強豪校1年生に喝采「さらに伸びる」 3年生から先発奪取も…「チーム崩壊」の悔やまれるミス

履正社高校の高屋敷永輝【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
履正社高校の高屋敷永輝【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

履正社高校1年生タレント高屋敷永輝が悔やんだ1プレー

 第103回全国高校サッカー選手権大会大阪府予選決勝。履正社のスターティングラインナップを見ると、4人もの1年生が名を連ねていた。

 その1人である右サイドバックの高屋敷永輝は、「これからさらに伸びる可能性があるよ。本当に楽しみな選手」と平野直樹監督が大きな期待を寄せる存在だ。

 就任22年目の平野監督は履正社を創部から全国屈指の強豪校に仕立て、町野修斗(ホルシュタイン・キール)というワールドカップ戦士のほかに林大地(ガンバ大阪)、田中駿汰(セレッソ大阪)、平岡大陽(湘南ベルマーレ)ら多くのJリーガーを輩出。履正社の前はガンバ大阪のアカデミーで宮本恒靖、稲本潤一らを指導した経歴を持つ。その平野監督が期待する選手に真っ先に名を挙げたのが高屋敷だった。

 大阪出身の高屋敷はサイドバックとして高いアップダウン能力とクロスの質などを平野監督に評価されて履正社にやってきた。

 当初は1年生チームに所属し、「一番戸惑ったのはビルドアップ。どんどん高い位置をとって仕掛けるプレーだけではなく、周りを見て連動しながら上がっていくことを学んだ」と、課題をすぐに見つけ出して意図的に取り組んだことで、夏を境に一気に頭角を現していく。

 選手権予選2週間前にAチームに昇格すると、予選ではいきなりスタメンに抜擢された。しかし、阪南大高との決勝戦、彼は今も悔やんでも悔やみきれない判断ミスをしていた。

 0-0で迎えた後半13分、阪南大高が左サイドでワンツーを仕掛けてきた時、高屋敷はそのワンツーを読んで、落としたボールに食いついて行った。しかし、先に相手に触られ、さらに高屋敷の裏に出来た広大なスペースにボールを大きく出されると、そのまま入れ替わられてペナルティーエリア内までボールを運ばれてしまった。慌てて背後から食いつこうとするが、そのまま余裕を持ってマイナスの折り返し。これをMF福本一太に蹴り込まれて先制点を許した。

「僕が1日、1日をもっとしっかりとやっていたら…」

 チームはそこから大きく崩れ5失点。終了間際に高屋敷は相手GKと1対1になるが、痛恨のシュートミス。終わってみれば0-5の大敗を喫した。

「マークまではついて行けていたのですが、相手がボールを持った時に、自分のスピードを過信しすぎてしまっていました。一気に前に入られて、そこからも間に合わないとなって足だけで行ってしまって、そこから独走されて失点。チームが崩壊するきっかけを作ってしまった。あの失点は焼きついています。1プレー1プレーの重み、チームを代表してピッチに立つ重みを痛感しました」

 苦い経験だった。自分がレギュラーを掴んだことで、逆にその座を奪われる3年生の存在があった。高校最後の1年、しかも残りは選手権とリーグ戦3試合という状況で1年生にレギュラーを奪われる。悔しさは計り知れないが、それでも高屋敷に「俺の分まで頑張ってくれ」と応援をしてくれた。その思いや責任感を強烈に感じていたからこそ、この試合のプレーと結果に自分に対する怒りが込み上げてきた。

「1年生だからというのを言い訳にしたくなかった。僕が1日、1日をもっとしっかりとやっていたら、あそこであんな失点は許さなかった。『3年生になる頃には』ではなく、今の段階でいろいろできるようにならないといけないと思っています」

 いつかじゃなくて、今。決勝戦から3週間後のプリンスリーグ関西1部の最終戦。京都サンガU-18を相手に右サイドでアップダウンする彼の姿があった。

「自分の足が速いとかそういうのではなく、過信せずにきちんと守る。最低限の守備ではなく、相手に何もさせない最高の守備を求めてやらないといけないと痛感しました。ボールを奪えても、『これでも足りない』と思いながら積み重ね続けたいと思っています」

 展開を見ながらポジショニングを取り続けるだけではなく、ここぞというところは「何がなんでもうしろに通さない」という気迫を持って球際を厳しくいく。冷静さと獰猛さを併せ持って守備をして、そのうえに持ち前の攻撃力を発揮していく。自分が目指すべきプレースタイルが明確になったことで、彼は将来のビジョンを新たに描こうとしている。

「来年は自分がスタメンかスタメンじゃないかもしれませんが、やれることを精一杯やって、インハイ、選手権に出られるのであれば活躍して、勝利に貢献したいです」

 謙虚さも彼の魅力。だが、自身の成長を求めることは誰にも止められない。来年こそはチームの勝利に貢献できる存在になる。これから高屋敷永輝の名前を覚えておくことに損はないだろう。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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