今季自己最低の「39」 三笘薫が口にした反省「甘さが出た」…トップ6入りへ持つ“責任感”【現地発コラム】
ボールを支配も3失点敗戦のフルハム戦
ブライトンの三笘薫は、最後に「出ているだけで結果は示せなかった」と言ってミックスゾーンを去っていった。
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自らへの要求度も高い左ウインガーには、試合後の反省モードが付き物だ。12月5日のプレミアリーグ第14節フルハム戦は、敵地で6割近くボールを支配していながらの敗戦(1-3)。当然のごとく、自身と自軍を戒める言葉が続いた。
プレミア3年目の今季は、純然たるトップ6候補キーマンとしての自分が言わせる部分もあるだろう。
開幕以来、初めて3バックで臨んだ一戦だった。だが、システムが変わっても三笘のフル出場は変わらない。1トップで先発したジョアン・ペドロと、2シャドーの右側で相棒を務めたマット・オライリーは終盤に交代となっても、三笘は追う展開のピッチ上に残り続けた。
実際には、当人の言葉を拝借すれば「甘さが出た試合」のまま終わった。「自分たちのミスも多かったですし、自分たちで試合を難しくしてしまった」ということになる。
チームは、優勢のうちにハーフタイムを迎えていた。個人としても、立ち上がりからペドロや、左ウイングバックを務めたペルビス・エストゥピニャンとの呼吸は良かった。
前半2分にペドロへと送ったスルーパスは、両軍を通じて初のコーナーキックにつながっている。右足アウトサイドから危険度の高いクロスを届けた場面は、同14分だけではない。
しかし、スコア上は1点のビハインドで前半を終えるはめになった。同4分、センターバック(CB)イゴールのバックパスが精度を欠き、プレッシャーを受けたGKバルト・フェルブルッヘンによる後方ビルドアップ1本目のパスが、ネットを揺らすアレックス・イウォビへと渡った。
自分たちに流れを持っていけなかった攻撃のミス
後半のブライトンは、11分にMFカルロス・バレバのボレーで試合を振り出しに戻した。以降は、しばし均衡状態が続いたが、同34分のオウンゴールで勝ち越されてしまう。
ボールではなく、マンマークに集中していたオライリーの背中に当たって入った相手コーナーキックは、その手前で味方によってクリアされているべきだった。その8分後、再びイウォビが決めたフルハム3点目は、中盤に投入されて間もないブラヤン・グルダのボールロストがきっかけだった。
ただし、「ミス」は失点シーンだけではなく、攻撃の場面にも散りばめられていた。バレバが三笘に送ったスルーパスが強すぎたのは、前半8分。三笘の裏抜けを意図して後方から放たれた、後半35分のロングパスも同様だった。
三笘自身が、前半のベストチャンスを作り出したのは34分。左足によるマイナスの折り返しにボックス内中央で合わせたシモン・アディングラは、体勢からしても、相手GK真正面ではなく、ゴール左下隅を狙うことができたはずだ。
「決め切れないと難しくなってしまうのは全員が感じていると思いますし、そういうところで決め切れれば、自分たちの流れに持っていけるところはありますけど」と言う三笘は、「ああいうシーンを増やさないといけない」と自分にも厳しい。
「流動的に真ん中に入ったり外に入ったり、エストゥピニャンと入れ替わったり、(相手は)捕まえづらかったと思いますけど、そこから最後のところに入ってくのはなかなかできなかった。(プレミア最小級に)狭いピッチなので、前を向いてスピードに乗って仕掛ける場面はなかなか難しいところがあって、中と外に数的優位を作って近い距離の方がいいかなと思いながらやっていました。けど、後半もっともっとサイドからえぐったりしないと、相手も最終ライン引かないですし、いろいろなプレーを見せないといけない試合でしたね」
少なかったプレー回数への自責の念
確かに、この日のマン・オブ・ザ・マッチに相応しいイウォビと比べれば、存在感は薄かった。本来はアウトサイドのアタッカーながら、センターハーフとして起用された相手MFは、ピッチの至る所にいたような印象で2ゴール以上のインパクトを残していた。
三笘のシュートは、前半35分にエリア外から打ってブロックされた1本のみ。3試合連続ゴールはならなかった。個人の問題ではないにしても、後半は右足でクロスを入れた17分以降、途中からシステム変更で4-2-3-1の左ウイングに入ったあともボールが集まってこなかった。
「39」というタッチ数は、フル出場した今季リーグ戦9試合では自己最低の数字だ。ほかにもう1試合、同じ数字に留まったケースがあるが、その第12節ボーンマス戦は、ポゼッションで敵を下回り、最後の約30分間は退場者を出して10人という状況だった。
もちろん、チームに頼られる存在は最後まで戦況打開に努めていた。タッチライン沿いでボールを持ったのは、後半40分。しかし、まだ1点差で逃げ切りを狙っていたフルハムがドリブル阻止に2人を割き、三笘はバックパスを余儀なくされている。その5分後、ペドロに代わって最前線に入っていたエバン・ファーガソンへのスルーパスは、チームメイトたちによる試みがそうであったように、やや強すぎた。
「チームとしてもう1個丁寧につなぐところと、自分が違いを作らないといけないところはありましたし。プレー回数が少なかったというのは自分の責任でもあると思う」と、三笘は話した。
ほぼひと月ぶりに土がついても5位のブライトンだが、トップ6争い参戦に意気込むフルハムには、ポイント数では「1」差の6位に迫られることになった。その下にも、やはり3ポイント差以内に6チーム。中2日での次節レスター戦と、続くクリスタル・パレス戦は、確実に勝ち点3を奪いたい下位戦だ。自覚ある三笘の「双肩」ならぬ、“両足”にかかる責任は重い。
(山中 忍 / Shinobu Yamanaka)
山中 忍
やまなか・しのぶ/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。