興梠慎三が11年通った練習場に別れ「ようやく来たか」 最後に見せたファンへの愛「全員にしようと」
8日でホーム新潟戦が現役ラストゲームとなる
浦和レッズは12月3日に今季最後の公開練習を実施した。それもあり、今季限りでの引退を表明しているFW興梠慎三は多くのサポーターから拍手を受け、練習後には時間をかけてサインをする姿があった。トータル約11年間を過ごした大原サッカー場について「人としてすごく成長させてもらった場所」と振り返った。
【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから
トレーニングの最中はシャープな動きを見せ、前節の11月30日にアビスパ福岡戦での途中出場が約5か月ぶりの公式戦だった選手とは思えないくらいのフィット感があった。12月8日のアルビレックス新潟戦が現役ラストゲームになるが「この1戦のためだけにと言っても過言ではないぐらい、本当に自分ではトレーニングから一生懸命できた」と、試合を見据えた。
率いている監督によって違うが、今の浦和は試合に向けた週の前半に1回公開練習をする流れになっている。そのため、今季はこれが最後の公開練習になった。試合までの時間を「ようやく来たか、このラスト4日間」という具合でそれほど名残惜しさも表現しない興梠だが、浦和がトレーニングをする大原サッカー場では2013年に鹿島アントラーズから移籍加入し、22年に北海道コンサドーレ札幌へ期限付き移籍した1年を除いて過ごしてきた。
加入当時からはクラブハウスも増設されたが、変わらない風景だった。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いていた時期は、そのポリシーによって全ての練習や練習試合が公開されていたので、毎日がサポーターや地域の人に見守られていた。近隣の幼稚園や保育園の「お散歩コース」に組み込まれる日もあり、その中で過ごしてきた。その日々について興梠は「サッカー面でもそうだけど、人としてすごく成長させてもらった場所」と振り返る。
クラブの通算ゴール記録を塗り替えるなど、浦和のエースとしての地位を確立してきた。一方で、なかなかタイトルに手が届かなかった時間も長く、掲げてきたリーグ優勝はついに現役の間に達成できなかった。だからこそ「ファン・サポーターの人たちは、どんなシーズンでも必死に応援してくださった。どこかでタイトルという形でプレゼントしたいと毎シーズン強い気持ちでやっていたし、数多くのタイトルは獲れなかったけど、自分なりに全力で毎シーズンやってきたのでラスト、最後の試合を全力でやりたい」と話した。
トレーニングを終えた興梠には、大原サッカー場を訪れたサポーターに笑顔を見せながらサインをする姿があった。クラブが設定したファンサービスの日は丁寧だったものの、それ以外の日は比較的スッとクラブハウスに戻ることの多かったストライカーだが、「おそらく最後になると思ったので、できる限りサポーターの方々の要望に応えて、全員にサインをしようと思っていた。『お疲れ様』とみんなが言ってくれたので、すごく嬉しかった」と微笑んだ。
引退後には指導者を目指すことを明らかにしている興梠だが「まだ決まってないけど、でも浦和レッズにいることは確実なので、決まったらまた連絡させていただく」と、クラブに残ることは明言した。それでも、この大原サッカー場で選手として過ごす時間はもう残りわずか。「ようやく来たか、このラスト4日間」と名残惜しさは見せなかったが、サポーターに対して時間をかけてサインをして帰った姿は、同じ場所で過ごした11年の重みを感じさせた。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)