日本代表はW杯ベスト8よりも「上にいける」 必要な“盛り上がり”…環境整備への提言【インタビュー】
日本サッカーのレベルは「相当上がっている」
サッカー日本代表は“過去最強”と言える戦いを見せている。9月から始まった2026年北中米W杯アジア最終予選では6試合を戦い、5勝1分けでグループ首位を独走している。その一方で例年のような盛り上がりに欠けている現実もある。こうした状況に、元日本代表の太田吉彰氏はメディアも一体となったサッカー界の盛り上げの必要性を訴えた。(取材・文=福谷佑介)
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日本代表が強い。最終予選は5勝1分けと圧倒的な強さを見せつけて他国を圧倒。メンバーを見てもリバプールの遠藤航やブライトンの三苫薫、レアル・ソシエダの久保建英ら最高峰のリーグでプレーする面々も含め、ほとんどが欧州組に。メンバー構成、試合内容、すべての面で歴代最強と言っても過言ではないだろう。
15年前に単身、欧州へ海外挑戦の旅に出た太田氏も「日本サッカーは相当レベルが上がっていると思います。W杯ベスト8も絶対に不可能じゃない。むしろ、もっともっといけると思います。全体的なレベルはものすごく上がっている」と実感している。その一方で、サッカー界への危機意識も抱いている。
最終予選のアウェー4試合はテレビの地上波中継はなく、敵地で戦う選手たちに声援を送るにはスポーツ・チャンネル「DAZN」の独占配信を見るしかなかった。配信があるのはありがたい限りだが、やはり見る人の絶対数が減るのは事実。サッカー好きならまだしも、それほどではない人たちが見る可能性は低くなる。太田氏は「もっと多くの人の目に触れてほしいというのはありますよね。いまでは民放でサッカーがほとんどやらなくなりましたけど、当たり前にサッカーがある環境がやっぱりいい」という。
サッカー人気がより拡大し、盛り上がっていくためには、やはり多くの人が、より多くサッカーに触れる、目にする機会ができるに越したことはない。太田氏は“サッカーどころ”の静岡県出身。幼少期は自然とサッカーを見る、プレーする環境が身近にあったという。
「現役を辞めた人たちがサッカーの楽しさを伝える環境を増やしていくことが大事」
「子どものときはテレビでもよくサッカーの試合が流れていましたね。清水エスパルスもジュビロ磐田も強かったですし。友達の中にはエスパルスファンもいれば、ジュビロファンもいて、試合があった翌日は友達同士でサッカーの話をすることが多かったですね」。そうした環境があったからこそ、子どもたちの多くがサッカーを好きになり、自然とサッカーをする機会にも恵まれた。
「小さい頃からサッカーを見て、近くで感じることのできる環境がすごくありました。ジュビロの練習もそうですし、JFLのホンダの練習場も近くて。間近で選手を見ると、ものすごく感じることがある。そのホンダの選手がサッカーを教えてくれたりもしました」
いま太田氏は生まれ故郷の静岡と、ベガルタ仙台時代に過ごした宮城で指導者として子どもたちに自身の経験を伝える活動をしている。その指導方法には、こうした幼少期の原体験も生かしている。
「体験、体感することって、めちゃくちゃ大切だと思ってて、子どもたちと練習するときも一緒に全てのメニューに参加して、ゲームでも手を抜かないようにしているんです。『ズルい!』っていう子どもたちもゼロじゃないですけど、今のうちに経験しておくことはすごく大事。小学校6年生であれば、あと5年ぐらいで今の僕は抜かないとプロになれない。実体験させてあげることって大切だと思っている」
日本代表がW杯で16強に進出した2010年の南アフリカ大会や2018年のロシア大会で主力を担った面々、そしてその選手らと同世代の選手たちが徐々に現役を退いていっている。海外でのプレー経験もある選手たちが指導者にもなり始めており、太田氏は「現役を辞めた人たちがサッカーの楽しさ、スポーツの楽しさを伝える環境っていうのを増やしていくことが大事だと思います。子どもたちがサッカーに触れられる環境を作ってあげることも大切なのかな、と思いますね」は、OBたちが担うべき役割も大きいと言う。
日本サッカーのさらなる発展、日本代表のさらなる強化のためには、サッカーを取り巻く環境の変化がまだまだ必要だ。サッカーファミリーが総力を結集して、盛り上げのために力を尽くしていきたいものだ。
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(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)