練習場のベッドに寝転びYouTube「引退しようかな」 練習生が序列上…逸材が腐りかけた半年【インタビュー】

今季水戸に期限付き移籍した中島大嘉【写真:(C) MITO HOLLYHOCK】
今季水戸に期限付き移籍した中島大嘉【写真:(C) MITO HOLLYHOCK】

中島大嘉、藤枝での苦しい経験「熱量が大きかった分ダメージがデカくて」

 2年前に突如現れた新星が、J2で壁にぶち当たっていた。北海道コンサドーレ札幌のFW中島大嘉は、今季から出場機会を求めて藤枝MYFCへ育成型期限付き移籍で加入した。だが、ベンチ外が続くなど苦しい時間を過ごし、7月には水戸ホーリーホックに期限付きで再び移籍した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全4回の2回目)

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「夏に水戸に来て、半年ぶりにサッカーをやる喜びを感じたし、環境を変えて心機一転できた。藤枝時代はすごく苦しかったので、何回ももう辞めよう、引退しようかなと思った。そのマイナスがあった分、水戸に来てから、より練習、サッカーをする喜びを感じられたので、藤枝での時間も大切でした」

 そう切り出した中島は、藤枝時代を「不本意なことが多かった」と振り返った。「藤枝にいた瞬間、その時の自分の主観では違和感があって……。うまく監督とかとコミュニケーションが取れなかった」という結果、紅白戦では練習参加に来た大学生や高校生の方が序列は上になり、ベンチにも入れなくなっていた。

 2021年に長崎・国見高から札幌に加入すると、2022年にはルヴァンカップで4ゴール、リーグ戦でも2ゴールと結果を残した。188センチ、88キロの恵まれた体格とスピードは日本人離れしており、新星として大きな注目を集めた。しかし、4年目の今季は4月20日の徳島ヴォルティス戦を最後に、約3か月もの期間、出番を失った。

「自分の実力不足はもちろんある上で、その時は理不尽さを感じていました。今、客観的に考えるとどうか、じゃなくて、その時の自分は理不尽さを感じていて、不本意な時間を過ごしていた。それが事実かどうかは別として、自分としては。大前提、自分の実力不足があった上で、という話なんですけど……」

 今でこそ練習の2時間前にはクラブハウスに到着し、練習の後にもジョギングと筋トレ、昼食をとってから昼寝して身体のケアを行い、風呂に入り、帰宅のためにクラブハウスを出るのは夕方5時過ぎとストイックな生活を送る。ただ、藤枝時代には、そんな境遇もあって腐りかけていたという。

「練習開始時間ギリギリに来て、ずっとケアルームのベッドに寝転がってYouTubeを見て、練習終わった瞬間、ロッカー行ってシャワー浴びて帰るみたいな生活でした。自分のサッカー人生にとって大きな1年だという熱量を持っていった分、うまくいかなかったことで、燃え尽きたじゃないけど、熱量が大きかった分、ダメージがデカくて……」

 真剣に引退も考えていた6月、思わぬ出会いで事態が好転し始めた。読書家の中島は、知人から、ドイツの哲学者オイゲン・ヘリゲル著の「弓と禅」を紹介され、夢中になった。「禅にハマって、そこから今もずっとそれを大事にしているんです。その時の自分にすごく合っていたので、やってみると、その禅の本質に共感してずっと続けています」というほどだ。

 徐々にメンタルが安定し、本来のストイックさを取り戻した7月に水戸から期限付きのオファーが届く。瞑想をしてからピッチに立つと、リーグ戦13試合に出場して4ゴールを決めた。未完の大器の時計の針が再び動き出した瞬間だった。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



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