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大震災後…カズが決めた一撃「一生忘れられない」 勇退する西村雄一レフェリーが感慨
トップリーグの担当から勇退する西村審判員が記者会見
日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は、今季限りで西村雄一審判員がトップリーグの担当から勇退することを発表した。西村審判員は12月19日のレフェリーブリーフィング後に記者会見を行い、ワールドカップ(W杯)などビッグマッチでの担当を振り返りつつ、サッカー界の変化についても話した。
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西村審判員は2000年にJ2の副審としてデビューし、03年から主審に専念してJ1も担当。数多くのビッグマッチを担当して11回にわたるJリーグ最優秀主審賞を受賞した。国際審判員としても活躍し、4試合を担当した10年の南アフリカW杯と、アジア人として初めて開幕戦の主審を担当した14年のブラジルW杯に選出された。その後は国際審判員を退き、国内のゲームに専念。4月で52歳になった今シーズンまで20年以上にわたりJリーグを審判員という立場で支えてきた。
西村審判員は南アフリカW杯準々決勝のブラジル対オランダ戦、ブラジル代表MFフェリペ・メロにレッドカードを提示したことで話題になった。それが正しい判断だったことは世界中でも分析されたが、「夢中で私にできることをやり切った。あの時は相手を踏みつけたことでレッドカードが出ているけれども、あの場面を正しく見極めることができたのは、今日ここで皆さんの前でお話しできていることにつながる重要な判定だったと思う」と振り返った。
また、最も心に残っている試合としては11年の東日本大震災が起きたあと、3月29日に行われた「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!」を挙げた。日本人であることから基本的に担当できない日本代表の試合だったことに加え、Jリーグ選抜のFW三浦知良が決めたゴールの瞬間を「通常なら点を取られてしまったほうの感情が出るが、あのゴールだけは誰もが喜んだ。その瞬間は僕の人生でもたった一度しかない。それをピッチ上で味わえたのは、一生忘れられない」と話した。
西村審判員が活動してきた期間では、サッカー界における選手たちやファン・サポーターと審判員との関わりも大きく変化してきた。多くのカメラでJリーグの試合が映し出されることによって、各審判員の個性やパーソナリティーの部分が伝わる場面も増えた。西村審判員であれば、2020年7月20日の横浜F・マリノスと鹿島アントラーズの試合で、フリーキックの際にバニシングスプレーで引いた線が曲がってることを指摘した選手に対し、「だって、円だもん」と答えた場面だろう。
そのような面について「審判員も10人いれば10色だと思う。審判員が育ってきた、あるいは最初に志したものは全員が違うので個性が出る。それをトップリーグを担当するレフェリーは同じ枠組みに寄せながらも、そこから出てくる個性。私なら選手とのコミュニケーションの中で出た『だって、円だもん』という発言を楽しんでいただけたのは、時代だなと思う。まさかマイクに拾われていると思わなかった。普通にレフェリーとして選手との距離感で発した言葉に皆さまが触れたことで、個性を感じるきっかけになったのなら嬉しい」と話した。
ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)導入との過渡期も過ごしながら経験を生かしてきた西村審判員は、今後はJFAの審判マネジャーとして後進の指導などに関わり、自身も2級審判員の資格は維持しながら審判活動は続けるという。