりすげぇな……と思い知らされた」
試合に負けたばかりで、目の前で優勝を決められ、悔しさや苛立ちを感じているはずの仲間たちが、交換した背番号「23」のユニフォームを本気で欲しがる姿に、改めてその偉大さを実感した。そして、それほどまでに香川がドイツで象徴的な存在となっていることを物語っていた。
現在、世界で活躍する日本人選手の光景は決して珍しいものではなくなった。欧州市場でも、日本人選手の価値が非常に高まっているのは紛れもない事実だ。しかし、それでもなお、憧憬の眼差しを向けられた熱量で言えば、今でも香川を越える存在はもしかしたら現れていないのかもしれない。