胸に響いた言葉「一番しびれた」 森保監督が残した降格クラブのサポーターへ「応援し続けて」
「もっと多くの素晴らしいサポーターがいると思います」
J1リーグの最終節が12月8日に各地で行われた。ヴィッセル神戸が湘南ベルマーレに3-0で勝って2年連続の優勝を決めた一方で、ジュビロ磐田はサガン鳥栖に0-3で敗れて、1年でのJ2降格が決定。鳥栖はすでにJ2降格が決まっており、両クラブが来季降格となったこのカードには、日本代表の森保一監督が視察に訪れていた。磐田が涙を流したこの試合後、代表指揮官は両クラブのサポーターに訴えかけるように、こんな話をした。
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「J1にいても、J2にいても(クラブは)自分たちの街の誇りであるし、宝であることには変わりない。サポーターもチームですし、チームもホームタウンのためにみんな頑張っていると思うので、カテゴリーを問わず、これからも鳥栖を、磐田を応援し続けてほしいと思います」
鳥栖は2011年にJ2で2位となってJ1に昇格すると、その後、降格することなく、13年間、J1で戦い続けてきた。2012年、2014年には5位に入るなど、地方クラブの雄としてJリーグを盛り上げてきた。ただ、この日は1万4000人を超えるサポーターが来場したが、シーズンを通しての平均観客数は9800人。ピークだった2018年の1万5000人、2019年の1万5050人と比べると、コロナ禍やチームの不振もあって、3分の2ほどに減った。この状況に森保監督も気を揉んでいた。
「映像で見ることが多かったですけど、(観客の数が)減っているな、と(シーズンの)スタートからそれを凄く感じていて。それには何かしらポイントがあると思うんですけど、今日みたいにたくさんサポーターが来てくださって、より選手も躍動すると思う。鳥栖に関して言うと、もっともっと観客動員が多くて、盛り上がりの中でいい試合をしていたというところもあると思う。今日来たサポーターの皆さんは本当に素晴らしいと思いますが、もっと多くの素晴らしいサポーターがいると思いますし、スタジアムに直接足を運んでいただいて、街のチームに誇りをもってピッチとスタンド全体が一体となって戦っていけるようになるといいなと思いました」
「クラブのあり方、チームの作り方っていうところで、鳥栖は鳥栖らしく、磐田は磐田らしく」
森保監督には、鳥栖は熱狂的なサポーターが多い印象があったのだろう。この日もゴール裏に踊った横断幕に視線を向けていた。「『鳥栖が好きな俺だから』とか『恋人がサガン鳥栖』という横断幕にあるような、まさにこの文言のように鳥栖を応援してもらいたいなと思います。磐田の皆さんもすべてのJクラブが宝である、誇りであるという部分で応援し続けてほしいと思います」。コアなサポーターはそんなことはないだろうが、当然、降格となれば、スタジアムから足が遠のくファンもいるはず。日本サッカーの未来を考える身としてカテゴリーに関係ない熱いサポートを求めたかった。
この日の試合前、佐賀県の山口祥義知事が挨拶に立ち、クラブとサポーターに対して、熱いメッセージを発していた。「将来、この降格があったから今のチームがあるって言えるように、この降格をチャンスに変えよう」といった内容だった。このスピーチに心を打たれていたのが、他でもない森保監督だった。
「山口知事の話が一番しびれました。クラブのあり方、チームの作り方っていうところで、鳥栖は鳥栖らしく、磐田は磐田らしくあるといいなと思いました。鳥栖は育成の舞台ですごく成果を出しているチームだと思いますので、鳥栖の良さ、佐賀県の良さを存分にこれからのチーム力に反映していただければなと思います。本当に47都道府県のそれぞれの特徴を生かして、Jリーグのチームが高いレベルでしのぎを削るっていうのをすごく楽しみにしています」
今季はコンサドーレ札幌のJ2降格も決まり、来季は東北、北海道にJ1クラブが不在となり“最北”は鹿島アントラーズになる。また、鳥栖の降格により、九州もJ1はアビスパ福岡の1クラブだけ。「地域と地域の戦いという盛り上がりも出てくると思いますし、日本全国にJのチームがあるといいなと思います。九州のチームはカップ戦では優勝しているので、J1の舞台で九州のチームであったり、東北、北海道のチームも優勝する時代が来るといいなと思います」。カテゴリー問わず、常に厚い応援がある。日本中で熱い戦いがある。日本サッカーの発展を思う森保監督が、降格する2クラブを見て改めて抱いた願いだった。
(FOOTBALL ZONE編集部)