J2降格で「クラブ規模も縮小しないと」 功労者と契約できぬ悲劇…新監督は厳しい船出
札幌は1か月で現有戦力を整理し、厳しいJ2を戦うための編成を整える必要
北海道コンサドーレ札幌は12月12日、来シーズンからの新監督として岩政大樹氏が就任することを発表した。7シーズンにわたって指揮を執ったミハイロ・ペトロヴィッチ監督の後任、そしてJ2降格からの再スタートという難しいミッション。さらに、来季開幕まで残された時間も短いなかでの厳しい船出となる。
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札幌は今季、ミシャことペトロヴィッチ監督の7年目でつまずいた。22節を終えた時点での勝ち点はわずか11。その後の16試合で勝ち点26と巻き返したものの、2節を残してJ2降格という現実を突きつけられた。故障者の続出がこの結果を生んだという見方もあるが、それだけでない多くの要因があるだろう。
実際、昨季後半戦の17試合で勝ち点14しか稼げておらず、すでに降格ペースだったと言える。組織として崩す形がなかなか作れないなか、独力で得点を演出していたMF金子拓郎が、昨年7月にクロアチア1部NKディナモ・ザグレブに移籍。オフにはFW小柏剛、MFルーカス・フェルナンデス、DF田中駿汰も流出した。
シーズン途中には7選手を緊急補強し、DF大﨑玲央、DFパク・ミンギュの活躍によって立て直したものの残留には届かず。FWジョルディ・サンチェスとFWアマドゥ・バカヨコは途中出場で求められる役割を果たせず出番を失い、MFフランシス・カン、FWキングロード・サフォは秘密兵器のままシーズンを終えた。
もちろん7選手の加入によって、選手が足りないという緊急事態は解消されたものの、ダブついているポジションも多く、今オフの戦力整理は免れないだろう。すでに12月7日にはFW菅大輝、MF駒井善成、GK阿波加俊太、MF小林祐希の契約満了を発表。特に主力だった菅と駒井の退団には、驚きの声も広がった。
J2降格により急ピッチで編成、辛抱が求められる1か月に
なぜこの4選手だったかについては憶測でしか語ることはできないが、駒井は12月8日の最終戦後に「クラブ規模も縮小しないといけないというなかで、僕と菅が契約切れるタイミングで」と明かしている。さらには、年齢と年俸を例に「そういうところで抱え切ることは難しいということを言われた」という。
この発言から察するに、J2で戦う来季予算の問題で泣く泣く契約を提示できなかったと受け取れる。サポーターとのお別れの機会を作るため、新天地の決定を待たずに発表したことで、多くの批判的な意見も届いたのは間違いない。クラブが泥を被ってでも円満にお別れした、というのが実情ではないだろうか。
また、降格が決まった直後に行われた12月1日のサンフレッチェ広島戦後には、主力選手の多くが「来季についてまだ話し合っていない」という趣旨の発言をしている。「Never Surrender」を合言葉に残留を信じて突っ走ったが叶わず。新チームの始動は1か月後と時間もないが、急ピッチでの編成が進められているようだ。
プロスポーツの運営において重要となるのは、決められた予算でのベストな編成。主力のさらなる流出も考えられるが、新監督の意向も交えながら必要となる選手を、情だけではなくシビアに判断する必要が出てくるはずだ。1年でJ1復帰を目指すためにもサポーターには辛抱が求められる1か月となるだろう。
そんななか、舵取りを求められるのが岩政新監督だ。国内では鹿島での1年半と監督経験とキャリアは浅いが、2012年に広島でミシャからバトンを受け継いだ森保一監督のような手腕に期待したい。一方、J2降格から数年でJ3まで降格した例もあり、以前よりレベルの上がっているJ2で失敗は許されない。
札幌は最終戦セレモニーで、代表取締役GMの三上大勝氏がGM専任となり、クラブのメインスポンサーを務める石屋製菓の石水創代表取締役社長が「代表権を持つ」と自ら発表した。野々村芳和前社長の退任後、続いていた兼任が解除されて心機一転の新体制。新監督だけではなく新社長の手腕にも注目が集まる。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)