感極まり号泣…サポーターが作った「もの凄い雰囲気」 大逆転残留に望みを繋いだ強烈後押し【見解】
【専門家の目|太田吉彰】劣勢から勝利に繋がった「いい意味で開き直りができていた」
奇跡の大逆転勝利で崖っぷちに踏みとどまった。J1のジュビロ磐田は11月30日、リーグ第37節でFC東京と対戦。敗れればJ2降格が決まる一戦で、先制を許しながらも、試合終了間際の2得点で試合をひっくり返した。最終節まで残留の可能性を残す劇的な白星に、現地で解説していた元日本代表の太田吉彰氏は「もの凄い雰囲気でした。サポーターが最高の雰囲気を作っていました」と、満員のサポーターの大声援による選手の後押しを感じていた。
17位のアルビレックス新潟とは試合前の時点で勝ち点6の差があった。黒星どころか引き分けでも降格が決まる、勝利しか許されない一戦。後半8分にFC東京のFW安斎颯馬に先制ゴールを決められて劣勢に立たされても、磐田イレブンは下を向かなかった。
後半18分に横内昭展監督は今季での引退を表明したMF山田大記を投入。後半32分にFC東京のDF木本恭生が退場となると、本拠地のボルテージは一気に高まった。直後にFWマテウス・ペイショットのヘディングで同点に追いつくと、アディショナルタイムに入る直前に相手のハンドで得たPKを山田が決めてついに勝ち越し。歓喜に沸くゴール裏のサポーターと共に、山田ら磐田イレブンは感情を爆発させた。
磐田OBでもある太田氏は「最近は劣勢になっても自分たちの強さを出しています。今回も勝たなければいけない状況でやることが明確だった。いい意味で、もう『いくしかない』と開き直りができていましたね。ラインも高く取れて、前から取りにいけていた」と、“勝つしかない”状況で、迷いなく戦ったことが、この逆転勝ちに繋がったと分析する。
そして、その選手たちを強烈に後押ししたのが、スタジアムを埋め尽くしたサポーターの声援。「もの凄くいい、最高の雰囲気をサポーターが作り出していた。山田選手が入ってから、さらに『いくぞ』『いけるぞ』という雰囲気が作り出されていた。疲れている時でもあの大声援を聞くと、選手は『もっといかなきゃ』ってなるんです。ものすごく力になります。それが表れた試合でした」と太田氏。スタンドを埋めた大観衆が演出した逆転劇でもあった。
太田吉彰
おおた・よしあき/1983年6月11日生まれ、静岡県出身。ジュビロ磐田ユース―磐田―仙台―磐田。J1通算310試合36得点、J2通算39試合4得点。トップ下やFW、サイドハーフなど攻撃的なポジションをマルチにこなす鉄人として活躍した。2007年にはイビチャ・オシム監督が指揮する日本代表にも選出。2019年限りで現役を引退し、現在はサッカー指導者として子どもたちに自身の経験を伝える活動をしている。