吉田監督が求める基準「理解できない選手は出れない」 統一した”共通認識”「クラブが何を言おうと」

神戸をJ1連覇に導いた吉田孝行監督【写真:徳原隆元】
神戸をJ1連覇に導いた吉田孝行監督【写真:徳原隆元】

ホームで湘南と対戦し勝利

 ヴィッセル神戸は12月8日に行われたJ1リーグ最終節で湘南ベルマーレと対戦。3-0の快勝を収めてリーグ連覇を達成したなか、試合後の会見で神戸の吉田孝行監督は「周りから何を言われようと、僕らは僕らの基準でJリーグを変えてやると思ってやってきた」と、独自のスタイルを確立し、Jリーグを席巻している現状に触れた。

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 勝てば優勝が決まるなか、神戸は湘南戦で前半に2点を奪い折り返す。さらに後半には、神戸在籍3季目ながらも移籍後初ゴールとなる豪快弾をMF扇原貴宏が決め、3-0の快勝。見事リーグ2連覇と、天皇杯との2冠を達成した。

 試合後の会見で吉田監督は「まず今シーズン、新しい選手も加わって、チームにフィットするのに時間がかかった。自分の中では夏以降、9月からの連戦を乗り切っていけば優勝できると頭にあった。天皇杯もACLもリーグも、すべで自分の計画というか思い通りに進んだ」と、1年を振り返りつつ、シーズン途中まで首位の座を明け渡していたものの、焦りはなかったと語った。

 昨季の神戸は圧倒的な攻撃が売りであり、FWに絶対的エースの大迫勇也が君臨。リーグ戦22得点7アシストと圧倒的な成績でリーグMVP、得点王、ベストイレブンと賞を総なめにした。今季の大迫も昨季と変わらず攻撃を牽引したが、11ゴール9アシストと数字上は昨季を下回っていた。

 それでも神戸は昨季のリーグ60得点とほぼ変わらず、今季は61得点を記録したが吉田監督は「攻撃が分散した。さこ(大迫)の存在は大きいけど、今シーズンはどこからでも点が取れる。苦しい時にセットプレーで取れるし、宮代(大聖)が入って、武藤(嘉紀)、(佐々木)大樹、さこもいることによって分散した。みんが点を取れる」と、攻撃のバリエーションが増えたことを明かした。特に川崎フロンターレから今季移籍してきた宮代は、加入1年目ながらもチームにフィットしリーグ戦11得点1アシストを記録。さらに天皇杯決勝や、湘南戦での先制弾など大一番で結果を残す勝負強さも兼ね備えている。

神戸がリーグと天皇杯の2冠を達成【写真:徳原隆元】
神戸がリーグと天皇杯の2冠を達成【写真:徳原隆元】

吉田監督「クラブが何を言おうと僕は僕のサッカーで勝つ」

 吉田監督は2022年の途中にミゲル・アンヘル・ロティーナ氏が解任されたあとを継ぎ、神戸では3度目の監督に就任。その年は途中までダントツの最下位だったチームを立て直し、シーズン終盤にはリーグ5連勝を記録するなど怒涛の追い上げを見せてJ1残留を決めた。

 そして昨季、これまでのうしろからつなぐスタイルからハイプレス&ショートカウンターを軸に、縦に早い堅守速攻のスタイルを確立。そして序盤から首位を走ると、見事にチームを初のJ1優勝に導いた。

 今季も同じスタイルを軸にしつつ、チームの決め事について「攻撃のエリアごとにやるべきことが明確にあり、守備もエリアごとにポジショニングもはっきりある。もちろん相手のシステム、相手があってのことなので、そのバリエーションはいくつかある。それでも徹底してやっているので、相手がちょっと違うやり方で来ても、このやり方だからこうしようと一言でみんな頭の中で同じ絵が描けている」と、普段の練習から全員の共通認識を揃え、徹底していると明かした。

「自分が求める基準というのは、例えばハイプレスの場合にスイッチを入れて1人を定めているが、そこに少しのズレがあると全部剥がされて全員がダッシュで戻る回数が増える。そうならないように全員でズレをなくす。それを理解できない選手は僕のサッカーはできないし、運動量的にも難しい選手も出ることはできない。僕の中にはそこが明確にあって、選手たちもわかっていて、わかっているから選手たちも試合でできる。そして試合に勝てる。実は凄いシンプルなこと」

 吉田監督は選手に求める細かい基準を明かし、どのスター選手でも特別扱いしない徹底した起用を貫いてきた過去を持ち出しつつ、それがあることでチーム全体の底上げにつながると語った。

 さらに、「本当に勝利は細かいところ、シュートブロックで顔面を避けないとか、どこのコースに入らないといけないかっていうのは明確にある。それは全てゴールから逆算してる。周りから何を言われようと僕らは僕らの基準でJリーグを変えてやると思ってやってきたし、2年半全く言うことも変わってない。ただオプションもどんどん増えてくるし、(広瀬)陸斗や(宮代)大聖が入ることによって、自分のやりたいサッカーでもう1個オプションが増えて、それがチームの勝利につながる。その基準が僕は絶対ブレないし、クラブが何を言おうと僕は僕のサッカーで勝つ。それで勝っているのでそれが正解だということだと思います」と、チームのスタイルを去年確立し、そして今季はさらに磨きがかかった戦術を駆使して連覇を達成した内情を明かした。

 戦術がチーム全体に浸透し、宮代や山川、佐々木などの中堅が育ってきている神戸は、大迫や武藤といったベテランと融合し、さらに強いチームへと常に変貌している。現在黄金期に突入しているなか、Jリーグ3連覇できるのか、来季の神戸からも目が離せない。

(FOOTBALL ZONE編集部・小西優介 / Yusuke Konishi)



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