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試合はバイクで現地集合&解散、“草原”ピッチ…苦労だらけも「新たな自分に出会えそう」【インタビュー】
【海外組アウトサイダー】ヤングエレファンツFC(ラオス1部)所属・前田凌佑
現在では欧州1部を中心に数多くの日本人が活躍し、日本サッカーの進化を印象づけている。ただ、スポットライトが当たらずとも、海外のほかの地域にも目を向ければ独自の道を切り拓こうとする同胞たちの姿がある。FOOTBALL ZONEでは「海外組アウトサイダー」としてそんな選手に注目。ラオス1部で奮闘するMF前田凌佑に現地のサッカー事情を語ってもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全2回の2回目)
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◇ ◇ ◇
ヴィッセル神戸ユース出身のMF前田凌佑は、2013年にトップチーム昇格を果たした。プロになってからの2シーズンこそリーグ戦に出られずJリーグU-22選抜で試合経験を積むも、15年のネルシーニョ監督(現ポンチ・プレッタ=ブラジル2部)の就任が転機に。ここで頭角を現し、17年からローン移籍期間も含め3シーズンを大分トリニータ、21年から2年にわたり愛媛FCでプレーし実績を築き上げていった。
それでも、2022年シーズンはチーム戦術の影響などで持ち味を発揮できずに出場機会を減らすと、11月10日に愛媛との契約満了が発表。前田はここから国内ではなく、海外に活躍の場を求める。目指した先は東南アジア。現地でプレー経験のあるかつてのチームメイトなどから話を聞くうちに、挑戦したいと思うようになった。
しかし、新天地探しは一筋縄ではいかず。選手獲得における現場とフロントの認識不一致やコミュニケーション不足で移籍話が直前でご破算になったこともあり、今年9月下旬にラオス1部ヤングエレファンツFCとの契約がまとまるまで2年近く無所属を余儀なくされた。
ラオスで再び公式戦のピッチに立てたことで、「サッカーができる喜びを一番に感じています」。とはいえ、文化も言語も異なる異国である。チームに加わって最初に面を食らったのは現地での移動手段だった。
「みんな、練習場まで基本的にバイクで来ます。僕、ラオスに来るまで乗ったことがなかったので、チームから貸与されて初めて乗りました。
問題は交通ルール。信号がちゃんとあるにもかかわらず、現地の人たちはそれを無視して行けると思った時にアクセルを踏むんです。だから、運転していてめちゃくちゃ怖い。練習に行くまでに怪我してしまいそうですよ」
試合ともなれば国内1部のプロクラブに相応しい待遇が用意されていると思いきや、それも違うという。
「ホームでの試合はバイクで現地集合・現地解散です。アウェーだとさすがにバス移動ですが」
環境に苦労も「新たな自分に出会えそう」
内陸国という地理的条件や長く続いた過去の内戦により経済発展が遅れた影響で「アジア最貧国の1つ」と呼ばれるラオス。それゆえに、サッカーを取り巻く環境にも苦労がつきものだ。
「クラブハウスだけでなく、練習場もないのでいろいろな場所を転々と渡り歩いています。あと、ピッチの質も日本とは全然違いますね。草原みたいですし、凹凸があるのは当たり前。2メートル程度のパスでも平気でボールがバウンドしてしまいます」
前田は、自らの持ち味を「自分からボールに積極的に絡んで動かすプレー」と話す。理想とは程遠いピッチだと、フラストレーションが溜まりやすいのは推して知ることができる。しかし、「新たな自分に出会えそう」と目を輝かせる。今は「サッカーができる幸せ」が何よりも勝っているのだ。
「どこのお店に行っても自分が困っていたら周りの人が助けてくれます。基本的にみんな笑顔で接してくれるので、英語もままならない自分にとっては居心地のいい国です」
オファーが寄せられるまでアジアのどこにあるかさえ知らずイメージも湧かなかった国だが、住み始めるとすぐに現地の環境が気に入った。現在30歳。ラオスで残りのキャリアを全うするのか。
「東南アジア内のより高いレベルを目指したいので、まずはラオスでしっかり結果を残しステップアップしていきたいですね」
ラオスで始まったばかりの海外挑戦。ここからどのようなサッカー人生が展開されていくか、期待が膨らむ。
[プロフィール]
前田凌佑(まえだ・りょうすけ)/1994年4月27日生まれ、兵庫県姫路市出身。ヴィッセル神戸Jrユース-ヴィッセル神戸U-18-ヴィッセル神戸-大分トリニータ-愛媛FC。アンダー世代(U-15、17)では日本代表も経験。ボランチを主戦場とし、積極手にボールに絡んで攻撃を組み立てるプレーを持ち味としている。
(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)